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ガラスケース

火村が乙女でキモチワルイ
ヒムアリです。珍しく両思いっぽぃです。
特注のガラスケースは、縦15センチ、長さ20センチ、奥行き18センチ。
鍵つきのそれは1万7千円もした。
紙袋に入れられたそれを受け取った俺は、その足で包丁を買いにでかけた。
老舗という感じの店に入り、店主に聞く。
骨すら断ち切るようなものを。
店主はそれにニヤリと笑い、何を切るつもりですか?そんなことを言いながら、刃渡り30センチ近くの包丁を俺に見せた。
危ない親父だ。
値段、1万3千円。
キャッシュで購入。
黒いケースに収められたそれを、ガラスケースの入った袋に入れ、俺は店を後にする。
向かう先は大阪。
10年来の付き合いのある友人・・・・であり、近頃、少しその関係が変化した男の元。

チャイムを押す。

応答なし。

チャイムを再度押す。

応答なし。

チャイムを連打する。

応答なし。

分かっていたこととはいえ・・・・やはりため息が出る。
俺は最近ようやく手に入れた合鍵をつかってドアを開く。
ここ数日、締め切りに追われている男は、俺が毎日通って夕飯を運んでやっていることに気付いていない。あぁ、とか、うん・・・とかそんなぼんやりとした返事だけを返し、夢現な仕草で口の料理を運び、それが終わったかと思えば、ふらりと書斎に戻っていく。
締め切り前で大変なのは分かる。
いい作品を作りたいという意欲も分かる。
しかし、俺に対するあいつの態度は冷たすぎる。
大人気ない。
何度もそう思った。
そして、そのたびに、自嘲を浮かべて自分を抑えてきた。
だが、そろそろ限界。
今日は、締め切り最終日。
それが終わったら強硬手段に出てやろう。
俺は、持ってきた紙袋の中から、ガラスケースと包丁の入ったケースを取り出し、テーブルに並べて置いた。

アリスが書斎から出てきたのは夕方六時。
それと同じくして、チャイムがなり、アリスは俺に一瞥すらくれずに玄関にでる。
それにもまたムッとしながら見ていると、どうやら相手は、宅急便の男だったらしくアリスは手に持っていた封筒を男に託す。
そして、大袈裟にため息をついて戻ってき、そこで俺にようやく気付いた。
「なんやきとったんか。」
「あぁ」
不機嫌に声を出すと、アリスはおやっというように首を傾いだ。
「機嫌悪いんか?」
「そう見えるならそうなんだろう」
アリスは肩をすくめ、それからテーブル中央に置かれた二つのものに目を留めた。
アリスが口を開く前に俺は手を伸ばし、黒いケースを開けて見せる。
中には今日買ったばかりの銀色に光る包丁。
「君・・・・・」
言葉を失くしたように驚いたアリス。
俺はそれをじっくりと鑑賞してから口を開く。
「お前の手首をストンと落とそうと思って」
「え?」
「そして、このガラスケースに収める」
口を閉ざす。
質問は?
そんな視線を投げかける。
アリスはその俺の目を見、それから自分の両手を見た。
俺が切り落とすと言った手首。
理由くらい聞くかと思ったが、アリスは何も言わず、じっとその手をしばらく見、それから、
「ちょっとまっとって」
言い残して書斎に入っていった。

またか。

俺は、機嫌を一段と下げる。
俺の言った脅しの意味、わかっているんだろうか?
言葉にすれば、ものすごく子供じみた欲求なのだが・・。
本当にストンと手首を落としてやろうか。
そして、ガラスケースに収めて、部屋に飾る。
そうすることが出来たら・・・・

そこまで考えたとき、書斎のドアがまた開かれ、アリスが戻ってきた。
彼の手には、
「愛用の万年筆、そんで、パソコンのマウス」
がちゃりと、その二つを俺の前に置いて言った。
「これで勘弁してくれ」
俺はアリスを見つめ、それから目の前に置かれたそれを見た。
何も言わなかったのに・・・・彼は彼なりに俺の言葉の示すところと、不機嫌の理由を悟ったらしい。
俺は少し考え・・・・それから、手を伸ばしてガラスケースの錠をあけ、無言のままに万年筆と、マウスを収めた。
アリスがふっと笑った気配。
不機嫌が完全になおったわけではないが・・・・まぁ、今日のところはこれでいいだろう。

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