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小説家 4

ヒムアリ 火村いじめ8?
「俺でいいのか?」
「なにを言うとるんや。君がええんや。」

何もこれは甘い会話ではない。
“俺、髪伸ばそうかな”のあとに続いた会話だと言えばよく分かるはずだ。
つまり、アリスは俺に髪を切ってくれと頼んでいるのだ。
妙に洒落たことに気を使うヤツだと思っていれば、時折、とんでもなく自堕落になる。
気紛れなアリスに俺はため息をついた。
「どうなってもしらないぞ」
「やから、長めに頼むわ」
そういって、アリスは、中央の辺りを丸く切り抜いた新聞紙をかぶって、広げられた新聞紙の上の椅子に腰掛けた。
俺はうんざりしながらも、テーブルにある櫛とハサミを手に取った。
アリスの髪は、肩下5センチほどにまで伸びている。
はっきりいって伸びすぎだ。
仕事中は後ろで一つに結んでいたようだが、横の髪がぱらぱらと落ちて邪魔そうにしていた。
俺は、とりあえず、その横髪を一房手にとって軽くひっぱり、それから、

シャキン

一直線に切った。
アリスの、猫毛の入った髪が、ぱらりと主人の元を離れ、新聞紙の上に落ちる。
切った後の横髪は耳に軽くかかるくらい・・・。
しかし・・・・
「何?」
なかなか次を切り出さない俺に、アリスが聞く。
「いや・・・普通に長さを切りそろえるだけにしたら、ぼっちゃん刈りみたいになると思って」
「あぁ・・・それはイヤや」
「イヤって・・・」
やっぱり、美容院でも床屋でもいけよっという俺に、アリスはいいから早く切れと促す。
俺は少しかんがえ、さきほど切った髪の上の方だけを掬い、それを先ほどのよりも少し短めに切った。
なるほど。
これなら、少しましになる。
つまり、外側の髪は短く、内側の髪は長く切ればいいわけだ。
少しずつ段差をつけて。
どうせ、相手はアリスなのだから、遠慮することはないだろうと、俺はザクザクとハサミを動かした。


「お客様、こちらでよろしかったでしょうか?」
40分後、俺は、演技めかしてそういうと、恭しくアリスに手鏡を差し出した。
そして、俺自身はもう一つの手鏡を持ってアリスの背後に立つ。
アリスはしばらく、ふんふんといいながら、横をむいたり、顎をさげたりしていた。
そして、
「器用なもんやなぁ・・・完璧や」
っと感心したようにいった。
「もてる男は何でもできるんだよ」
にやりと笑って言うと、アリスは手鏡ごしに嫌な顔をして見せた。
そして、慎重に新聞紙を脱ぎ、立ち上がって背伸びをする。
「あーーーーつかれたぁ・・・・」
自分は何もしていないくせに。
そんなアリスをみて俺も伸びをする。
俺の場合はずっと中腰だったのだ、思いっきり伸びて左右に身体を振ると骨がバキバキとなった。
その俺をアリスは振り返り、

「料金は、ちゅー一回と、3000円、どっちがええ?」

にっこりと微笑んでいった。
それはもう、とろけるような魅惑的な顔で。
左手にはいつの間にか、野口英世が3人・・・。
キス一回と、3000円?
そんなの決まっている。
比べるまでも、迷うまでもない。
俺は勿論言った。
アリスの唇を熱く見つめて。

「さ・・・・三千円」

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