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創生主 04

こじんまりとした隠れ家的な雰囲気のする喫茶店。
年季の入った、所々ニスのはげたカウンター。
中に入っている店長らしい老人は、痩せて真白な髪をしていた。
赤いウェストコートと蝶ネクタイ、袖にはシャツガーター付きでなかなか洒落た爺さんだ。
音楽は定番クラシックをジャズにアレンジしたもの。
カウンターの端には古びたレジスター、カウンターの後ろにある棚にはアンティーク調のカップが複数飾られている。
ほぅと息をつくのと、アリスがにこにこと俺を見ているのに気付いたのはほぼ同時だった。
「いい店やろ?」
「あぁ、そうだな。」
「気にいったか?」
「まぁ・・・な」
そうだろうそうだろうと、カップを両手で包むようにしてコーヒーを味わうアリス。
ご機嫌なのはなによりだが・・・
「別にお前を褒めたわけじゃない」
ぽつりと言えば、クスリと笑われた。アリスではなく、店主らしい男に。
「すみません・・・」
「いえ、何も謝られることはありませんよ」
愛想よく目を細める店主。
本当に感じのいい人だ。
それに対して・・
「何が?」
っというアリスは・・だめだ。
軽く指ででこを弾くと首を傾げられてしまった。
「で、何か用なのか?」
こんなところまで猫を使わせて・・・そういうと、彼はすぐにまた笑顔になった。
「うん。あのな、この店、貰うん」
「・・・?貰う・・・?」
「そ、貰うん」
どういう意味・・・?
要領を得ないアリス。助けを求めるように店主の方を見ると、
「此処を譲ろうと思っているんですよ」
そんなことを言った。
「譲るって・・・?」
「そのままの意味です。」
そのまま・・・?
そのままにとってしまえば・・・
「アリスが・・・此処を経営するのか・・・?」
驚いて聞けば、アリスはその通りだというように頷いて見せた。
そのアリスの膝の上にはいつの間にか、小さなトラの子猫が丸くなっている。
こいつ、またッ・・・と厳しい目を向けると、彼は小さく肩をすくめた。
絶対に悪いなんて思っていない態度・・・なのに、そうされると怒れない俺。
「本気で言ってるのか・・・?」
「そのつもり」
「お前が・・・できるわけないだろう・・・」
呆れて言うと、店主がアリスの助けを買って出た。
「いえ、出来なくてもいいんですよ。」
「出来なくてもいい・・・?」
「えぇ。出来なくてもいいんです。気が向いたときにこの店をあけてくれればいいんです」
首を傾げる俺に、彼は言った。
これから1年ほどをかけて世界を周る旅行をするのだと。
だからその間、この店を預かって欲しい。
そして、できれば、時々でいいから店を開けて欲しいと。
「つまり、譲る・・・じゃなくて、正確には預ける・・・ですね?」
「いえいえ、期限付きで譲るんですよ。」
にっこりと笑った店主。
本気なのか・・・?視線で問えば、彼はもちろんっとくるりと目を回して見せた、
膝の上に乗った子猫を指で撫でながら。
「で、君、俺の共同経営者にならへん?」
「え?」
「な、ええやん。楽しそうやろう?」
そんな・・大学だってあるし、そんなに暇じゃない・・・そういおうとしたのだが・・・鼻腔をくすぐるコーヒーの香りと、カチコチという柱時計の秒針の音に・・・それもいいかな・・・なんて思ってしまう。
その俺の一瞬の間を了承と取ったらしいアリスが、とても嬉しそうに、
「決まりやな」
言うものだから、俺は仕方ないと苦笑するしかない。

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