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探偵役 3

ヒムアリ うざい
「決まった相手はいないのか?」

突然そんなことを言い出した親友の顔を、私はまじまじと見つめた。
一体なんだ?
その私の父親のようなセリフは。

「・・・・いてないなぁ」

少しだけ間をあけてそう返すと、彼はそうかと頷き、何かを考えるように、一度私から目を離した。
一体なにがいいたいのか・・・そう思いながらも、私は、彼との間にある鍋からスープを深めの皿にとり、ゆっくりと口をつけた。
私は、鍋をした後のスープを飲むのが結構すきだ。
いろんな味が出ていて、とても美味いし、それに、なんだかほっとするような気がする。
思わず息をついてしまうような、縁側でお茶を飲む気分に似ている。
もちろん、隣には三毛猫が座布団の上で寝ているのだ。
まぁ、とにかく、それを飲み干して、皿を置くと、正面から、また彼と目があった。

「ん?」

何か言いたげな表情をしている彼を促すと、

「お前は、だらしないから、しっかりした奴が相応しいな」

と言い出した。
怪訝な顔で見つめてやるが、彼はそれに気付いていないのか、いつもより早口に続ける。

「お前は食生活が乱れすぎているから、きちんと料理ができる奴がいい。そして、お前は、時々ぼんやり妄想にふける癖があるから、それを享受できるやつだ。お前がふらふらと赤信号の横断歩道を渡ろうとしているのにすぐに気付くような奴。お前の唐突な話の切り出しに、きちんと頭を回転させ、何を喋りたいのか分かる奴。すぐに何かにメモを取ろうとするお前のために、筆記用具をいつだって持参しているやつ。そして、お前の興味のある話題を持ち合わせているやつだ」

えらく具体的だと、感心しながら聞いていると、彼はいらだったように指でカツカツとテーブルをやりだした。
やめろという代わりに、ペチンと甲を叩くと、指は大人しくなった。
だが、彼の舌はとまらない。
やけに雄弁だ。

「・・・だが、そういうやつはなかなか居ないし、できれば、すでに長いこと付きあいのあるやつがいいそれに、お前はかなりわがままだから、それを素直に聞いてくれるやつがいいな。お前は、結構雑なようで、服の流行ものなんかは詳しいから、相手はそれほど洒落者じゃなくてもいいよな。それと、お前は猫がすきだから、猫が飼っているともっといい」

猫がすきなのは君のほうだろう・・そんなことを思いながらも、何故彼がこれほどまでに雄弁なのか・・・その意味を考える。

「お前は、車にはそう気を使っていないから、相手の車もそんなに気にしないよな。走ればいい、そう思うだろう?でも、まぁ、外車くらいはいいんじゃないか?あぁ、それに、お前は意外に面食いだから、相手はそれなりに整った顔のやつがいいよな。なぁ、そう思うだろう?あぁ、それに頭の思いっきりきれる奴がいい。そうだろう?」

「まぁ、そうやな」

私が頷くと、彼はそうだろうというように頷き、尚、私の目をじっとみた。
私の目の奥にある何かをさぐるように。
そして

「それに当てはまる人物が、すぐ近くにいると思わないか?」

と聞いた。
黒曜石のような真っ黒な瞳で。

ふむ。
っと私は思う。
人がこれほどまでに舌が滑らかになるとき・・・
それは何かヤマシイことがあるからに違いない。
きっと、彼は、私になにかやましいことがあるのだ。
だから、それを隠すためか・・・もしくは、それを告白しようと勢いをつけるために、こんなにどうでもいいことを述べつまなく喋っているのだ。
つまり、話の内容などは二の次なのだ。

「・・・・君は何か、俺に謝りたいことがあるんやな?」

指を一本立てて、真剣な目で聞いてみると、彼は一瞬口を小さくあけて、唖然とした顔をし・・・それから頭を抱えてテーブルに臥せってしまった。
おや・・・・?
あたりだと思ったのだが・・・。

「どないした?」

はずしたのだろうか?そう思っていると

「壁に頭を打ち付けて死にたい気分だ」

っと、彼は返した。
よくわからないが・・・気の毒に。

「何を謝りたいのか俺にはわからんけど・・・気にせぇへんから、あんまり思いつめるなや」

慰めるように言って、彼の頭に軽く手を置いてみたが、彼は唸り声を上げるばかりで、顔を一向に上げようとはしなかった。

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