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関西人

先日、妙な知り合いができた。名前は有栖川。公家のような姓だが名が有栖(ありす)とふざけているので普通の関西人だろう。(べつにふざけた名前だから関西人っていったわけじゃないぜ?)
勝手に小説を読みやがったのは多少気に障ったが、その礼にとカツ丼をおごってくれた(最初はカレーとかいってたが、俺の小説はそんなにやすくない)ので相殺してやることにした。
なんでも奴は俺の小説が気に入ったらしく、また読みたいと宣った。
渡りに船とはこのこと。俺は近ごろ趣味が忙しく勉学をしている時間がない。
聞くところによると、有栖川というやつは我が大学始まって以来の俊英(人間、見た目ではわからないものだ。性格同様あたまも軽そうに見えたのだが)
まぁとにかく、人間嫌いの気のある俺としてはめずらしく興味をひかれた。
うまいこととりいってせいぜいレポートだの論文だのに活躍してもらおう。いっておくが別に俺が頭が悪いって話じゃないぜ?趣味に忙しいってだけだ。
っというわけで、彼の下宿先を今日も訪れたわけだが…

彼の下宿しているその家は北白川というところにある。
ものすごいボロな木造2階建。玄関を入ると、すぐ横に管理人室があり、そこでは皆がばーちゃんと呼んで慕っている老婦人がいる。
小粋な京の女といった言葉が良く似合い、どことなくこたつで猫を膝に乗せながらみかん食ってるという風景が、そこはかとなく似合いそうなばーさんだ。
「あら、火村さんやないの。こんにちわ」
「こんにちわ。有栖川いますか?」
まだ、数度しか訪れていないのに、彼女は俺のことを覚えているらしい。おそらく俺が、猫好きで彼女の猫をやたらめったら可愛がったせいだろう。
「いてはると思いますよ。なんやら、二階から楽しい声がきこえてきおりましたから」
ころころと楽しそうに笑うが、実質はうるさいということではないだろうか。
「すみません。俺が叱っておきます」
そういうと、彼女はまた、ころころと笑って、ええんですよ という。
まったく、こんな上品なばーさんを困らすなんてなんて・・・と俺は、会釈を返しながら二階へとあがった。
有栖川の部屋の前まで来たとき、いきなりドアが内側からあけられ、あやうく額をぶつけるところだった。
何をするんだと、睨みつけてやると、そこにいたのは有栖川ではなく施工事例だった・・。いや、瀬古礼二・・・?それとも、施工工事・・・瀬古浩司だったか・・・覚えやすいんだか覚えにくいんだかよくわからない名前の男だった。
「あぁ、火村か」
「どうかしたのか?」
っと聞いたのは、彼の顔が不機嫌にゆがんでいたからだ。
「なんでもない。」
彼は、俺と話したくないといわんばかりに、俺をすり抜けて下へと降りていった。
何かあったのだろうかと、部屋を見て驚いた。

狭い部屋の中がめちゃくちゃに荒らされ・・・というのは嘘だ。
いつもこれぐらい散らかっている。
そうではなくて、男が二人うつぶせになって倒れて痙攣している。
一人は有栖川。この部屋の住人だろう。もう一人は・・・この下宿に済んでいる成瀬川というやつじゃないだろうか?
俺は、驚いて室内に入ると、玄関の近くに倒れていた方(有栖川)の肩の辺りを揺すった。
「おい、どうしたんだ?」
すると、有栖川は苦しげに(?)薄目を開けてこちらを見る。それに俺はぎょっとした。
彼は涙を流していたのだ。
「ひ・・・ひむらか・・・」
そう、苦しそうにいったあと、また畳に額をくっつけて苦しそうに唸っている。
俺は、有栖川の方に事情を聞くのを諦め、机の向こう側に横たわる男の元へひざまづいた。
背中を揺すると、彼もこちらを薄目をあけて見た。やはり目の端に涙が浮いている。
「ひ・・・火村・・・・腹・・いた・・・っ」
そういって、彼もまた、有栖川に習うように畳に額をつけて悶絶している。
一体何が・・・?
俺は、部屋の中を見回した。
一番先に思いついたのが食中毒だ。
真ん中に置かれている小さな机の上には、乾き物のするめとビールが3本・・。
その他には食べ物はのっていない。缶をもってみると冷たくて、まだほとんど口をつけていないようだった。
乾きもののほうも、まだビニールを破られてまもない。中身は少しだけ減っているが、どうやら犯人はこの二つではないだろう。ではいったい・・?
「おい、お前らなに食ったんだよ」
不機嫌にどちらともなく尋ねてみるが、ひくひくと痙攣しているほかは反応が無い。
「おい、苦しいのか?救急車呼ぶか?」
するとどうだろう、ふたりして手足をばたばたと畳に叩きつけだしたではないか。
これは、だめだ重症だ。末期症状だ。何の病かはしらないが、関西人が罹るくらいだ。かなり手ごわそうだ。
(別に、関西人に偏見があるわけじゃないぜ?)
まだ、レポートを2回やらせただけなのに、死なれては困る。と1階にある電話機に向かおうとした俺の足首を有栖川がつかんだ。
「ん?なんだ?」
「・・・・れ」
「ん???」
聞き取れない俺は、少しイライラしながらも腰をおとし、彼を覗き込むように顔を近づけた。
「なんだ。遺言か?」
バシバシバシっと成瀬川が叩く畳の音が煩い。一体こいつらに何があったんだ?
「きみ・・・・」
「なんだ?」
「一緒に吉本いくか?」
「は?」
何を言われたのかさっぱりわからない。わからないまま、視線を移すと、成瀬川が拳で畳を殴っている。
「・・・も・・・だめ」
これは有栖川の台詞
「は?」
「お・・・おれも・・・降参や」
俺の存在を無視して、成瀬川と有栖川はなにやら同意に達したようで、二人は俺を透かしてうなづきあうと、二人同時に“ぶはっ”という盛大に空気を噴出す音をたて、そして二人して馬鹿笑いを始めたのだ。
あっけにとられる俺をよそに、二人は仰向けになり、腹を押さえ涙を流しながら笑い続ける。
そして、わけのわからないことを言い出すのだ。
「おまえ・・・アリューシャンって・・・」
アリューシャン?
「ラ・・ラセラのほうが・・・」
ラセラ・・・・・???
息もきれぎれになりながら、わけのわからない単語が次々と出てくる。
そして、畳を叩いたり転げまわったり、頭を机に叩きつけたり、悶絶したり・・・・そういう姿を見ていると段々と腹が立ってきた。
「さっき、施工工事が居たようだが?」
「ひぃ・・・ひぃ・・・・せ・・・瀬古?」
「あぁ・・・瀬古・・・か・・・なんや・・・急に怒り出して・・・な?」
「な」
なにが“なっ”だ・・・・。
何故こんな奴が俺の大学の俊英なんだ?
もしかして、だまされてるのか?ったく・・・瀬古とかいうやつが怒り出すのも仕方が無い・・・
きっとこいつ等のことだ、訳の分からないことをいいつづけていたにちがいない・・・。
ちなみに、成瀬川も有栖川も大阪の出身者だ。それに対して、瀬古は確か東北の出身者・・。
「お・・・おれ・・・・瀬古おいかけてくるわ・・・」
まだひぃひぃいいながら瀬古がふらふらと立ち上がる。アリスを跨ごうとして、目測を誤り、ドアに頭をぶつけるようにして転がり出て、また爆笑している。
ナチュラルハイ・・・いっそうらやましいヤツラだ。

