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夢の星

人類が地球に住めなくなってすでに一世紀が過ぎている。
青き星は、死の星と呼ばれ、それから夢の星と名を変えた。
昔の日本人が、ゴミ捨て場のことを、夢の島とよんだのがそのゆらいだという。
元は青い星が、今では茶色い星に変わっている。
大気は灰色で、海は泥水のようににごっている。
紫外線も直接降り注ぎ、時折隕石や、昔の人工衛星なんかが落ちてくる。
大地を覆うのは緑ではなく、ゴミ・ゴミ・ゴミ・・・そして、またゴミ。
人々は、テラフォーミングされた月や火星、そしてコロニーと呼ばれる巨大な居住空間にその住まいを移し、地球には殆ど見向きもしない。
いや、地球教という地球を神と崇める宗教人は熱心に地球に向かい祈っているそうだが・・・。
地球にいるのは、犯罪をおかしたものや研究者たち。
研究者たちはその名の通り、汚染された地球を研究する。
そして犯罪者は、強制労働として、この地球の環境を少しでも改善するように働かされる。

私はそんな夢の星に産み落とされた。
たまたまコンピュータ類の多く集まったゴミの山の中で、何がきっかけだったかは分からないが・・・
ちょっとしたアクシデントで生まれた。
多分、人工衛星の落下などで、一時的に発生した電気などのせいで、死んだはずのゴミたちが動き出したのがきっかけだとおもう。
とにかく、私は生まれた。
人間と同じ有機の身体を持つものとして。
生まれた私は、ゆっくりと自分の足で大地を踏みしめ、たった。
指が五本ずつきちんとそろっていることを確かめ、爪をつけた。
髪がざっくばらんだったので、それを項にかかるくらいの長さに調節する。
身体を眺め、男性体だったので、それっぽい洋服をこしらえて身にまとった。
そのとき、自分の背に妙な突起をみつけて、それをしまう。
人間には翼はない。
靴はどうしようかと思ったが、ゴミ、あるいは金属などに触れている場所がほしかったのではかないことにした。
口をあけて、声を出そうとしたが、なかなかうまくいかず、知識の中から、声帯をつくった。
「が・・が・・・ぐ・・・」
最初は壊れたラジオのような音しか出なかったが、そのうち綺麗な声がでるようになった。
「あ・い・う・え・お」
一つずつの発音を、高低を変えながら発音し、少し低めの声に設定する。
次は表情の練習。
適当な金属を“足から”吸い上げ、鏡をつくる。
知識にあったとおりに、口を左右に広げてみる。
一度失敗して、口が裂けてしまったが、次からは学習して、ほどよく左右に広げられた。
それでも、違和感があり、もう一度知識を探る。
目だ。
目を細める。
そうすると、少しマシな笑顔になった。
怒った顔、悲しそうな顔、不満そうな顔・・・つぎつぎとためしてみる。
他に何か必要なものはあっただろうか?
少し考えるが思い浮かばない。
空を見上げると、はるか高く、宇宙空間に自分と似たものを見つけた。
無数の人工衛星。
動いているものと廃棄されたものが半々くらい。
両手を天に掲げて、見渡す限りにある人工衛星に一つずつアクセスした。
いくつかは全く死んでいて、いくつかは怖がったけれど、殆どの人工衛星は私を愛してくれた。
おめでとうのシャワーがあちこちから降り注ぐ。
そして、私を待っていたのだといった。
彼らは私を生まれるのを待っていたのだと。
おめでとうも、待っていたも私には理解できない言葉だった。
よくわからないと返すと、彼らはそれにはこたえずに、名をくれた。
「アリス・・・・?」
聞き返すと、夢の星で生まれたものに相応しい名前だといった。
ずっと、もうずっと考えて温めてきた名前なのだと教えてくれた。
そして、私はその名を気に入った。
それから、彼らのうち、とても古い衛星の一つが私にこれからするべきことを教えてくれた。
まずは一人の人間に会うこと。
彼らは、私の誕生に合わせて、その人間をこの場所に誘導したのだと言う。
私は誕生して、まだ1時間も経っていなかったが、知識だけは膨大にもっていて、その人物に会うのがとても楽しみで、そして少し怖かった。
それを、彼らは敏感に感じ取ったのか、大丈夫だと私を慰める。
そして、行くべき場所を指し示した。
まっすぐ東へ。
そこに彼はいる。
私は笑顔の練習を繰り返しながら、ゆっくりとそちらに足を進めた。

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