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探偵役 4

火村がうざい(笑) パラレル気味
彼に気付いたのは春の事だった。
朝起きて、ふと見た窓の外。
豆芝というやつだろうか、小型の柴犬を散歩させる男に気付いた。
犬は、散歩が嬉しくてたまらないらしく、口をあけて舌をだし、しっぽを千切れんばかりに振ってヒモを引っ張っている。
そして、そのヒモを握っている男は、俺と同い年くらいの奴だった。
170と半分くらいの背の高さ、痩せ型の男は、それほど一目を引くようなタイプには見えなかったが、何故か気になって仕方が無かった。
何故だろう?
そう思って、よく観察すると、彼が散歩させている飼い犬と同じくらいに嬉しそうに微笑んでいることに気付いた。
もちろん、口をあけてケラケラ笑っているというわけではない。
自然に微笑み、散歩がとても楽しいというような様子。
外の空気が美味しくてたまらない。
この道が好きでたまらない。
愛犬と歩くのが楽しくてたまらない
そんな、見ているこっちまで幸せになるような笑顔。
「変な奴・・・」
思わず顔が綻び、つぶやいたのを覚えている。
それから、俺は毎日のように彼を見かけるようになった。
彼を見かけた日は、何故か目覚めもよく、一日がいい気分ですごせる・・・反対に彼を見かけない日は一日を憂鬱に過ごしてしまう。
そしていつしか、朝になると彼が通るのを待ちわびるように窓の桟に手をついて、道を眺めている自分に気付いた。

俺の家には犬は居ないが猫はいた。
茶トラの猫を足に乗せながら、その男が通るのを待つ。それが近頃の習慣。
自分でも何をやっているのかと何度も問いかけ、そのたびにバカらしい、もうやめた・・・と結論を出しているにも関わらず、それをやめることは出来なかった。
やがて、道の向こうから、犬をつれた彼が姿を現す。
犬は相変わらず小さいままで、口をあけて舌を出し、息を荒くしている。
そして、彼もまた相変わらず微笑み楽しそうに歩いている。
ただ、一つ違うことといえば、今日の彼は鼻歌を歌っていることだ。
何の曲かは分からない。
だが、彼が家の前を通るとき、2階にいる俺の元まで確かに何かしらのメロディーの欠片が届いた。
思わずこちらまで微笑んでしまう。
「ほんと・・・楽しそうだよな。」
去っていく後姿を見送りながら、猫の顎の下を指で掻いてやると、猫は嬉しそうに目を細めた。
彼がこの道を反対に歩く姿を見たことは無いから、きっとこの先の公園まで言ったあとは、一つ向こうの通りを通って帰っているのだろうと予想がついた。
「なんでアイツはあんなに楽しそうなんだろうな?」
この道は普通の住宅街で、何も楽しいことなど無いだろうに。
公園だって、それほど大きなものではなく、砂場があり滑り台があるごく普通の小さな公園だ。
珍しい花も、一風かわった時計などもない。
彼が喜ぶようなものが何一つ思いつかない。
それとも、彼の顔を笑顔にさせる何かがこの通りにはあるというのだろうか?
「何なんだろうな?」
猫が返事をするようにニャンとなく。

それから数日、俺はどうしても彼の笑顔の秘密が知りたくなった。
しかし、まさか此処から声をあげて彼に話し掛けるわけにはいかない。
そんなことをしたら不審人物と思われかねない。
いや、彼ならば、なんとなく笑顔で返してくれそうな気もするが、そんなことは俺の性分には合わない。
だからといって、玄関先で待ちうけて話し掛けるのもおかしいだろう。
どうやったら、普通に話しかけられるだろう?
俺は、くだらないことに頭をひねった。
本当にくだらない。
美女をナンパしようとする頭の弱い男のようだ。
相手は美女どころか、女ですらないというのに。
しかし、そんなことを思いつつも彼に話し掛けたいという欲求は止まらない。
少し考え、
「お前も、散歩とかしてみるか?」
足元を陣取っている猫に聞いてみた。
しかし、猫は長い尻尾をまっすぐに上げ、お断りとばかりに部屋を出て行ってしまう。
「つめたいな」
振られた俺は、まだ櫛も通していない髪をがしがしと掻き・・・・それから、ランニングでも始めてみようかと考えた。

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