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カード

知り合いの占い師は、私が選んだカードを表に向けて、あらっと小さく言った。
深くかぶったローブのせいで表情までは見て取れないが、かなり驚いているように私は感じた。
彼女は、それから円形に並べられたカードを次々にめくり、そのたびに感嘆の声を小さく上げる。
そのカードは、さかさまになった塔だったり、後光をあびたアポロンのような図柄がかかれたものだったりするのだが、私にはその意味は全くわからない。
カードはタロットカードに似ているが、実際にはそのカードは占いのごく一部で、本当はと計算式をつかった(星や生年月日などをつかった)複雑な占いをしているのだと言う。
実際、私は、ここに来る1週間ほど前に自分の生年月日やら現住所などを彼女に渡している。
彼女は、全てのカードを表にあけると、その小さく何かをつぶやきながら、一つずつのカードを指差し、占いの結果を自分の中で整理しているようだった。
時折、手帳を開いて、なにやら書き込んだりもしている。
私はそれを黙って待っていた。
特に占いに興味があったわけではないし・・・信じているわけでもなかったのだが・・・1対1でこうやって座っていると、ドキドキと胸が高鳴ってくる。
いい結果か・・・それとも悪い結果か。

「出たわよ。アリス」
占い師が、頭にかぶっていたローブを取って、にっこりと笑った。
「どうやった?」
両腕をテーブルについて、わずかに上目遣いに尋ねると、私の前に座った占い師(マリア)は意味ありがににんまりと笑った。
「いい結果か?」
私は、彼女の笑顔に確信を持って聞くと、彼女は思ったとおり、そのままの笑顔で強く頷いた。
それで、私は、ほんの少し胸をなでおろすことが出来た。
信じてはいないといっても・・・やはりいい結果だと嬉しい。
たとえ、新米の占い師の言うこととはいえ、あなたは明日死にます・・・なんてことは言われたら、純真な私はきっと落ち込んでしまうだろう。
「うん。かなりいい結果だと思うよ」
「思う・・・って」
「あー・・・じゃなかった。いい結果ですよ。ね」
占い師なんだから、思う・・じゃ、だめよね・・・っと、マリアは苦笑しながら言った。
「あぁ、それでね。アリス。かなりいい結果よ」
それはもう聞いた。そういおうとしたけれど、結局だまって彼女の次の言葉を待った。
「このカードがいまの、あなたの現状をしめしているのだけれど・・・・」
っと、彼女は羊飼いの描かれているようなカードを指していった。
なかなかに長い説明だったので、要約すると、どうやら、今の自分は停滞期にいるらしい。
順調で、悪いこともなにもないが、空気がよどんでいて、新しいことが何も始まらない状態。
それが、過去2年ほどは続いているらしい。(自覚はないが、そういうことらしい)
で、このままいっても、代わり映えしない運命が待っていたらしいのだが、転機がここで起こる。
っと、彼女はもう一つのカードをさしていった。それは運命の輪というカードらしい。
これがあると、その人の人生は180度変わってしまうことになる。
180度・・・変わる?
「・・・・まってくれ、マリア」
私は思わずそういってしまった。
「なぁに?アリス」
「今まで、平々凡々やったが幸せやった~いうたな?」
「そうね」
「それで、180度も変わってしまったら、全然ええことないやないか?」
私が指摘すると、彼女はかわいらしい目をぱちくりと2度ほどさせて、いいことに気がついたわね・・・っというように頷いた。
「まぁ、そうね。アリス」
ちなみに、よくできました と同じ口調だ。私はがっくりと肩を落とし、ついでいからせた。
「まぁ、そうね・・・やないやないか!」
なにがいい結果だ!っと私がわめくと、マリアは人事のように(もちろん本当に人事なのだが)けらけらと笑った。
「あぁ~ごめんなさい。アリス。でも、大丈夫よ」
「なにがや~」
「未来のカードは明るいから。だから180度ていうより90度垂直に傾いたってかんじかな。
 今までは二次元の平和。これからは上に向っていく上昇気流よ。」
三次元!っとよくわからない表現だが・・・未来が明るいなら、それもよしとしよう。
「で?」
私が不承不承に先を促すと、彼女はにっこりと微笑んだまま口を開いた。
「うん。で、その運命の転機なんだけど、それが、ものすごく近くに起こるの。」
「近くに?」
私は驚いて、辺りを見渡した。
その私を、またマリアが笑う。
「あぁ、そうじゃなくって、距離の近くじゃなくて、時間の近くね」
「あぁ・・・そういうこと」
「そういうこと。で、その人にあって、貴方の人生が180度・・じゃなくて、
 90度上向きになるって寸法よ。」
「ふぅん」
「ふぅんって、気の無い言葉ねぇ・・・」
マリアはつまらなそうに言った。が、具体的にどこがどうなるというのが分からないのでは、喜びようがない。
私がそういうと、マリアは、口を尖らせ、それから、照れたように俯いた。
「私は、まだ修行中だから、そんなに具体的なことまでは分からないのよ」
その態度に、私は急に申し訳なくなってしまった。
「あぁ・・いや、そんなはっきりわかっとったら、これからの面白みもなくなるから、
 ちょうどええんやないかな?」
と、フォローを入れてみる。
彼女は、小首を傾げるようにして微笑み、そういってもらえると嬉しいといった。
「それで、その転機の時期なんだけど、ここ1週間ってところなのよね。
 なぜかって言うと、これは天体の話になっちゃうから難しいのだけれど・・・・聞く?」
彼女の言葉に私は肩をすくめる。そんなもの聞いても、私に分かるはずは無い。
「それはええわ。で、その転機ってのは俺にもわかる形であらわれるんか?」
いうと、マリアはもちろんよと微笑んだ。

