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ゼロの夜想曲 2-05

よみかえさない
教室の扉がガラリと開き、教師であるミスタ・ギトーが現れると、それまで騒がしくしていた生徒たちは慌てて自分の席へとついた。
玲治もまたルイズの席の隣に置かれた椅子に座り、長い黒髪に漆黒のローブという陰気な姿をした男を見た。年はまだ若いが、その雰囲気はどうにも暗くひんやりとしていて、生徒たちの人気は低い。
「では、授業を始める。知ってのとおり、私の二つ名は『疾風』。疾風のギトーだ」
教室中がシーンと静まり返る。それを満足気に見るギトー。それを見返しながら、二つ名というものは誰もが持っているものなのだろうかと首をかしげた。
二つ名…それを言うなら自分は人修羅か…?それとも混沌王か?
「最強の系統は知っているかね?ミス・ツェルプストー」
「『虚無』じゃないんですか?」
キュルケが当てられて答えると、ギトーは呆れたように「伝説の話をしているわけではない」と首を横にふった。
「現実的な答えを聞いているんだ」
その言い方にキュルケの眉がきゅっと上がる。
「『火』に決まってますわ。ミスタ・ギトー」
「ほほぅ。どうしてそう思うのかね?」
その言い方はいかにも挑発的で、聞いている玲治も少しイラッとした。
「すべてを燃やしつくせるのは、炎と情熱。そうじゃございませんこと?」
それを聞いてギトーは、フッと小さく鼻で笑ったようだった。
「残念ながらそうではない」
ギトーは言いながら自らの杖を取り出した。
そのあたりで展開の読めた玲治はつまらなくなって大きくあくびをした。
どうせ、彼はキュルケの鼻をあかしてやりたいだけなのだろう。そして、最強は自分の扱う疾風だといいたいわけだ。
キュルケの炎はなかなかのものではあったが、まだ練り方が足りない。
それを彼が吹き飛ばしてやろうというそういう算段だ。
「つまらん」
玲治が思わずぽつりと呟いた言葉を聞きとがめてルイズが睨む。
「真面目に聞きなさいよッ!」
「聞く価値もない」
「どうしてよ」
「どうして?それはあの男が嘘っぱちだからさ」
「ミスタ・ギトーが?」
「そう、最強は炎でも疾風でもない。わかるだろう?」
「…虚無だといいたいの?」
「そう、虚無。もしくは万能…だな。この二つはどうも似て非なるものであるような気がするが…とにかく“それ”だ。火でも風でもない」
「でも現実的じゃないって…」
「現実的だろう。十分」
「…でも…」
少し不満げなルイズに玲治は肩をすくめた。
「なんなら、今すぐあの教師の度肝を抜いてやってもいいぜ」
黄金の目をきらめかせる玲治にルイズは「それはやめてよ」とため息をついた。
一歩間違えばただのバカだが…彼の場合はその裏付けがある。
「あなたを敵に回したくはないわ」
ぽつりとルイズがつぶやくと、玲治は何も答えずにニコリと笑った。
それは一見無邪気で…しかし、そこはかとなく邪なようで…判断に困る笑みだった。

と、そんな授業中、突然ガラガラガラッと教室の扉が開き、緊張した顔のミスタ・コルベールが姿を表した。
それを見て、玲治は思わず「なんだ…?ありゃ」と呟いた。
というのも、彼はとても珍妙な格好をしていた。頭にばかでかいロールした金のカツラ。ローブの胸にはレースの飾りやら、刺繍やら…。
おしゃれ…?いや、アレは道化の真似か、それとも仮装パーティにでも出るつもりなのか…
「ミスタ?」
授業を邪魔されたギトーが不機嫌そうにコルベールを睨むと、「あややや」と彼は慌てたように言った。
「ミスタ・ギトー。失礼しますぞ」
「授業中です」
不機嫌を隠さないギトーに少々おされながらも、コルベールはおっほんと一つ空咳をすると、
「今日の授業は全て中止であります!」
と生徒たちに向かって言った。
途端、教室中で歓声があがり、コルベールは生徒たちをなだめるように両手を振り、言葉を続けた。
「えぇ、みなさんにお知らせですぞ」
そういって彼は必要以上に胸をそらしてのけぞった。
その拍子に彼の頭から金のカツラが滑り落ち、生徒たちの中からクスクスとした笑いが湧き上がった。
そこにすかさず一番前に座ったタバサが「滑りやすい」などとコルベールのツルツル頭を指さしていうものだから、押し殺したような笑いは爆発的な笑いへと昇華した。
キュルケはよくやったというようにタバサの肩をたたき、ルイズは大声で笑い机を叩いているし、その隣の玲治も肩を揺らして笑っている。
その様子を見て、コルベールは顔を真赤にさせて「黙りなさい!」と怒鳴った。
「黙りなさい!ええい!黙りなさいこわっぱどもが!大口をあけて下品に笑うとは全く貴族にあるまじき行い!貴族はおかしいときは下を向いてこっそり笑うものですぞ!これでは王室に教育の成果が疑われる!」
ものすごい剣幕に生徒たちはシンと静まり返った…が、玲治はそれがまたおかしかったらしく「ゆでダコ!」と指をさして大笑いをした。
玲治の言葉を聞いた生徒たちは一瞬凍りついたが…玲治の笑いが感染したかのように、また一気に教室中が爆笑の渦に巻き込まれた。
ミスタ・コルベールはますます怒って怒鳴ったが…もうどんなに凄んでも、誰も怖いとは思えなかった。
それどころかまるで催涙ならぬ催笑爆弾でも爆発したかのように、彼らはそれから30分あまりもひたすら笑い続けた。そう…あの鉄面皮のギトーすらも。

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