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兎は月を望んで

タイトルは・・・兎っていれたくて・・・漢語林ひいてそれらしい言葉があったので、それをつけました。
意味はまったくないです。
タイトルつけるのニガテで・・・
俺の住むマンションにそいつが転がり込んできたのは、そいつの入学式の当日だった。
俺の父親の弟の嫁の兄の従兄弟のハトコのじーさんの親戚筋だとかいう、はっきりいって他人のガキを、俺のおばさんだという人物がつれてきたのだ。
学生服をきたそいつは、高校に入学するらしく、まだ成長途上の細い体つきをしていた。
白い肌にほんのりと上気した頬、目が茶色でくりくりっとしたそいつは、女の子のようなっという表現が良く似合う顔立ちをしていた。
昨晩夜更かしをしていた俺は、そのおばさんの化粧臭さに辟易とし殆ど話を聞いていなかった。
なぁなぁに返事をしていたらその内に諦めて帰るだろうと踏んでいた。
そして、それはあたった。
おばさんは帰った。
だが、つれてきたそいつを置いていった。
そいつが言うには、
「さっきも、あのおばはんが言うたんやけどな。
 俺、今日から、この近くの高校に通うことになってん。
 でな、一人暮らしせなあかんかったんやけど、不動産屋との話の行き違いがあったらしくって
 俺、アパートにはいれかってん。で、右往左往しとったら、さっきのおばはんが、君の事、思い出して
 そったら、俺をここに世話してくれたんや」
「・・・・へぇ」
まだ頭があまりはっきりとしていなかった俺を、押しのけるようにそいつは部屋に入り込んだ。
「おぉ、思ったよりも広いやん。俺、このソファつこてええ?」
言いながら、荷物をソファにどかりと置くと、ベランダから周りの様子を確認している。
俺はそのときになってようやく事態が少しずつ理解しだした。
「おい」
名を呼ぼうとして、そいつの名を聞いていないことに気付く。
「お前!」
なんとも情けない呼び方で、ベランダにいるそいつに声をかけた。
「なんや?」
「おまえ、俺のところに押しかける気か?」
きょとんとした顔でそいつは俺のことを見上げ、当たり前だといった。
「さっきからそういっとるやん。よろしく頼むよって」
へらりと笑って手を差し出すそいつに、眩暈を感じた俺はその手を無視して室内に戻った。

それから一週間、そのうちに出て行くのだろうと思って、放置していたそいつはその考えが甘いといわんばかりに腰を据えにかかった。
俺は大学生で、あいつは高校生で、朝と夜程度しか顔をあわせないので、それほど不快には感じていなかったが、それでも他人と同居というのはどうにも居心地が悪いものである。
そこで、いつ出て行くのかと聞くと、そいつが卒業までだとのうのうと言ってのけた。
「なに?君、女とか連れ込む予定とかあってん?」
「いや」
「なんや、それならええやん」
「そういうことじゃないだろう」
「じゃぁ、なんなん?俺じゃま?」
そういって、そいつは上目遣いに俺を見つめた。
不安そうに眉を寄せて・・・。
俺は一瞬詰まった。
どうにもこういう目には、弱く出来ているらしい俺は、曖昧に答えをはぐらかした。
「あぁ、わかった。食費と家賃やな。」
曖昧に視線をそらした俺を見て、そいつは勝手にそう判断したらしい。
「それやったら」
そういって、そいつは寝そべっていたソファから降りると、傍らにおいていたスポーツバックを探り出した。
本当は高校生から金を徴発するのもどうかと思うが、たしかに食費も家賃もタダではない。
月2万円ほど受け取ってもいいだろうと思って見ていると、そいつは、茶色の袋を取り出した。
そして、中から10枚ほどの諭吉を取り出すと、ぽんと俺に渡した。
「おい・・・」
袋にはまだ多くの金が入っている。不審なものを感じた俺が声をかけると、そいつはふにゃりと笑った。
「この金か?」
「あぁ・・それだけあれば新しいアパートにも入れるだろう?」
「まぁ・・・確かにな。」
急に不安になったように視線を落とした。
「だったら、他のマンションに入ればいいだろう?」
俺の提案にそいつは、しばし考え、ポツリといった。
「せやけど・・・悪銭身につかずっていうやろ・・・」
「悪銭?」
聞きとがめて問い返すと、そいつはあからさまに、しまったという顔をして口元を手で覆った。
「おい、お前・・」
「な・・・なんや?」
引きつった笑顔でそいつは目をあわせようとはしない。
「今のはどういう意味だ?」
「なんでもあらへんよ」
「じゃぁ、その金の出所を教えろ」
詰めよると、ますますそいつの目が泳ぐ。
「も・・・もちろん、お小遣いにきまっとるやん?」
「嘘をつくな」
「ついてへんって・・・ほんまや・・・ちょっと」
「ちょっと?」
こいつはどうやら嘘をつくのが相当に下手らしい。俺が言葉の尻尾を掴むと、泣きそうな顔をした。
「え・・・・」
「え?」
「援助してもろうたんや!」
「援助?!」
援助?
援助っていうのは・・つまり・・・
「違う!」
俺の思考をさえぎるようにそいつは大声を上げた。顔が真っ赤に染まっている。
「援助っていうのは言葉が悪かった。俺はそんなことをしてないし、されてもない!」
そんなことがどのような行為なのかはあえて書くまでもないだろう。
それに、やってないというのだから、わざわざそこに突っ込むほどヤボではない。
「じゃぁ、何なんだ?これは・・・?」
俺は隙をついて、そいつの手に握られていた封筒を取り上げた。あっと声を上げたそいつだが、奪い返そうとはしなかった。
「言うたら・・・ここおってもええ・・・・?」
コイツが何故、ここに執着するのか意味がわからないが、それくらいなら良しと頷く。
「それと・・・怒らんといてくれる?」
俺は少し考え、それも一応頷く。
「それと・・・・」
「まだあるのか?」
「あ、えっと、これで最後やから」
いつのまにか正座になったそいつは上目遣いに俺を見た。
「なんなんだ」
「えっと・・・君の名前教えて・・・・ほしい・・・・」
最後の方は消え入りそうな声で言われ、なんだか俺が苛めているような気分になってきた。
「名前なら表札に入っているだろう?」
「苗字しかかいてないやん・・・それに・・・君、俺の名前もよんでくれんし・・・・」
「それは・・・・お前の名前を知らないからだ・・・・」
言うと、そいつは途端に笑顔になってこちらを見た。
「そ・・・そやったんか!そやったら、俺の名前・・・」
言いかけたそいつを手で制する。ストップ。
「その前に」
そういって、茶封筒をそいつの前に差し出すと、ぐっと詰まった。
「・・・さっきのこと聞いてくれる?」
頷く。
「あんな・・・その金・・・・・」
言いづらそうにそいつは何度か口をパクパクとした。
あえてせかさずにその続きを待つ。
やがて俯き、それからまた顔をあげ、不安そうに目をそらし、また俯き・・・・
それから、がばっと顔を上げると、
「盗ったんや!!!やから、君の名前教えてくれ!」
顔を真っ赤にして、泣きそうな顔で言われ・・・叱れるやつがどれほどいるだろうか?
ちなみに俺は屈した。
「火村・・・英生」
言うと、そいつはにっこりと笑って、名乗った。

そして数ヶ月。
手癖の悪いアリスと名乗った男との共同生活はまだ続いている。

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