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雨涙-ウルイ- 2

思った展開にならなかったので、題名がういてしまいました。
アリスは、ポンチョを開き、自分の胸ポケットから自分のライターを取り出し擦った。
途端に、灯る火を俺に差し出す。俺は口に咥えた煙草をその火に近づけた。
「いいライターもってるな」
ふかしながら、俺が言う。
アリスが持っていたライターは、シルバーのジッポだった。
アリスは自分の煙草にも火をつけてから、にやりと笑った。
「これか?これは大尉からかっぱらったんや」
「本当か?」
「せや。あんまり俺をイビルもんやから、ちょっとしたお礼にな」
どうやら、機嫌は完全に直ったらしいアリスは、明るく言葉を継ぐ。
「寝とる間にちょいと忍び込んで、拝借ってわけや。
 ほんまは、家族写真をっとったろうとおもったんやけどな、奥さんらしい人からの
 メッセージ入っとるのを見たら、急にやる気がうせてん」
「ジョーカー大尉か?」
思いついて、俺が聞くと、そうやっとアリスが頷く。
「奥さんすげーブサイクだったろう?」
聞くと、にやりとヤツが笑う。
「どこのカバかと思うたわ」
思ったよりも、全然話しやすいやつで、煙草一本をすいに来たはずの俺はついつい話し込んでしまった。
30分ほども話しただろうか、ふいに会話が途切れ、俺は思い出したように最初の質問をした。
「で、お前は、ぼんやりと何をしていたんだ?昼間のことを考えていたといったが・・・」
「あぁ・・・」
アリスの顔が急に無表情になる。
「どうかしたのか?」
アリスは俺から目を離し、どこか遠くを見つめる。俺はその視線の先を追ったが、大粒の雨に煙る夜しか見えなかった。
「昼間に街にいったんや。この近くの街、しっとるやろう?俺たちも時々遊びに行く」
「あぁ」
俺は、ひなびた町をおもい浮かべる。
コンクリートの道なんてあったもんじゃない、埃っぽい街、平屋の家が転々とあり、やせた子供たちがものめずらしそうに兵を見る。年頃以上の女は家の中にひっこんで、時折、窓からそっとこちらを伺う。男たちは、愛想笑いを浮かべながら、気付かれぬように悪態をつく。
決して居心地がいいと言えるような街ではないが、そこで出される料理はどれもうまかったし、酒だっていけた。
「そこでちょっとした戦闘があってな・・・」
「誰かやられたのか?」
「・・・あぁ、二人負傷した。一人はちょっとひどかったから除隊が決まった。
 もう一人は、かすり傷や」
「それで?」
それだけなら、別にたいしたことにないように思えた。
この戦争じゃ毎日、敵味方あわせて100人以上が死んでいるのだ。
こういっちゃ悪いが、命までとられなかった幸福な話とも言える。
「・・・・女の子がな・・・・」
それだけの言葉で、大体の話がわかり、俺はため息をついた。それが、あぁ・・・という共感のものか、それとも悪態なのか、自分でもよくわからないままに。
「可愛い女の子やったんや、肌のようやけた、黒い髪がくるくるしとって・・・・」
俺はアリスが泣いているのではないかと、横顔をみつめたが、その目は乾いていた。
「解放軍のやつらがきてドカンや。あっけないもんやったで」
にやりと笑ったアリスの目は、虚ろだった。
こういう目をする奴をここではよくみる。だが、此処まで透明な色を浮かべる奴はしらない。
雨は尚激しく大地に打ちつけ、この世の終わりを思わせる。
「俺を狙ったんやろうな・・・でも、結局、ミンチになったのは俺の目の前にいた女の子。
 俺はこうやってのうのうといきとるっちゅーわけや。」
「お前、任期は?」
他に・・・いう言葉なんて浮かばなかった。
「さぁ。」
「さぁ?」
俺たち兵士は、任期の終わる日数を指折り数える。それが普通だ。
毎日カレンダーにバツをつけて、その日を待つ。
妙に思っているとそれが顔に出たのだろう、アリスは肩をすくめた。
「大尉殿の言うとおりってわけや・・・。」
「・・・・偉く、目をかけられてるんだな・・・」
「あほ言うな。目の敵にされとるっていうんや。こういうんは・・・」
「お前、一体何をやったんだ?」
聞くと、アリスは片手を差し出した。俺はその手を見つめた後、アリスに目を戻す。
「もう一本くれへん?」
俺は頷き、煙草を一本ぬいてやる。ついでに自分の分も取り出し、最初のときと同じようにアリスが火をつけた。ついでに、俺にもライターを回す。
「そいつは、お前にやるわ。」
「いいのか?」
「あぁ、いつでも盗めばええんや。」
「それが、任期の決められていない理由か?」
「いいや」
アリスは目を細めてこっちを見つめる。
やはり透明で、どことなく虚ろ・・・。何処をみているのかわからないような。
「気になるか?」
「大いに」
アリスはその言葉に、クスリと笑ってジャングルに目を移す。
うっすらと微笑を笑いを浮かべたまま、アリスは煙を大きく吸い、そしてゆっくりと吐き、吸殻を捨てた。
答えを返す気もないのだろう・・・いや、それどころか、もう俺との会話は終わったというように、フードをかぶりなおすと、また雨の中歩哨にアリスは出て行った。

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