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ダブル

俺にはここ5年手を組んでいるパートナーがいる。
だが、しかし、俺はそいつの顔も本名もしらない。
俺の仕事は、諜報員。つまりスパイだ。
そして、パートナーもスパイ。
つまり、俺たちは二重スパイの関係だ。
もっと簡単にいうと、自国の情報を相手に流して、向こうからの情報を自分の手柄としている関係だ。
とっても、分かりやすい。
俺たちは互いに、ギブアンドテークのフィフティ・フィフティな関係をもっとうとしている。
愛国心というものははっきりいってない。
あくまでビジネスだと俺(達?)は考えている。
上のほうがどう思っているか知らないが、今のところばれてはいない(それどころか、信用が厚いほうだ)が、俺たちに言わせれば狸の化かしあいというやつだ。
なんせ、俺たちの間では情報はザルのように流れているのだから。
無論、そのまんまを上に伝えるわけではない。多少の工夫も必要ではある。
っが、まぁ、とりあえず、俺たちの関係は分かってもらえたと思う。
分からなかった?
そりゃ、管理人が悪いんだ。
あとで文句でもいっといてくれ。
管理人ってだれかって?
今この文章うちこんでる頭の悪い奴のことさ。
・・・まぁ、そんなことは置いといて、一応自己紹介をしておこう。
俺の名前は火村。そして、奴のコードネームはアリス。アリスなんてふざけた名前の男がいるはずがないから、コードネームに決まっている。
じゃなきゃ、ゲイだな。
っと、話がそれた。
そのアリスという奴とは、面識が無いにしても、信用足る男だということはコレまでの経験からわかっていた。そいつの情報のおかげでこちとら、順調に出世街道にのっているのだから。
だが、ある情報をきっかけにその歯車が少しずつずれていた。
俺があまりに出世したものだから、相手側の国が俺に刺客を差し向けた事件があった。
その情報は、アリスがきちんと俺に知らせてくれたので、そこまで心配はしていなかった。
差し迫った危険があれば、アリスからきちんと連絡が入ると思っていたのだ。
だが、それが間違いだった。
ある国での滞在ホテルに届いたアリスの伝言では、その日は、ホテルから一歩も出るなとあった。俺は、それを信用して、その日は具合が悪いという口実で全ての予定をキャンセルしたのだ・・・っが・・・昼過ぎにアルマーニスーツ姿の男たちが現れた。
俺はからくも逃げ出したものの、アリスに一言文句いってやろうと、次の伝言に苦情を暗号として盛り込んだのだ。まぁ、それだけなら、よかったのだが、アイツからの反応がまたいつもと違った。
いつもの情報を別に暗号に隠されていた文章を見て、俺はとさかに来た。
『それはすまなかった。
 だが、それは次の情報のためには仕方のない処置だった。
 大体、自分だって、君のところの情報の行き違いでかなり危ない目にあったのだから』
次の情報・・・?次の情報だと?
俺が居なくなったら情報どころじゃねーだろうがこのクソッタレ!
大体、俺の情報の行き違い?何行ってやがる、俺がいつそんなヘマをしたってんだ?
