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古城の領主

「はぁ~なんでこんなこと引き受けたんやろうなぁ~」
私は未練がましくぶつぶつ言いながら森を歩いていた。
時刻は夜半をとうにすぎている。
「いっくら、俺が騎士の資格をもっとるぅ~言うても、
 それとったんはむか~しの話やし、今までずっと内勤やで~?
 実戦なんかやったことないんやで~?あほかっちゅうねん!
 な~にがドラキュラや!な~にがフランケンシュタインや!な~にが狼男や!
 な~にが赤毛のレドメインや~!関係あるかぁ~!」
最後にはほとんど絶叫していて私はあわてて口を押さえた。
遠くで野犬か狼の鳴き声がする。
ぞくりと背中につめたいものが走った。
「うん・・・そやな。赤毛のレドメインはほんまに関係ないな・・・」
私は、足を動かすことに専念することにした。

私がこの地域に転任してきたのは数日前。
持ち前の人当たりの良さで人脈を広げているときに耳に挟んだ噂。
森の奥深く、昔の領主がすんでいた城にあやしげな者が住み着いている・・・。
よくある幽霊話かと思えば、そうでもないらしく、目撃者は多い。
しかし、詳しく聞けば、人によって吸血鬼だ人狼だと正体はまったくわからない。
興味をひかれていろんな人に噂をきいていけば、あんたは役人だし騎士の称号もあるらしいし、自分で調べたらどうだ という話が出た。
私は騎士といってもほんのひよっこだとその時は逃げたのだが、次の日には、どういう話の展開か、私はその化け物退治に出掛けるということになっていた。
私は大いに慌て否定したが、次から次へと村人が激励にやってきて、ついには化け物屋敷に出向くことになってしまった。

「最悪や」

まったく、私は村人たちにいじめられているのではないだろうか?

