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エ・テメン・アン・キ

一応先は考えているので、それを前提に書いておりますが…。
もしかしたら変わるかもね。
真夜中、眠った子供達からほんの少しずつマガツヒをいただいた俺は静かにルイズの部屋に戻った。
ルイズは当然眠っているものと思っていたが、ベッドの丸井膨らみからはぐずぐずと鼻を啜る音がした。

そういえば、彼女は今日“も”失敗したのだった。
授業中、教師が用意した的を魔力でもって落とす。
それだけができずに、的を落とす代わりに危うくクラスメイトの手首を落とすところだった。
俺が直前でカバーしたものの、ルイズはショック状態。手首を落とされるところだった女生徒は泣きじゃくり、教師はかんかん。
俺はその時点で面倒になって立ち去ったのでそれから先は知らないが、この分ではコッテリと絞られたらしい。

俺はそのまま部屋を出ようかと思ったが、ふと思い直して足音を殺したまま彼女の方へと近づいた。

「ふ…く…うッ」

忍び泣くルイズ。
その嗚咽を聞いていると、俺の中で彼女のを可哀想だという思いと共に、ひどく残酷な衝動が沸き上がってくる。
くつくつと音を立てて湧き上がる怒りに似た憎悪。
小さく丸くなって自分を守る少女をいっそ壊してやりたくなる衝動。
それを必死に抑えつけて飲み込むと、びりびりとしたしびれが全身に走る。

彼女の悩みなど小さなもの。
その程度の悩みで涙を見せるなんて…あほらしいにもほどがある。
悲しみというもの、悩みというもの、それが他人と比べられるようなものではないとしても、彼女のそれはちっぽけに思えた。
彼女は本当の苦しみを知らない。
彼女はどれほど自分が恵まれた場所に居るのかわかっていない。
彼女が…憎い。

あの強い“彼女”ならば、ルイズのような少女を許さないだろう。
孤独を選んだ“彼”ならば、ルイズの気持ちをよくわかると慰めるだろう。

では俺は…?

俺は…俺は…ルイズを傷つけたい
めちゃくちゃにしてやりたい。
彼女がそれこそ泣いてすがって懇願するほどに…ずたずたに傷つけてやりたい。
いっそ殺してくれと彼女が懇願するまで…いや…彼女の気が狂って笑い出すまで…。

しかしそれをするわけにはいかない。

それは彼女が、俺を閉鎖された空間から救ってくれた恩人だということもあるが、俺の目的のためには人である彼女が必要だからだ。
不安定で弱い彼女が…いや違う。
俺は…そうしたくないんだ。
俺がそうしないのは…したくないからだ。
だけど、彼女を壊したい。
だけど、彼女を守りたい。

どちらが本心だ?

わからない。

ズタズタに引き裂いてかわいがってやりたい。

俺は…人にも修羅にも慣れぬ半端もの。
俺は混沌の中で今も尚溺れている。
ぐつぐつと煮えたぎる感情の渦が、何処を向いているのかわからない。

 *

俺は、ふとこちらを伺う視線に気づき、そちらを見ると…視線の主は壁に立てかけてあるデルフリンガーだった。
動かぬ体でびくびくと刀身を震わせながら、俺の様子を伺っている。
俺を止めるべきか、ルイズに警告を与えるべきか、それとも黙って静物の振りをしつづけるかを迷っているのだろう。
大丈夫。
何もしない。
何も。 ……今は。
だが、彼をからかうのは楽しい。
目を細めてちらと舌をのぞかせれば、それは大げさに怯えてカタリと音を立てさせやがった。
それで俺の気配に気づいたらしい。
丸い塊がビクンと動き、俺は興を削ぎやがったデルフリンガーを睨みつけた。
そしてどうしようかと考えていると…

くぅ…

動かなくなったルイズはたぬきねいりを決め込むことにしたらしい。
時折小さく鼻をすすり、シーツにくるまったままじっと動かないルイズ。
ヘタクソながらこちらの気配を探ろうとしているのがわかる。
そんな姿を見ていたら、先ほどまで俺の体を震わせていた怒りに似たものがスッと解けていくのがわかった。
ゆっくりと息を吐くと、しびれがじわりと抜けていった。
俺はベッドのすぐ傍まで歩み寄り彼女の膨らみに手をかざし、

「眠れ」

一言つぶやいた。
それは魔法ではない。
いわゆる暗示のようなもの。
攻撃意外…この手のものは苦手な俺だが、意識をこちらに集中していたルイズは一溜りも無かったらしい。
ピクリと一瞬だけ膨らみが動いたかと思うと、すぐにぐったりと力が抜けた気配が伝わってきた。
上手くいったか…。
ため息をつくのと同時に、デルフリンガーからも安堵のため息が聞こえ、俺はそちらを睨んだ。
すると、剣のくせに「ぐぅ」と寝たふりをしやがった。
だが…不思議と今度は怒りがわかない。
先ほどまで荒れていた胸中が…今は不思議な程に凪いでいる。
きっと俺はおかしいのだろう。
しかし…正常とはどんなものだったかすらわからない俺には、もうどうでもいいことかもしれない。
俺は窓の外に見える2つの月に目を細めた。
白く冷たい光…それは俺にカグツチを思い起こさせた。
あの内側にひっくり返った世界…。
早く…早く…。

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