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アリスと呼んで

「俺な。未熟児やってん。」

近頃知り合いになった有栖川という変な関西人の下宿に俺はあがりこんでいた。目的は、友人と話すため・・・ではなく、彼が持っている膨大な本にある。有栖川の方も、それは承知しているだろうが、私が来ることを拒んだことはない。
それをいいことに、今日も積み重ねられた大量の本をひっかきまわし、興味を引かれた一冊を手に取っていた。
題名は 『人間行動生物学』 題名が日本語だから日本語で書かれてあるとおもったのが間違いで、半分は英語の本であった。睨むようにそれを見ていたときに、かけられた言葉が、冒頭の彼の言葉だ。
「へぇ・・・」
突然の言葉に、気の聞いた言葉も吐けず、間抜けな声を出してしまった。
いきなりなんなのだ?
だが、彼は気にした様子はない。
「なんやしらんけど、えらい早よぅ出てきてしもうたらしくてなぁ・・・。
 体重も2000グラムちょっとくらいしかなかったらしいんや」
常なら、本に目を落としながらなんとなくで聞いている俺も、話がなんとなく深刻味を帯びていたこともあり、本から目を離した。
「ほら、未熟児って体の機能も未熟やろ?せやから、長くはもたんのやないかって両親はなしとったんやって」
「で?」
話の先が読めない・・・。まさか、入院することになったとかいう話なのだろうか?
「うん。ほら、赤ちゃんのときとかって女の子の方が、強いっていうやろ?」
「あぁ・・・確かにそんなことを聞いた気がする」
そういうと、何故か有栖川は嬉しそうにこちらを向いた。
「せやろ!そやから、それにあやかって、俺の名前、アリスになったんやね」
「ふーん・・・」
それがオチか?関西人。
「まぁ・・・えっと・・」
何故か言葉を詰まらせる、有栖川に、
「よかったじゃないか、冗談でつけられた名前じゃなくて・・・」
といえば、アホッの言葉と共に、キッと睨まれた。それに、肩をすくめ、
「冗談だよ。丈夫に育ってよかったな」
そう、ほめてやると、有栖川は何がうれしいのやらくすぐったそうに笑った。
「ん・・・せやな・・・。俺な・・・実はこの名前結構きにいってるんや・・・」
「ふーん・・・?」
それで?
という言葉を込めたつもりだったが、彼は何かまた言いよどんだように目を泳がせた。
話は終わったのだろうか?本に目を戻すべきかどうかを迷ってしまう。
そうやって数度、目をさまよわせ、それでも何も言わない有栖川に、俺はようやく本に目を戻すことを決めた。
本をもういちど、睨み、何処まで読んだのだったかと行を読んでいると、
「せやからなぁ・・・」
っと、なんとなく照れたような声が聞こえ、目を上げた。
目が会うと、そろそろと有栖川が目をそらした。
さっきから何がいいたいんだ?少しだけイライラと有栖川を見る。自然と眉間に皺が寄っていたのだろう、こちらをちらりとみた有栖川が苦笑する。
「そんな怖い顔しなや」
「・・・・」
無言で、だったらさっさと言えと促す。
「せやから~・・・君も、俺の事、えーっと・・・」
照れるなぁとかいいながら、頭をかく関西人。
「せやから、そんな怖い顔すなって!」
「生まれつきなんだよ」
「・・・・まぁええ、つまりや、君も俺のこと、有栖川なんて呼ばんと、アリスって呼べ!」
「・・・・」
いろいろ突っ込みたいところはあったが・・・つまり、なんでお前の顔が真っ赤なんだよ・・・とか、何で俺の顔に指をズバッとさしてるんだよ・・・とか、その指がなんで震えてるんだよ・・・とか、何で命令形なんだよっとか・・・それ以上に、なんだ、そんなことかよっと気が抜けたのが大きかった。
くちをぽかんと開けて、彼を見た。
「あ・・・やっぱ、おかしいよな?おかしいよなぁ???下の名前で呼んでくれ・・・なんて、
 うわ、なんかめっちゃ恥ずかしい!恥ずかしい!恥ずかしい!!!!!」
ぎゃーぎゃーいいながら、有栖川は両頬を手で覆い、身をよじる。
「いや・・・別にいいんじゃないか・・・?」
というと、はたと彼は両手で頬を抑えたままこちらを向いた。何かを待つように・・・
何を・・・?あぁ・・・
「アリス」
名を呼ぶと、犬だったら尻尾を振りそうな勢いでニコッと笑った。

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