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ワイルドエース

クラウドのザックス回顧
「よぉ、兄ちゃん入っていかないか?」

酒場の丸テーブル。
酔っ払いの親父が3人、1つの椅子が空いている。
テーブルの上には、混ぜられたトランプ。
常ならば、何も言わずに立ち去るような場面。
しかし・・・その時は何故か足を止め・・・そして誘われるままに席へとついた。
自分でも、何の気紛れだろうと思ったほどに、それは意外な行動だった。
大降りの剣を背から外し、傍らへと立てかける。
酔っ払い親父らの視線がそちらに向かうのを、無視し、クラウドは懐から財布代わりの巾着を取り出した。
ずっしりとした重みのあるそれを、己の前に置く。
小分けにしたもので、全財産ではないが・・・それでも3万ギルほどは入っていたはずだ。
「おぉ、気前がいいねぇ。兄ちゃん」
「そうこなくっちゃいけねぇ」
左右の赤ら顔が、機嫌よさそうにいい、最後に、
「掛け金は1000単位だよ。いいかい?」
と、クラウドの正面に座った男が言った。
少し心配そうな顔をしているのは、クラウドがカモにされやしないかと思っているのだろう。やめておくなら今のうちだと・・・。
しかし、クラウドはすまして頷く。
「あぁ、それでいい」
雑に紐を解き、適当に半分ほどを正面の男に差し出す。
男は同情めいた表情を見せ、それを引き取ると、数を数え数枚のチップへと交換して返した。
紙を何枚も重ねて固めたような、厚みのある割りに軽いチップ。指で一枚とり、場に出した。

途端・・・

クラウドの脳裏に一つの光景が浮かんだ。

丸テーブルを囲む4人の男。
いずれも若い男で、酒を片手に、同じようにトランプゲームに興じている。
がやがやと騒がしい、飲み屋。
男たちの間から女がグラスを持った手を伸ばし、代わりに空のグラスを下げる。
クラウド自身はテーブルを囲む4人には入っていない。
クラウド自身は・・・・男の背中越しにその光景を見ている。
癖のある、つんつんと尖った黒い髪。
痩せ型だが引き締まり、筋肉質の体。
記憶の中、クラウドはそれを無表情に見つめている。
男の背中越し、その男の持ったカードが見える。
男のカードはあまりよくない。
このままではノーペア。
つまりは何の役もつくられていない。
それを何の感慨もなく見ていると・・男がふいに振り返った。
それは酷く懐かしく・・・そして親しみのある顔。
全てにおいて自信たっぷりといった風な笑みを浮かべる男。
俺に5枚バラバラのカードを見せ、またニヤリと笑う。
「俺の負けだと思う・・・だろ?」
指でカードを弾く男。
魔法でもかけようというようにその指を回し・・・
それから、広げた手でカードを撫でる・・と・・・
「な?」
ばらばらだったカードが・・・一気に変わる。
「ロイヤルストレートフラッシュ!」
スペードでそろった10・J・Q・KそしてA。
その場がどっとざわめく、男の悲鳴、女の歓声、チップが舞い、カードが舞い・・・シャンパンが降り注ぐ。
男は酒を頭からかけられ、びしょびしょになった顔で振りかえり・・そして、クラウドに笑いながら言った。
「な?俺には勝利の女神がついてるんだよ。」

「勝利の・・・女神」

「あ?なんか言ったか兄ちゃん?」
男のだみ声に、クラウドは現実へと戻される。
左側の男が不審そうにクラウドを見つめ、右側の男は配られたカードを見つめている。
正面の男は、クラウドの方を心配げな顔で見ている。
「いや・・なんでもない」

『一番、怪しい奴っていうのは得てして、唯の賭博好きだったりすんだよ』

男の声が耳に響く。

『相手の袖口をみてみな。短いのに、長い袖、どっちが怪しいと思う?』
『まず、最初のゲームは捨てていい。最初は様子見さ』
『仕掛け人ってのは動く場所を心得ているもので、良く見ていると・・』
『あれは仕掛け人の一人だ。カモの役だな。あっちが適当に負けて、そして・・・』

一度目のゲームが終わり、クラウドのチップが下げられる。
次の勝負。
クラウドはチップに手を伸ばし、それを場に積む。

『積むときはわざと素人くさくしろよ。他人のチップを見ながら・・・』

耳につく男の言葉。
積み上げたチップにもう一枚を重ねようとして、失敗し・・・それからもう一度積み上げなおす。

どうして、今日はあの男の言葉が浮かぶのだろう・・・?

『みたか?男の利き腕。さっきはあいつは右手でとっただろう・・・?』

まるで・・・これは・・・

「なぁ・・今日は何日だ?」
クラウドはふと気付き、正面の男に目を向けて聞いた。
男は小さく首を傾げた後、店の奥(おそらくカレンダーのある方)を見て日付を教えてくれる。
その日付・・・。
忘れもしない、その日付・・・。

『ようやく思い出したか?』

笑いを含んだような声。
クラウドは下を向き、誰にもばれないように小さく笑った。

“あぁ、手間・・・かけさせたな”
『全くだ』
“手伝ってくれるんだろ?”
カツンとチップをテーブルに鳴らすと、それに答えるように笑ったような気配。

『あぁ、俺の勝利の女神、わけてやるよ』

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