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グリニモアの朝 3

映像技術は25年前にはすでに現在のものとほぼ変わらない水準に達しており、つい最近の映画のように綺麗な映像でそれは再生された。
しかし所詮はB級ホラー。
カメラのアングルは甘いし、台数がたりないのか1シーン1シーンが長回し。
小道具も稚拙で役者もイマイチ垢抜けない。
全体的に低予算というのが透けて見える。

大学のサマーバケーション。
男女六人が旅行を企画する。
行き先の候補はいくつかあったが、その中のひとりが、親戚の持っている洋館にいかないかと誘う。
近隣に他の家はないので馬鹿騒ぎが出来るという言葉に乗せられ6人が訪れたのが、森の中にある湖のそばに立つ洋館だ。
最初の日は何も起こらない。わいわいと楽しく過ごし、夏の間はここにいようかなんて話も出る。
しかし二日目から徐々に異変が起こる。
誰もいないはずの廊下に落ちる人の影、濡れた廊下、動物に食い殺されたようなネズミの死体、移動する西洋甲冑、不審な電話…。

映画はB級ものとしてもあまりレベルが高いとはいえない気がする。
映画などほとんど見ない俺にも目新しさが見当たらない。(もしかしたら当時からすれば斬新なアイディアがあったのかもしれないが)
30分も経つと退屈してきたが、レノを見ると彼は思いの外真剣に映画にみいっている。
そうだ。なにも娯楽として見ているわけではないのだ。
すこしばかり眠気を訴えていた頭を振り画面に目を向けた。

やがて怪異は気配だけにとどまらず実体を露にする。
バスタブで足をつかまれ危うく溺死しかける女。
様子がおかしくなり仲間に襲い掛かる男。
仲間同士のいさかい。
現れる化け物と妖艶な美女。
屋敷に響き渡る悲鳴。
血の惨劇。

一体、どこに新羅が血眼になって処分をしなくてはならない所以が?
さっぱりわからない。
撮影場所が問題?
俳優、もしくは監督や演出家が?
それともシーンの何処かの背景に映ってはまずいものが映り込んでいる?
音楽が問題か、それとも衣装か、台詞か…。
全くわからないままに物語は後半へ…いや、佳境へ。

4人もの犠牲者を出し、男女の二人は命からがら屋敷を飛び出て走る。
足を引きずる男と、顔をぐしゃぐしゃにして泣く女。
二人は湖の近くで足を止め、しばし休息を取る…と、にわかに湖が波立ち、そこから美しい女が姿をあらわす。
女の顔がアップになり…

「あッ」

レノが大きな声を上げ、リモコンを手にとると映画を消してしまった。
レノを見ると、薄暗い部屋の中でも分かるほどに顔色をなくしている。

あの顔は…画面にアップになったあの顔は…

思い浮かべて俺もまたあっと声を上げそうになった。
あの顔は…

ルーファウス…?

先ほどの映画では全く感じなかった寒気がスッと俺の背中をなで、二の腕のあたりに鳥肌が立つのを感じた。

先ほど映った女。
瞼の裏に焼きついた女の顔は、ルーファウスそのものだった。
男女の差こそあれど、双子と言っていいほどに似ている。
癖のなさそうな金の髪、白い肌、整った顔立ち、気位の高そうな目元、ゆったりと弧を描く口元。
年齢は現在のルーファウスと同じくらいだろうか。
25年前ということは…

そこまで考えた時、レノが乱暴に機械をいじっているのに気づいた。
いくつものボタンを適当に押し、間違った蓋を何度か開けてディスクを取り出し懐に入れる。
そして未だ白い顔をして俺を睨みつける。
「おい、お前たちは何もみなかったんだぞ、と」
「…あぁ」
荒々しい足音をたて家を出るレノ。

レノは俺よりもずっとルーファウスとつきあいが長い。
知っていることもまた俺より多いのだろう。

ルーファウスと瓜二つの女。
25年前。
神羅が回収し処分してきた映画…。

これらの情報から、いくらかの推理が出来そうだ。
しかし俺はそれを拒否した。
知ってはいけないような気がした。
そうでなければ、得体のしれない深みに嵌るような気がして…。

俺は無言で立ち上がると、じいさんに声を掛けぬまま外へでた。
外ではレノがタバコを口の端にぶら下げて立っている。
彼は俺を振り返ると、未だ悪い顔色のまま口角を上げてみせた。
しかし何も言わない。
口の軽い彼にしては珍しいことだが、それを突っ込むのは野暮だろう。
俺はフェンリルにまたがり、彼を促した。

「これは高くつくぞ」
「あぁ、わかってるぞ、と」

それ以上はもう何も口を聞かず、俺達はその場所を後にした。

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