「重いし」

久しぶりに帯刀したら、その重いこと。何度、その辺に捨てようと思ったか。

「でもなぁ・・・」

聞けば、件の屋敷は打ち棄てられて200年が経過しているという。
山賊などの住みかになっていたら困る。
化け物は管轄でないが、山賊は間違いなく管轄内だ。
私は盛大にため息をついた。
その時・・・、
「ん?」
なにか、森のフクロウや虫たちとは異なる音を私の耳がとらえた。
ダダダッダダダッという、テンポのよいリズム。
聞き覚えのある音だとしばし足を止めて、その音の正体をさぐる。
「ん~・・・王都におった時はようきいとったなぁ・・・もっと硬い音やったけど・・・ん~」
ぶつぶついっている間に、その音はだんだんと近づいてきた。
ダダダッダダダッ・・・
「ん~・・・。あっ!わかった!馬の蹄の音やん!」
納得納得っと手を叩いたのも束の間。
「って!なんでこんなとこを馬が疾駆しとるんや!」
しかも野性の馬ではない、訓練された軍馬の走り方だ。
「ぎゃー!たべられるぅ~」
黙っていれば良いものの、気が付くと私はそう叫んでいた。
慌てて口を押さえるが、すでに遅し。
蹄の音は目標を見つけたかのようにまっすぐにこちらへむかってきた。
そうだ!剣を抜かなければ!
その考えはとても良かった。考えだけは・・・。
剣を抜こうとした腕は途中で何かにつっかかったように止まった。
「ん・・・・?」
ぐんっ!ぐんっ!っと数度引っ張っても剣は鞘からぬかれない・・・。
恐る恐る、私が視線を下げるとそこにみたのは、剣と鞘、そして自分のベルトがぐるんぐるんに巻いてある光景だった。
まったく、ぐるぐるでがちがちに。
「・・・あー・・・・腰のベルトとの固定の仕方わすれて適当にやったんやった・・・」
― こんなん、ぶらさがっとればええんや!―
元気いっぱいに叫んだ今朝の自分が恨めしい。
しかしいまさら言ったところで・・・いや、言う時間もない。
私は一本の巨木のそばに頭を抱えてしゃがみこんでしまった。
逃げればよいというかもしれないが、これには抜き差しならない理由があったのだ。
つまり、腰が抜けたのだ・・・。
「うぁぁぁぁぁぁ」
走り抜き様に切り捨てられる!
いよいよ間近に迫った蹄の音に私はいよいよ観念した。
が、なかなか斬撃は下りてこない。それどころか蹄の音まで止まってしまった。
「・・・・・」
ブルルルっと馬のいななきが間近に聞こえた。
私は恐る恐る腕の間からそちらを見た。
月明かりを背中に背負った黒騎士・・・・!
「うひゃあ~!首なし騎士やぁ~!いのちばかりはぁ~っ!
 うちには、幼い子供と、年老いた両親がおって、俺しか働き手がおらんのですぅ~~~」
本当はそんな人がいないばかりか、天涯孤独な身なのだが、とりあえずそんなことをいってみた。
すると・・・・
「遅いと思ってきてみれば・・・一体何をしているんだ?」
「へ?」
思ったよりまともなこえ・・・どころか、劇場のオペラ歌手のような低く通る声をかけられ、私は大いに驚きまたそろそろと腕の間からそちらを見た。
黒衣の騎士は、これまた真っ黒な馬から降り立ったところだった。
「へ?じゃねぇだろう。遅かったな」
「お・・・おおおおお・・・・遅かったって何や」
私が盛大にどもると、彼は首をかしげた。
残念ながら、いまだ月を背にした彼の顔は私の方からは見えない。
声や物腰からすると、私と同じくらいか少し上といったところだろうか・・・。体格は私より数段上だし、身のこなしは歴戦の勇士を思わせた。
「村のやつらに頼んでおいたんだ」
「む・・・むらのひと・・・?」
「そうだ。今度の役人がきたらこちらへまわせってな」
「こち・・・ら?」
私は男の言っている言葉が理解できなかった。
大体こちらってなんだ?こちらって??
この森の中のことか?この森は、ただあの朽ちた領主の館とやらに続く道ではないのか?
それが・・・こちら?
「なんだ。勘が悪いな」
「へ・・・・?」
「それに、領主に対するときはそれなりの態度があるだろう?」
「りょ・・・領主?」
いや、それは違う。
私は頭の中で否定した。
このあたりの領主は、でっぷりとした脂ぎった親父で、そのくせキューピーのようにくるくるとした巻き毛のきっもちわるいヤツだぞっと・・・。
「だから、お前がこれから、“向っていた先”の領主だよ」
「・・・・・なんやて?」
「村のやつがちゃんと説明しなかったのか?」
「・・・なにを?」
「俺が」
そういって、男は顎をそらせた。偉そうな態度だが、そのおかげで月明かりが彼の顔の輪郭を映し出した。精悍という言葉が似合う、鼻筋の通った伊達男といったところか。
よかった。やっぱり普通の人だったのだ・・・っと私は思った。
だが、
「このあたりを200年以上納めている領主だ。そして、今夜からお前の主になる。」
期待はすぐに打ち砕かれた。
「ぎゃーーーー!」
私は悲鳴を上げて四つん這いで逃げた。
「いややぁ~やっぱ化け物やんかぁ~俺はそんなん聞いてないぃ~」
しかし・・・途中で私の手が空をきった。
「ぎゃーーーー」
いつのまにか、私は後ろ襟首をつかまれ、宙にういていた。
っと、次の瞬間には馬にまたがった先ほどの男の脇に抱えられていた。
「なにするんやぁああああああ」
「煩い男だな。城へ帰るんだよ」
「城?なんでや!!!俺は無実や!」
「当たり前だ。さっきもいっただろう?今日からお前は俺の部下なんだよ。
 せっかく、王都から呼び寄せたんだ。逃げられてたまるか」
「いーーーやーーー」
私はわけのわからないまま、男の脇にかかえられ、森の奥へと連れ去られた。

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