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創生主 03

目を覚ました途端、金色と目が合った。
瞬間混乱した俺が目を瞬くと、そいつはにゃーと啼いた。
それで猫だと気付いたが、見たことのない猫だったので驚き半身を起こした。
その猫は体を丸めるようにして俺の枕元に座り込こんでいる。
短毛の白い猫で三角耳とスレンダーな体、特徴的なのは耳の先と長い尻尾の先がオレンジがかった毛をしており、かなりの美猫だ。
一体何処から入ってきたのだろうと顔をめぐらせるが、ドアもそして窓もきっちりと施錠してある。
おかしなこともあるものだと首を捻り、ようやく思い至った。

― アリスの仕業だ。 ―

彼には特殊な能力があり、生き物を自由に作り出すことが出来る。
魔法としかいえない所業だが、彼はただの特技として捉えているようで、俺としてもあまり深く突っ込む気はない。
ただ、彼の特異な能力が他の迷惑(特に自分の迷惑)にならない限りはおよそ容認している。
そして、今、俺の部屋にいるこの猫もまた、彼の創造物だろう。
彼は、生き物であれば彼の知識にある限り作り出せるのだといい、その中でも、猫は特に彼のお気に入りの創造物だ。
三毛にキジ、白に黒、橙にブチ・・・カラフルなところがすきなのだといっていた。

猫は手を伸ばすと、触ってくれというように目を細くする猫。
「お前の創生主は何処へ行ったんだ?」
頭を軽く撫でてやると、猫はまた一声鳴きそれからするりと俺の手を逃れると玄関のほうに歩き出した。
そして、扉をカリカリと数度引っかき俺を振り返り、あけてくれと鳴いた。
頭のいい猫だと俺は少々感心し、布団から出てドアを開けてやった。
が・・・しかし、彼(もしくは彼女)は、扉の前から動かない。
猫は尻尾をまっすぐに立てて、俺を見上げる。
「・・・ついて来いって言ってるのか・・・?」
まさかと思いながらそう口にすると、猫はそのまさかですよ・・というようにまた一声を鳴いた。

身支度を整える間を律儀に待っていた猫は、俺が玄関に行くとようやく廊下に体を出した。
猫は慣れた様子で下宿の階段を降り、玄関では靴を履く俺を待って、それからまた歩き出す。下宿を出て、右に折れ、それから左に折れまっすぐに。
猫は、俺がちゃんと自分のあとをついてきているかを確かめるかのように時折俺を振り返り、それからまたトコトコと歩き出した。
これは本当に案内したいところがあるらしい。
妙だとおもいつつ、そんなこともあるさと俺は気楽に考え、煙草をふかしながらまっすぐに伸びた尻尾を追った。
10分ほどを歩き公園をつっきり、住宅街の裏側に回る。
線路を横切り、隣町に入ってしばらく・・・細い路地をいくつか通って出た場所は、河川敷の傍だった。
大きな桜の木があり、家族連れがピクニックを楽しんでいる。
わりと大きな川には鉄橋が架かっておりちょうど電車が通っているところだった。
ガタンガタンという音が心地よく響く。
猫は川へは向わず、川の上流を目指すように歩き出した。
二人の学生が自転車で向かいからやってきて、猫のあとを追う俺を見てくすくすと笑って通り過ぎた。
猫は知らん顔で歩き続け、やがて川を見下ろす位置にあるカフェの前で立ち止まり、入口をまっすぐに見て座った。
「此処か・・・?」
聞くと、猫はにゃんと愛想よく鳴いて俺を見上げ、それからもう用は済んだというようにトコトコと今度は俺を振り返りもせずに狭い路地(これは俺が入れそうに無い)に入っていった。
俺はその猫を見送り、それからカフェに向き直った。
“楓”と流れるような文字の書かれた看板。
木製のドアをあけると、カランカランという涼しげな音が響きカウンターに座っていたアリスが、やっときたと言いながらこちらを見た。

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