彼女がいうには、それこそ180度世界が変わるのだから(すぐに90度上昇とは言い換えていたが)、それはとんでもなく印象的な出来事なのだそうだ。
しかし、ほんとうに、そんなに驚くような出来事・・・?
あれから3日たつが、全くそのような出来事は起きない。
思い当たることといったら、ガリガリ君であたりが出たことくらいだろうか・・・。
まさか、そんなことで上昇気流にのれるわけもない・・・。
ううーーむ・・・しかし、あと数日でそれが起こらなかったら平々凡々の二次元の幸せ・・・
っと・・・そこでふと我に返った。
何を私は考えているのだ。
そもそも、占いなぞ信じてはいなかったはずではないか。
そうだ。
大体、彼女は、まだ占い師になり立てで、練習台にと私を占ったのだ。(金はしっかりとられたが)占いというものは、当たるも八卦、当たらぬも八卦というではないか。
何を、私は、真剣にそんなことを思い悩んでいたのか・・・。
考えると、本当に馬鹿らしくなった。っと同時に、悩みが甲斐性され、すっきりとした気分になった。
「ばからしい」
声に出して、言ってみると、一層せいせいした気分になった。
っと、その時・・・
「あああ?!」
誰かが、ドンっと背中を押した、いや、当たったのかもしれない。
だが、それを確かめる余裕は私にはない。
なぜなら、私は、階段をまさにこれから下りようとしたところだったからだ。
階段を目の前に、背中を押されたら・・・どうなるか・・・くらいは5歳の子供だってわかるだろう。
目の前には急な階段。
何人かが、私の方を驚いたように見ているのが分かった。
そして、私の正面には一人の男がいて、ゆっくりと振り返ろうとしているのが分かる。
スローモーションのような表現だが、まさにその通り。
生命の危機(言い過ぎではないはずだ)に、脳がフルスピードで働いている。
そして、私に考えさせるのだ。自分自身が助かる方法を・・・!
しかし、私は、その方法を見つけることが出来なかった。
やったことといったら、ばたばたと手を上下にさせたくらい・・・。
もちろん、そんなことで私の体が上昇するわけもない。
振り返った男・・・私と同年代くらいの、やけに整った顔の男、そいつに、私は心の中でスマンと謝り、ついでに、ぜひとも受け止めてくれと願いを込めて、あとは重力に身を任せた。

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