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ダイナ 2

目を開けると、ぼんやりとした視界、何かがゆらゆらと揺れている。
ロープ・・・?
それにしては、太いような気がする。
ゆっくりと数度瞬きをし、ぼんやりしたままそれに手を伸ばした。
とたん、それはぴくりと反応した。
ふわふわでほんのり温かい。
それはよく知った手触り。
あぁ、これは猫の・・・・

「猫・・・?」
うつらうつらとした気分が一気に冷めた。
そして、気付いたらそれをぐいと引っ張っていた。
「い・・・・・・・!いたあああああああ!」
途端に聞こえた声。
握ったものの先をたどれば・・・・
「お前なにやってるんだ?」
「そ・・・そのまえに、て・・・て・・・て!」
ひくひくとしている某推理作家。
「手・・・?」
俺は掴んでいたそれを見る。それをもう一度辿る。
彼のジーパンに繋がっている。しかも良く見ると、ジーパンが丸く切り抜いてある。
「よっ」
とりあえず、もう一度引っ張った。ちょっとした、愛嬌ってやつだ。
「だだだだ!だから・・・!!!!ち・・ちぎれるぅぅっぅって!」
慌てたような、そして悲鳴に近い声に手を離す。
ため息。もちろん、俺じゃなくて、目の前にいる猫男。
「お前、いつから、ダイナにクラスチェンジしたんだ?」
確かお前は・・・ってこの思考は近い過去にしたような気がする。
ダイナ・・・ではなく、アリスは振り返るとまた大きく息をついた。
「やから、きのうもいうたけど、なんやしらんけど、こうなってしもうたんや」
その喋り方がどこかぎこちない。
気のせいだろうか・・・?
「何でか知らないって・・・・理由もわからないのか?」
「わかるわけないやろ、あさ おきたら こうなってたんや」
「アリス・・・?」
やはりどこか不自然な喋り方。なんというか・・・虫歯か口内炎が痛まないように、苦労して喋っているというような感じだ。
口をあまり閉じないようにしてしゃべっているような感じ。
「なんや?」
「お前、何か口に入れているのか?」
「いれてへん」
「じゃぁ、なんで普通に喋らない?」
普通突っ込むところは他にいくらでもあると思うのだが、俺はとりあえずそちらが気になった。
俺が聞くと、アリスはぐっとつまった。
「何だ・・・?」
俺はベットから脚を下ろし、立ち上がると、アリスにちかづいた。
耳がピコピコと動いている。
そちらに手を伸ばしそうになったが、我慢して、彼の頬を両側から掴む。
「いひゃい」
よくわからない言葉は無視して、無理やり、口を大きくあけさせる。
が・・・特になにもない。何かあるとすれば、奥歯にある、虫歯の治療跡くらいだ。
ぺちんと離すとアリスは両手で自分の頬を包んだ。
結構いたかったらしく、上目遣いに睨まれる。もちろん、全く迫力はない。ピコピコとまた耳が動いた。
視線を落とすと、長い尻尾もまたゆらゆらと揺れている。
俺の視線に気付いたアリスは、頬から手を離し、片手は耳を、そしてもう片手は尻尾をかばう。
「何だよ」
「なにって、またひっぱる き やろ!」
いたいんだから・・ともごもごという。
「お前、その喋り方は一体なんなんだ?」
もう一度問いただすが、彼は、口を一文字に結んで何も言わない。
「言わなきゃ、引っ張る。ちぎる。ぶった切る」
冷たい目と、口元にうっすらとした笑みを浮かべて言ってやると、彼は怯えたように震えた。
「・・・・!さでぃすと!」
「なんとでも」
なんら痛烈には感じないね。そういうと、ぼそぼそと彼は何か言った。
「なんだ?」
「にゃから、ゆだんすると、へんにゃ喋り方になるんにゃ!」
「・・・・は?」
「にゃにょ・・・なぎょう あたりがおかしくにゃるん!」
ブッ・・・俺は思わず噴出した。
30過ぎた男が・・・・30過ぎた男が・・・頭に耳生やして、ケツから尻尾生やして・・その上・・・・にゃんにゃん言葉だと?!
「お前、いったい・・・いつからダイナに・・・」
「それはもうさんにょ、聞いたにゃ!あーーーもう、笑うにゃ!おれかて、いらいらしとるんにゃ!」
そういって、耳をぴこぴこし、尻尾をぱたぱたとするアリスは、普段になくやけに可愛いらしく見える。
思わず手を伸ばし、頭を撫でてやると、うっとりというように目を閉じ、それからハッと目を開けると、俺の手をはじいた。
「にゃ・・・なにするんや!」
顔を真っ赤にして言うと、いつも以上に迫力がない・・・上に、やたらと可愛く見える。
ベットにボスッと勢いをつけて座り、こいこいと手招きをした。
アリスは不審な顔をし、耳をぴくぴくとする。
近づかない、アリスに、野良猫を呼ぶときのようにチッチッと口で言って手招きをする。
すると、わざとかどうかはしらないが、本物の野良猫がするように恐る恐ると近づいてきた。
ピクピクと耳を動かすのも忘れない。
さて、どうやって苛め倒してやろうか・・・?
毎度毎度・・・俺の頭痛の種ばかり増やしてくれやがって・・・・・。
俺の若白毛の原因の80%はお前に原因があるということを、もう一度、しっかり教え込んでやる・・・!
そんなことを考えてつつ、にっこりと笑う俺を分かっているのかいないのか、手を差し出すと、本物の猫がするように、彼は頬をその手の平につけて、ぐりぐりとすりつけた。

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