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地位と名誉と金 05

読み返してない・・・ごめん
「お前には俺の専属の執事をしてもらう。秘書の真似をしろとはいわないが、お前は俺の行く場所にはすべて同行するように。詳しくは森下に聞け」

彼はそれだけを言うとさっさと部屋を出て行った。
彼の口調からして決して俺に好意を持っているようには見えない。
むしろ邪魔くさいとすら思っているようだ。
それなのに彼は私に傍から離れるなという。
どういう矛盾だ。気に入らないなら仕事を与えずに放ったらかしにしておけばいいのに・・・。
ため息をこらえながら傍らに立った森下さんというらしい若い男に目をやった。
かなり顔立ちのいいすらっとした男だ。
彼は私の視線に気づくとニコリと微笑み、
「森下恵一といいます。」
小さく頭を下げた。
どうやら、彼がしばらくの間は私の傍についてくれるらしい。
私たちは挨拶を交わし、とりあえず彼の自宅となっている屋敷を案内してもらった。

屋敷は明治時代に作られたというなかなか洒落た屋敷だった。
調度品もかなり贅沢。成金が“高い”というだけで手に入れたようなものではなく、吟味され一つずつをゆっくりと選んで揃えていったようだ。
絨毯しかり、壁紙しかり、絵画しかり・・・。
木製の窓枠や机なども年月を経ていい味を出している。
まるで屋敷自体が美術館・・・いや、国宝にでもなれそうだ。
恐らく・・・そこにある花瓶一つで私に数年分の給料が一瞬にして飛んでいくに違いない。
やはり天下のエイト・グループの総裁、火村の屋敷ということか。
たかだか三代にしかならない赤星とは所詮格が違うらしい・・・。
「つかれましたか?」
声をかけられてハッと顔を上げた。どうやらいつのまにか彼の言葉を右から左にしていたらしい。
「すみません。お屋敷があまりに素晴らしいので」
「えぇ・・・確かに。私も最初此処にきたときは言葉を失ってしまいましたからね。ほら、あそこにおかれているピアノ」
森下さんがさしたのは廊下の曲がり角、広い一角にさり気なく置かれたピアノだった。
「白いピアノですか」
「えぇ。あれ、象牙で作られているんですよ」
「えぇっ!」
驚く私に彼は満足そうな顔をした。
「いまはワシントン条約があってあれほどのものはもう作られませんからね・・・って、私が自慢することじゃないんですけど」
あらためてスゴイ・・・。
その他にも彼が説明してくれたものは全て由緒正しいもの。
あのランプは某国のなんたらと言う公爵が持っていたものだとか、あそこにある絵はかのナンタラという画家が唯一書いた人物がだとか、あの飾り細工は某有名デザイナーにわざわざ注文して5年がかりで設えさせたものだとか。
「でも、現当主はあまり気に入っておられないようで」
「そうなんですか?」
「えぇ。社長は・・・なんというか、実用性を重視される方ですから」
芸術が分からない人ではないが、
「そういったものは、隠居してから楽しむと言って憚らないんです」
森下さんの言葉に思わず笑ってしまった。
「たしかに・・・社長が、美術品を愛でるのはあまり想像できませんね」

「そして、最後に、此処が有栖川さんの部屋になります」
そう言って開けられた2階の部屋は・・・なんというか、とても豪華な部屋だった。
淡いクリーム色にまとめられた部屋は正面に大きく窓をとられていて、陽の光がさんさんと注いでいる。
「こちらが応接間兼リビングといったところですね。」
応接セットが一つと、大きな影響テレビ、音響装置が一揃え。
飾り棚にはいくつもの洋酒が並んでいて、本棚にも本がぎっしりと詰め込まれている。
「右手にキッチン、あ、そちらがバスルームです。そして左手の手前が書斎で、奥が寝室になります」
先にキッチンを見せてもらったがそちらは妙に新しい。
もしかしたら急遽作られたスペースなのかもしれない。
バスルームも広く、やはりホテルのように整っていた。
「こんな・・・大きな部屋を使ってもいいんですか?」
まるでホテルのスィート・・・いや、此処がこの屋敷の主人の部屋といっても過言ではない豪華さだ。
少なくとも執事が使えるような部屋ではない。
「えぇ。そう社長に申し使っていますから」
森下さんは言って、こんどは書斎の方を案内してくれた。
書類仕事は殆どないだろうと言われたが、エイト・グループについての勉強は必要になるはずだ。
最新型のパソコンは社内ネットワークのみにつながっていて、外部にはつながっていないらしい。
外部のものにアクセスする場合はノートパソコンを使って欲しいといわれた。
そして、
「あの扉は」
と、森下さんは奥にある扉をさした。
「社長の部屋につながっています」
「え?!」
社長の部屋に・・・?それって・・・
「隣が社長の部屋になっていますので」
目を白黒させる私に構わず今度は森下さんは寝室の方へ行き、そしてまた奥の扉を指し、
「あの扉も社長の部屋につながっています。」
と言った。
「あの・・・社長の部屋が隣って・・・」
「えぇ。その方が便利だろうと社長に。」
・・・・それは便利かもしれないが・・・かもしれないが・・・・。

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