有栖川を見ると、蹴られたわき腹を押さえながらそれでもなお笑っている。
「馬鹿」
言ってやると、何がおかしいのやら一層げらげらと笑っている。
こりゃだめだと、俺は、机にのった缶ビールを手に取った。誰が飲んだのかわからないが・・まぁ、気にするようなやつらでもないと、そのまま口をつけてぐいと飲む。
「あ、それ、俺のやで」
っと、有栖川が上半身を起こして抗議の声を上げる。どうやら笑いの発作はおさまったらしい。
「じゃぁ、そっちののめよ」
っと、隣の缶を指差すと素直に手を伸ばす。だが、あまりに笑いすぎたせいか、手が震えて缶をもったもののカタカタを震えさせ結局持ち上げるのは断念したようだ。
「明日・・・絶対筋肉痛やわ」
「それだけ笑えばな・・・」
「っていうか、君がわるいんやで」
「俺?」
心外だとばかりに睨むと、目じりにこぼれた涙を有栖川がぬぐった
「だって、君、救急車とか・・・反則や・・・」
なぜ、救急車が反則なんだ。救急車を見て笑い転げるような奴が居たら神経を疑われるぞ。
「あのなぁ・・・・入って早々、男が二人も倒れて痙攣してたら誰でも心配するだろうが」
飽きれて俺がそういうと、何故か、アリスはきょとんとした顔をして俺の顔を見た。
「君、心配してくれたんか」
「あぁ」
どちらかというと、レポートの心配の方なのだが・・・
だが、彼はわかっているのかいないのか、心底嬉しそうに笑った。
「うれしいなぁ・・・君にそんなこと言うてもらえるやなんてぇ」
やっぱりわかっちゃいない。だが、まぁ、イイように勘違いさせといてやるさ。
「全く心臓が止まるかと思ったぜ」
ちょっと大げさすぎるかと思ったが、彼はそうだろうそうだろうと嬉しそうに笑っている。
扱いやすい男だ。
「だったら、頼まれてくれるな?」
「なにをや?」
「レポート50枚」
「何についてや?」
50枚という数に、嫌な顔をするかとおもえば、有栖川は平然としていた。
「現代の身障者への法的保障制度について」
その題に、有栖川は微妙な顔をして、看護学校みたいだとぶつぶついいながらも、すんなりとそれを受け入れた。
「ま、親友の頼みやし、しゃぁないよなぁ?」
親友・・・?何を言ってるのだと、視線で聞き返すと、ニコニコ笑ったまま小首をかしげる。
“な?”と同意を求める仕草だ。
「・・・・あぁ・・・」
まさか、“な” なんて同意の言葉を吐けるわけも無く、なんとかそう返事をする。
すると、有栖川はうんうんとかいいながら何度も頷く。そのあと、ちらりと横目で俺を見て、にやりと笑った。
・・・・あれ?もしかして、いいように扱われているのは俺か・・・・?
少々、面食らいながらも、にやりと笑い返した。

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