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卵生天使

狐と猫の中間のような白い動物を俺は飼っている。
大きさは猫くらいで、耳が狐のように尖っていて、尾が自身の体よりも長い。
長毛で、口を開けさせると小さな牙が並んでいる。
真っ白で、丸まっているとクッションや毛糸玉にしか見えない。
名をアリスという。
えらく少女趣味な名前をつけたとお思いかも知れないが、俺がつけたわけではないのでそこのとこは勘違いしないでくれ。
玉子にそう書いてあったのだ。
玉子。
そう。
アリスは玉子から生まれた。
人間の赤ん坊が入るくらいの大きさの玉子から。

アリスは送り状を貼りつけられてやってきた。
二十歳そこそこの運送会社の若い男に抱えられて。
その送り状に書いてあったから間違いない。
こいつはアリスなのだ。
玉子から猫のような生物が生まれたのにも驚いたが、それよりも驚いたのはこいつが喋ったことだ。
玉子から孵ったそいつを見て、
「変なダチョウだな」
といった。
でかい玉子から生まれるものっていったら、それしか思い浮かばなかったからだ。
独り言のつもりだった。
だが、それに返事をしたヤツがいた。
「そうそう、飛ぶのはできへんけど、足だけはえらいはやいんやで~・・・ってなんでやねん!」
生乾きの白い毛をしたそいつは、手振りまで交えて見事にノリツッコミをやってのけた。
生まれたての癖に。
アリスはしばらく手をその角度に上げていたが、やがて唖然としている俺を見上げてにやりと笑った。
猫もどきの癖に。
これはもう、悪い夢としか思えなかった。
俺は割れて尚、玉子の形をとどめた殻にアリスを詰め込むと、そのまま捨ててしまおうとした。

まぁ、結論から言うと、この部屋にアリスがいるのだから、捨てることはなかった。

それから、妙な共同生活が始まることになる。

彼の言うことには、
「俺はいつか、天使になるやでー」
だ、そうだ。
そして、
「あ、俺、野菜と果物しか食えへんのや」
っと、尖った牙を見せながら言う。
その牙はどう考えても肉食系だと思うが、まぁいいだろう。
「いつか、白い肌で金髪のきれーーーな「それは嘘だ」」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
ジト目で睨む猫もどき。
それがどんなものか見たいか?
結構きもちわるい。
そして、この猫もどき、天使になるとか言っている割に、俺の晩酌用のビールは飲むは、灰皿においておいた煙草はすうわ・・・。
酔っ払った猫もどきは見てられないし。
煙草を咥えた猫もどきを見た日には、俺は壁に頭を打ち付けたくなった。

しかし・・・まぁ、それでも俺はアリスが天使だと信じている。
なにも、アリスが玉子から生まれたわけでも、猫みたいだが絶対に猫じゃないところを見て言っているわけではない。
ただ、
近頃、ここの大家が言うのだ。
「火村さん、このところ凄く楽しそうやね。なんぞ、いいことでもあったんですか?」
と。

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