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五月の部屋 05

はれぼったい目をしたアリスが入ってきたのを見て、桜庭は小さく息をついた。
最後にあってから3日が経っている。
噂に聞く、火村氏准教授の機嫌は過去最低を記録しているらしいし・・・今日のアリスの顔を見れば何が起こったか・・・大体のところが予想できた。
桜庭は、アリスと一度目を合わせたが、すぐにそらして知らぬふりをきめこんだ。
「つめたい」
アリスがつぶやき、桜庭はもう一度ため息をついた。
「どっちがですか・・・。」
「コーヒーいれてや」
がたがたとパイプ椅子を引きながらアリスがいい、桜庭は逆らいきれずに、作業をしていた手を止め、作りおきのコーヒーサーバーまで歩いた。
アリスの視線が、桜庭の背中にあたる。
カップにコーヒーを注ぎながら先制とばかりに、桜庭が口を開いた。
「言っておきますけど、愚痴は聞きませんよ」
「あら、つめたい」
「だから、何処が冷たいんですか、言われたとおりにコーヒーを入れてあげてるでしょう?」
桜庭は、カップを少し乱暴にアリスの前に置く。
アリスはそれを両手で持って不満そうに桜庭を見た。
「失恋相手の愚痴まで聞くほどお人よしじゃないです。しかも、恋愛の話なんて・・・」
「別に、恋愛とはいうてへんよ?」
悪戯めいかした目。
桜庭は冷めた目でそれを受け止めた。
「そんなに目を腫らして、そういうこと言われても、説得力ゼロですよ」
「だいぶ腫れとれたからきたんやけど・・・・」
それでですか?頭の中でつぶやく。
「で、火村先生に振られたんですか?」
仕方なく、聞くと、アリスは口を尖らせ不満を顔に出す。
だが、口を開かないアリスに桜庭は、
「そうですか」
言いたくないのならそれで構わない。
むしろ好都合とばかりに桜庭は作業に戻ろうとする。と、
「あぁ、まってや」
アリスは情けない声をあげ、慌てて桜庭を引きとめた。
そして、3日前の出来事をアリスは順を追って話した。

桜庭は、手を動かしながらそれを聞き、途中に何度もため息をついた。
バカらしい。その一言に尽きる。
「ややこしくしてるのは貴方でしょう?」
桜庭が言うと、アリスは眉を八の字に下げて笑う。
「・・・・貴方がそんなに意地っ張りだとは思いませんでした。
 欲しいものは欲しい、好きなものは好き。はっきり言う人だと思ってました」
「何?失望した?」
アリスの言葉に、桜庭は少し考えて首をふる。
それにクスクストアリスは笑う。
「本当に性格が悪いです。火村先生がかわいそうだな。」
「はは、俺が簡単に手におちるとおもったら「簡単に落ちそうですけどね」」
アリスの言葉にかぶって桜庭が言う。
「つまり、火村先生を素直にさせたいわけでしょう?
 自分は本音を言わずに、相手に言わせようとしている。ずるいですよ。本当に。」
「フェアやないって?」
「そうですよ。相手にばかり本音を吐かせて」
「でも、それが俺やからぁ」
っと語尾を伸ばすアリスに桜庭は肩をすくめる。
「あなたが本音を出せば、簡単な話じゃないですか」
「それやと面白くない」
「そういう問題ですか?」
「そういう問題やろう」
「貴方って人は・・・本当に」
「あきれた?」
「えぇ。心底ね」
二人は同時にカップに口をつけ、数口を飲む。
先にカップから口を離したのは桜庭だ。
「そうだ。こういうのはどうでしょう?」
「んぅ?」
アリスが顔を上げるタイミングにあわせて、桜庭は意地悪に笑ってみせる。
「俺が、傷ついた火村先生を慰めるんです」
言うと、アリスは驚いたような顔をして、息を呑んだ。
しかし、すぐに、気を取り直したのか、上目遣いに桜庭を見る。
「やってみたらええよ」
「それは、火村先生の気持ちに自信があるからですか?
 それとも、アリスさんが、彼を渡さないからですか?
 それとも・・・俺には魅力がないっていってるのかな?」
「はは、桜庭君はめっちゃ魅力的やで」
「それはどうも」
「答えは4番目や」
「4番目?」
桜庭が聞き返すと、アリスはさっきのお返しとばかりに、にやりと意地悪な顔で桜庭を見た。
「桜庭君が、馬に蹴られるからや」
桜庭はアリスの言葉に、一瞬間をおいて、それから首をやれやれというように横に振った。
それを見て、アリスが高らかに笑う。
「・・・・そんなに・・・笑わないでください・・・」
火村先生に恨まれそうだ・・・本当に。
ぽつりとつぶやいた言葉は、アリスの馬鹿笑いにかき消された。

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