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器の違い

捏造注意
始めてみたとき、女かと思った。
父親・・・新羅の社長とは全く違う。おそらく母親に似たのだろう。
さらさらの金髪、細い体、細い顎、白い肌、女みてぇに整った顔、透き通るような青い目。
白いスーツがまるで似合っちゃいない。
あれなら、フリルのついた花柄のワンピースのほうが似合うなっと内心思ったものだ。
頭にでっかいリボンをつけて、熊のぬいぐるみなんか持たせたら似合いそうだ。
その思考が読まれたわけではあるまいが、そいつはふいにこちらを見て、きつく睨んだ。
はねっかえりなお嬢さんって感じだな。
俺は、ばれないように笑った。

そして、社内での評判もそれ相応のもの。
彼は、影では彼女扱いされていた。
可愛い顔に、華奢な体、しかも高飛車。リトル・クィーン。それが副社長の通り名だった。
趣味の悪いやつらはどうにかして、彼とイイコトになろうと躍起になっていたようだが、どれもうまくいったためしがない。懲りればいいものを、それでも挑戦者が絶えないのは、あっちが挑発するからだ。
そんなことしなければ、いつかは収まるものだろうに・・・きっとアイツもその気があるに違いないなんて、噂まで流れる始末。
まったく、俺にとっては関係ない話だったんだが・・・。

新羅のビルはやたらと広い。
縦に長いだけじゃなく、フロアだってかなりの広さがある。
そして万が一の侵入者のことを考えてか、上層階はかなり入り組んでいる。
タークスに入り、それも新人ではなくミドルになってからは入れる範囲もかなり広がった。
そんなとき、俺はちょっとした迷子になった。
迷子といっても本当に迷子ではなく、進んで迷子になっていたというほうが近い。つまり、探検だ。
知らない道を知らないほうに曲がり、わざと見慣れないほうに歩いてゆく。
所詮ビルの中だし、どうにかして出ようと思えば出られるので、気楽なものだ。
そして、角を曲がったとき・・・“それ”に出くわし、俺は思わず壁に張り付き、そして先ほど曲がった角に隠れた。
そこにいたのは、現社長とその息子・・・プレジデントと、ルーファウスだ。
しかも・・・なんつーかただ事じゃない雰囲気・・・。
ルーファウスは壁際にいて、プレジデントがその息子のすぐ傍に立っていた。
別に壁に押さえつけているわけではないが、そんな感じの雰囲気。
な・・・なんだぁ・・・?
俺は、頭の中で素っ頓狂な声を出した。
なんとなく親子団欒って感じの雰囲気じゃかったような気がする。俺はそっとまた廊下の先をうかがった。
すると、やはり間違いなく、プレジデントとルーファウスだ。
ルーファウスは背をぴったりと壁につけて、父親から目をそらすように、わずかに下を向いている。
そして、前に立っている、プレジデントの手がその息子の額のあたりに手をあて、ゆっくりと撫でている。
途端に嫌悪感が、俺の中に広がる。
プレジデントは早くに妻を亡くしている。そして・・・息子のルーファウスは妻の生き写しだという噂を思い出したのだ。
それを考慮した上で見ると・・・プレジデントの手つきが妙に性的なものに見えた。
プレジデントはなにやら小声でルーファウスに話しかけているようだが、ルーファウスは全く反応を返さない・・・。
いつもは高圧的なリトル・クィーンもこれじゃぁ形無しだ・・・。
普段だったら、ざまぁみろと、背を向けるところだが・・・今回はやたらと胸糞が悪い・・・。
なんたって、あいつ等は親子だ。
俺は、数歩を退き、わざと足音を立てて角まで歩いた。
そして、
「あれ・・・・社長じゃないっすか・・・っと・・・それに副社長もっと」
俺はやたらと親しげな声をかけた。
もちろん、足音で気付いていたのだろう、二人の距離は離れている。
ただし、ルーファウスは壁際に立ったまま、プレジデントからも・・・そして俺からも視線をそらしている。
「何の用だ」
「いやぁ・・・ちょっと、この辺の冒険を・・・それより社長はどうかしたんですか・・・っと」
「・・・ふん。なんでもない・・・」
言って、ものすごい目で睨まれた。俺はそれに、にへらと笑って、手を挙げ方をすくめて見せた。
プレジデントは不機嫌丸出しで、俺の横を通ってどこかへ歩いていく。
俺はその後姿をゆっくりと見送り、プレジデントが角を曲がる間際に、中指を立てて舌を出してやった。
雇ってもらってはいるが、俺はあの社長はあんまり好きじゃないんでね。
そして、ルーファウスを振り返る。少しは高慢ちきなお嬢様に恩を売っておこうと思ったのだ・・・が・・・彼を見た途端、その気持ちがしぼんでいった。
彼は、吐き気を我慢するように口元に手を当て、前傾姿勢になっていた。
「お・・・おい」
蒼白になって、小さく震えながらゆっくりと下にずり落ちてゆく。
こんな反応・・・ちょっと反則だぜ・・・。
「大丈夫ですかっと・・・」
一応、敬語を使いつつ、近づき、手を貸そうとすれば、その手を叩かれた。
「って・・・」
まぁ、本当は特に痛いってわけでもなかったが、反射的にそういう言葉はでるよな・・・。
「具合わるいんなら、医務室にでもいきますかっと・・」
反応を待つが、しばらく待っても帰ってこない。
だったらもうしらねぇ・・・!今ではもう座り込んでしまったお嬢様を置いて、立ち去った・・・いや、去ろうとした・・・が。
普段は全く痛まない良心っていうやつが、疼いた。
何だってこんなときに・・・気のせいだと言い聞かせても、一歩一歩進むごとに、足が重くなる。
チクショウ・・・・。頭をかいて、立ち止まり、ゆっくりと後ろを振り返る。
静かな廊下、リトル・クィーンは先ほどと同じ姿勢で座り込んでいる。
ため息を一つ。
黙って引き返し、今度は有無を言わせず、ルーファウスの腕を取ると立ち上がらせた。
きつく睨まれはしたが、何も言わなかった。
気分が悪くて口も聞けないのかもしれない。
「おい、医務室につれていくぞっと」
ひっぱろうとすると、抵抗。この期に及んで・・・っと抱えてやろうかと思ったが、切実な目に見られてそれはやめることにした。
「あんだっと。」
俺は耳を口元に近づけた。
途端、高級そうな香水の香り・・・。なんとなく腹が立った。
「・・・やに・・・」
「あぁ・・・?聞こえなないぞっと」
「部屋に運べ」
「命令形かよっと」
思わず言い返した。予想通り、ものすごくきつい視線。
俺はそれを無視して、今度こそ歩き出した。
いつものエレベータに向おうとしたが、お嬢様の命令で違うものを使う。
それは彼のプライベートルーム直通のものらしく、俺たちが使うものよりもまた一段と豪華になっていた。
ピカピカに磨かれたガラスと、赤い絨毯。きらきらの照明。
思わず口笛がでそうだが、副社長が隣にいる手前、それはやめにしておく。
そして、部屋に着き、俺はベットまで運ぼうとしたのだが・・・
なんと、彼は、ドアを開くなり、自分だけ内側に入り、俺の鼻先でドアを閉じた。
俺は一瞬呆気にとられた。
此処まで礼儀知らずな目に合わされたのは初めてだ。
頭にくるよりも先に感心してしまった・・・。
なるほど、人の上に立つやつというのは、こういうものなのかと・・・。
頂点の人間ってのはあぁいうやつのことなのかと。
俺は、少しだけヤツの弱みを握ったと思っていたが・・・・毒気を抜かれてしまった。
反対に打ち負かされたような気分だった。
それから、ぼんやりと部屋に帰ったのだが、何故か、あの睨みつけた青い目が頭から離れなかった。