っと、俺はそのときの考えをそのまんま、文章にしたためてアリスへと送ってしまった。
もちろん、暗号なんかにする必要はない。ただの抗議文だからだ。
それで俺は一応の気が晴れていたのだが、数日後の手紙でまた頭に来た。
奴は、お国言葉もあらわにあからさまに俺に喧嘩を売ったのだ。
そこから先はもう、売り言葉に買い言葉。小学生レベルに落ちるのは坂道を下るよりも早かった。
国家の高級諜報員とは思えない低俗な文章が俺たちの間で行き来した。
それこそ、仕事そっちのけで。
おそらく周りの同僚からは偉く込み入った仕事をしていると勘違いしたにちがいない。
毎日をいらいらと過ごし、それこそ低俗なののしり文句ばかりを考えて、指で机にリズムを打ち、時折、白い紙にペンを走らせる。机の上に置いた灰皿はとっくに崩壊していて、灰がそこらに散っているが、そんなことすらどうでもよかった。そしてそれを放置していたら、いつの間にか、そこから発火したらしく、俺が席をはずした間にスプリンクラーが作動。
俺の部屋は水浸しになった。
それでますます俺の頭は沸騰した。
上司にも気遣われるほどに俺の機嫌は下降、そして、どうやらそれはアリスという男もそうだったらしい。俺たちはある日、互いにタブーを侵すことを暗黙の了解のうちに決定した。
そして、最後通牒とも言える手紙を受け取った。
それに、俺は果たし状のような内容を返信する。
つまり、直接対決だ。
紙面の上だけでは決着がつかない。
場所は、とある北欧の国のある都市。
互いに忙しい身だが、これ以上に優先するものなど持ち合わせていない。二日後に即断で決まった。
その間に、俺は銃をとりそろえ、しばらくデスクワークでなまった体に勘を戻らせる運動をさせた。
どうなるかはそのとき次第だが、舌戦で終わるようなことはないだろうと踏んでいた。

当日。
時計台広場に、12時。
時計台が見えるカフェで時間をつぶし、鐘がなるとともに、歩き出した。
歴史を感じさせる重い鐘の音。
っと、前方からも同じように歩いてくる人物。
あいつか・・・・俺は小さくつぶやいた。
背はおれよりも少し低いくらいだが、体の線は細く、一見華奢。白い肌に、小さな頤(おとがい)。色素の薄い茶色がかった男にしては少し長い黒髪。
アリスの名に相応しく、女っぽぃ顔立ちは今憤怒に染まっている。
そして、アリスの腰には、大型のリボルバー。
相手も同じように俺を観察しているのだろう。
俺たちは2メートルほどの距離を置いて対峙した。
視線で互いに殺そうとでもいうようににらみ合う。
真昼の決闘っといったかんじだ。
風が吹き、互いのコートがはためき、カサカサと新聞が舞う。何かをきっかけに、鳩たちが飛び立たった。何かを感じたのか、住人たちが足早に時計台前の広場から姿を消す。
その間、俺たちは瞬きもせずににらみ合った。
最後の余韻を残して、鐘が鳴り終わり、広場には静寂が広がった。
1ミリでも互いが動けば、銃を抜き撃ち合うことになるということは重々承知していた。
互いに、相手の出方を探りつつ、動けずにいた。
っと、ふいに、アリスという男の顔をゆるんだ。
そして、嘲笑するように笑った。
「こんな形で顔をあわせるようになるとは思わんかったわ」
男の声は、やわらかかったがとげを十分に含んでいた。
俺もまた、微笑みながら、彼を見た。
「あぁ、俺もだ。あんたとはいい関係を築けていたと思ってたんだがな」
「俺かてそうや。まさかこんな結果が待ち構えているとはおもってもいてへんかったわ」
アリスという男は笑っていたが目は笑っていない。だが、それはお互い様だ。
右手はどちらも脇にたれ、いつでも銃を抜けるように構えている。
チリチリとした時間が過ぎ、どこかで犬が咆えたのが合図になった。
俺はすばやく、身体を左に倒しつつ、銃を抜く。相手も同じように動いていた。
互いの射線はそれによってそれ、互いに無傷で広場に転がる。っと、そのまま転がりながら、銃を連射。つくりもののような銃の発射音と、それに一瞬おくれてはじける広場の石畳。
数十センチと離れていないところを弾丸がかすめ、俺たちは転げる。そして、ゴミ箱の裏に隠れ、カートリッジを交換。広場に静寂が戻った。最後に見たアリスは、木の陰に隠れていた。
息が上がっている。俺はおちつくために、息を大きく吐いた。
あまり長くこんなことをやってはいられない。
時期にこの街の住人が警察を呼ぶだろう。
どこかでまた犬が咆えた
だが、今度は動きはない。
互いに互いの腹を探るような静寂。緊張感がみなぎる。
俺は無性に煙草を吸いたくなったが、そんな場合ではないことは承知していた。
だが、ふと思いついて、メタルのジッポを取り出し、それを鏡代わりに相手の隠れているあたりを伺う。
しかし、あいにくにも少しくもったそれではかすかに大木を確認することしかできなかった。
小さくしたうちをして、それをしまおうとしたとき、何か俺の頭にひっかかった。
それも何か重大なことだ。
俺はしまおうとしたそれをもういちど取り出し、先ほどと同じように動かしてみる。
殆ど判別できないような大木・・・・それはいい。
それから戻そうとしたとき・・・
大きな建物の上に・・・彫像のようなものが見えた。
彫像・・・?
