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禁戒

そういえば・・・吸血鬼ものやってないなぁっとおもいまして。。。
そいつの身体はひどく弱っていた。
牙を隠すことも出来ず、長く鋭い爪を隠すことも出来てやいなかった。
だが、それなのに・・・いや、それゆえに、妖艶なる美しさが際立った。

吸血鬼というやつは、人間の血をすうために特化した生き物で、人を誘惑するためにその能力の多くを使っている。特に、弱ったやつというのは、生存本能というやつのせいで、ひどく淫猥な雰囲気を出していた。
マジックミラー越しに、生徒たちがそれぞれが見えた姿を喋っている。
「すっごいいい女に見えるぜ。ブロンドが腰まで波打ってて・・・
 すけるような白い肌、ほっそい腰、豊満な胸!」
「私にはアジア系の男の子に見えるわ。すっごくキュートな・・・。
 そうねぇ・・・ローティーンに見えるけど、東洋人は若く見えるから、もう少し上かしら・・・?」
「俺には、可愛らしいお嬢さんに見えるな。
 ハチミツ色の髪がふわふわしていて、頭にリボンをしている。ピンクのレースのやつだ。」
それぞれ、男も女もうっとりと、欲をにじませた瞳でマジックミラーの向こうにいるそいつを見つめている。人間というやつは本来、匂いにはかなり鈍感な生き物だ。
だから、自分たちがどれほど浅ましい体臭を放っているか気付いていない。
欲にまみれた、あまったるい匂い。
誰もが、マジックミラーの向こうにいるそいつをほしがっている。
むせ返るような匂いの中で、俺はわずかに眉を潜めた。
「火村君にはどう見える?」
白衣をきた女の一人が、唐突に俺に話を振ってきた。
答える義務はないと思いながらも俺は口を開く。
「そうだな。金髪のとびっきりいい女だ。ムネがでかくて、真っ赤な唇。
 肉付きがよくて、程よくくびれた・・・・」
言ったとたんに女の何人かが顔を寄せ合って、それが彼の好みなのかしらっとささやきあっている。
もちろん、それは綺麗に無視するが、同じく白衣を着た男の一人が小さく肩をすくめたのをみて、彼だけが自分のいった容姿がだれのことか分かったらしいと気付く。
俺はそれに鼻で笑って答えた。
今俺が言った特徴を持っているのは、彼が椅子の上においていた雑誌の表紙にのっているグラビア女優なのだから。
「さて、諸君」
一番前に立っていた、鶏がらのような印象の教授が振り返った。
「君たちには、これからアレに直接会ってもらうことになるわけだが・・・
 その前に、一応、アレの幻覚に惑わされないための処置を受けてもらう。
 各自、医務室へと行って、医者に自分のプレートを示せば、自動的にその処置を受けられる。
 終わったら、もう一度、この場所に戻ってきてもらう。
 その後、20分ほど説明を行った後、一人ずつアレに対面してもらおう。わかったかね?」
教授はそういって、全員を見渡した。
何も質問がないことを確かめると、
「さぁ、いきなさい」
っと、皆を送り出し、全員が出たことを確かめて自分もその部屋から出、鍵を閉めた。
白衣を着た俺たち生徒は一斉に、医務室へと向かって歩き始め、教授は反対側の通路へと歩き去った。それを確かめ、俺はゆっくりとその列を離れ、誰も見てないことを確かめて、隠し持った合鍵で先ほどの部屋に入った。

中から、鍵をして、もういちどマジックミラー越しに中の様子を探る。
先ほどアレと呼ばれていたそいつは、先ほどと同じように床に座り込んだ姿勢で苦しそうにしていた。
「アリス・・・」
俺は、胸が痛むのを感じる。
だが、感傷に浸っている時間は無い。
すばやく、もう一つの鍵を取り出すとマジックミラーの向こうの部屋のドアを開けた。
一度とまって、息を吸い、一気にドアを内側へと押し開けた。
ドアが開いた気配を敏感に感じ取ったのだろう、アリスははじかれたように顔をあげ、屹とにらみつけた。っが、それも一瞬、すぐに戸惑いの表情に取って代わった。
部屋の中には熱帯に漂う濃い湿気のような強い香りが漂っていた。
吸血鬼の匂いとしかいいあらわしようのない種類の香りだ。
「なんで・・・・・」
かすれた声でささやくように言うアリスが痛々しい。
俺は勤めて冷たい表情を保ったまま彼の傍らに膝をついた。
肩に手を伸ばすと、弱々しいながらも、アリスが俺の手をはじいた。
俺はそれに鼻をならして応える。それをバカにされたととったのだろう、目の奥に怒りの炎がともったのが分かった。
「君・・・なんでこないなとこおるねん・・・・」
「さぁ・・・何でだと思う?」
これも、彼にとってはからかいのネタに聞こえたのか、唇を噛み締めてにらまれてしまった。
その仕草に余計に俺が意地の悪い笑みを浮かべると気付いていないでもあるまいに。
「とにかく・・・此処を出るぞ」
「なんやて・・・・?」
怪訝な顔をするアリスに俺は目を細めた。
「それとも、ここに残ってモルモット扱いされたいのか?」
「・・・・・・・」
「だったら此処を出るぞ。立てるか?」
アリスは少しの間俺をそのままにらみ、ついで床に視線を落とした。
俺に助けを求めるのがそれほどいやなのかと、内心いらいらとしながらアリスの言葉を待つ。
「・・・・あるけへん・・・」
吐き捨てるように言うアリスは、明らかに俺に対してのいらつきがあった。
だが、あえて俺はそれを無視してアリスに手を差し出した。
アリスは差し出された手をじっとみつめたあと、諦めたように一つ息を吐き、手を重ねた。
凍るほど冷たく凍えているかと想像していたアリスの手は、俺の手よりも熱を持っていた。
まるで、今までストーブの前にでもいたかのように・・・。
「大分弱っているな」
抱えるようにして立たせたアリスの身体は思ったよりも軽く、力が入っていなかった。
「・・・・・」
応えないアリス。何がなんでも反論してくる性格の男がこれほど大人しいということに、俺は少し心配になる。アリスは机にもたれかけさせ、自分の白衣を開き、シャツの上をはだけさせた。
「火村・・・?」
「・・・・少しは補給しておけ」
そして、彼に首をさらす。
こくりと小さくアリスののどがなった。
「・・・・せ・・やけど」
「・・・わがまま言ってる場合じゃねぇだろう・・・。お前を抱えてここから出るのは目立ちすぎる」
「・・・・・」
「早くしろ」
そういって、アリスの細い身体を抱き寄せるようにすると、アリスの身体が一瞬跳ねた。
彼の頬が俺の首筋に当たるのがわかった。
小さく息をつくその吐息が、俺の肌をくすぐる。
「すまん・・・・」
アリスが小さく言い、俺の首筋にちくりとした痛みが走った。

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