翌日には、ちょうど、プレジデントと副社長が出席するパーティがあって、警備を任されていた俺は、そこに参加することになった。
黒いスーツをつけて、いつもよりお行儀よくしていた俺は、すぐに彼を見つけた。
今度こそなにか一言あるだろうと、彼の視線を捕まえようとじっと見ていた。
なかなか、彼はこっちにはきづかなかったが、それでも、プレジデントの演説の際に彼の視線を捕まえることに成功した。
何故かそれが無性に嬉しく、にやにやと笑う。
が、彼は、何らかの合図を送るどころか、俺を冷たく一瞥し、つんと顔をそらした。
やはり、怒りは起こらない。思わず笑いが漏れる。
隣に立っていた同僚が不思議そうな顔をしたが、それは軽く無視。
なるほど・・・あれが王者の器ってやつだろうか?
あまりに狭いが・・・それでも気高い。
脅す気ならやってみろ、だが、覚悟はしろとでもいうような態度。
「気に入った・・・・」
小さくつぶやいた言葉に、またもや同僚が不審な顔を向ける。
だが、俺はルーファウスから目を離さなかった。
強い目だ。
何処までもまっすぐな目は、下々のものなど見てはいない。
はるか高みにいる男に、俺は参ってしまった。
なるほど・・・俺を使うのはこの男なんだと。
いや、今までだって、新羅のために働いてはいたが、真に仕えるものではなかったようなきがする。
いうなれば暇つぶしの仕事のようなもの・・・だが、今日からは違う。
俺はこいつに仕えよう・・・・そう思った。本気で。
一方的だが、思想の自由はある。
俺は、決めた。
俺はアイツのために働こう・・・。
あのクソ生意気で、高慢で、自分以外をクズとしか思っていないような、綺麗な男のために。
なぁ・・・?
俺はゆったりと微笑み、ルーファウスを見た。
ルーファウスの視線がまたこちらに向かう。
そして、今度は怪訝そうに小さく首を傾げた。
その瞬間・・・俺の中で契約が成った。
よろしく頼むぜ・・・っと。

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