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罪ある者

「だったら貴様は許せるっていうのか?!だとしたら、てめぇも同じだ!」

10年前、妹を凌辱された男の復讐劇は加害者四人の内、三人を殺害し、幕を閉じた。
憎しみの言葉を叩きつけられたアリス・・・。
さすがに怒りの表情でも浮かべているかと思いきや・・・。
彼はいつもの表情でほほえんでいた。
「アリス」
「何や?」
あんな言葉を投げられて何も言い返さないのか・・・
言おうと思った言葉は、彼の目を見た途端、消えた。
ほほ笑みを浮かべる彼の顔はいつものものだが、瞳は笑ってはいない。
空虚で、どこか己を嘲笑うような色があった。
泉の深く、沈んだ曇ったクリスタルのような・・・。
ほんの少し・・・俺が目を細めると、アリスは自分の顔を見られることを恥じるように視線をそらした。
そして、つぶやく。
「いい気味や」
聞き間違いか、空耳かと思った。
しかし、
「なぁ?」
また微笑んだままこちらを見、同意を求められ、動揺する。
いい気味とは一体、どちらの話か・・・
あの犯人か?
それとも、あの侮辱するような言葉を投げられた自身か・・・?
「そんな顔をするな・・・・」
俺が言えば、彼はふっと笑って言った。
「君もな」

ずるい男だ。
いつもふわふわとして、いくら打っても響かぬくせに・・・。
いつもいつも、俺に泣き付いて、面倒を押しつけるくせに・・・!
どうして俺にこんな無力感を与えるんだ。

「おい、飯食いにいこうぜ。」
「いや・・・」
「なんだ?腹減ったっていってたろう?うちには生憎なんにもねぇぞ」
タバコに火をつけながらいうと、アリスは首をふった。
「今日は帰るわ」
「帰る?」
目を剥いて尋ねる。
今は午後の10時近く・・・。ここから彼の家に帰れば日付を越えてしまう。
それに、
「お前、明日は休みだろう?」
泊まっていけばいいと言う俺に、彼はいつになく頑なに首を横に振る。
「明日何かあるのか?」
「なんもあらへんけど、家に帰りたいんや」
いつもなら大家に遠慮して、夜中に帰ることをためらう男が・・・・。
アリスの横顔はうっすらとほほ笑みを浮かべたまま、ぼんやりと道の端を見ている。
これは重傷だと俺はため息をついた。
こんな状態の彼を帰したら、事故を起こすのは火を見るより明らか。
運良く事故が起きなくても、ふらふらと九州くんだりまで車を走らせそうな雰囲気がある。
「おい、いいから今日は泊まっていけ」
腕をつかもうとのばした手をアリスは力一杯にはねのけた。
俺も驚いたが、はねのけた本人はより驚いたような顔をしていた。
そしてひどく傷ついた顔をする。
その顔を見て、俺は作戦をかえることにした。
打たれた腕をさすりながら、アリスから視線を外す。
「悪かったな・・・」
一言だけつぶやいて、アリスに背を向ける。
「火村!」
途端、背中にかけられる声。
振り替えると不安そうな目がこちらをみていた。
そのまま何も言えず口をぱくぱくとさせるアリスに首をふり、早くついてこいと促す。
すると、アリスは泣きそうな顔をして頷いた。

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