俺はふと、視線をそちらに向けてぎくりとした。
スナイパー?!まさか!!?
だが、黒い彫像のようなそいつは確実に銃口はこちらに向けている。
「アリス!」
「火村!」
俺が叫んだのと、向こうが俺の名を呼んだのは同時だった。
俺はそれを聞くと、猛ダッシュをかけて、建物の影まで走った。
その俺の後をおうように、弾丸が俺の足元で跳ねる。
畜生!
俺は悪態をついた。弾丸の数が並じゃない。
かなりの人数に囲まれている!
アリスの野郎・・・はめやがったな!
広場を伺うと、反対側の建物の影にアリスがいた。
視力のいい俺の目で見る限り、アイツは非難の目をコチラにむけている。
アリス側の刺客じゃないのか・・・・?
そう考えたことがわかったかのように、アリスは少しだけ身を乗り出し、スナイパーのいた方向に銃を一発撃った。とたんに、アリスに降りかかる銃弾の嵐。
自分の差し金ではないというパフォーマンスだろう。俺も同じように習って、互いの無実を証明する。
っとすると、浮かぶのは一つの機関。
ある独裁国が影。
俺は、愛用のジッポを取り出し、昼の太陽を反射させ、アリスに合図を送る。
こうなったら仕方が無い。此処は一時休戦。
パートナー同士に戻って敵の殲滅を優先する。

2時間後―
無数の銃弾の後が残る時計台前広場。
俺たちは、互いに2メートルの距離を置いて立っていた。
だが、2時間前の殺伐とした雰囲気はそこにはない。
互いに、ぐったりと疲れてだらんと手を下げている。
当初の目的を果たすにはお互いに疲れすぎていた。
そして、互いの実力を知りすぎた後では、決闘などという台詞は出てこなかった。
互いに、相手が恐ろしく腕のいい諜報員だということを身をもって知ったのだ。
「残り何発や・・・?」
アリスの声に、火村は大儀そうに銃をとりカートリッジを確認する。
「3発・・・」
「おんなじや・・・どうする?」
といって、アリスが上目遣いに火村を見た。火村はそれをみて肩をすくめる。それをみたアリスは安心したように息を吐いた。
「せやな・・・お互いに疲れすぎた感じや・・・」
「だが、頭が冷めた」
火村がそういうと、アリスは深く頷いて同意した。
「・・・・そうやな。」
それきり互いに言葉がなく、火村が煙草に火をつける。すると、アリスがそれをモノ欲しそうに見ているので、火村は1本それを提供した。
互いに何となく紫煙の行方を目で追う。
「・・・やな・・・」
突然ぽつりとアリスがつぶやき、火村がアリスを見ると、アリスはひょいと肩をすくめてみせた。
「いや・・な?ちょぉ・・・考えてみたんやけど・・・
 君、別に愛国心のために諜報員になってるわけやないやろ?」
「もちろんだ。これはあくまでビジネス」
そういうと、アリスはそうやろなぁ・・・っと何か納得したように何度か頷いた。
「どうした?」
と匙を向けると、アリスは少し首をかしげて言葉を継ぐ。
「あんな。君・・・その腕とあのレベルの情報くれるんやから・・・かなり上の地位なんやろ?」
火村は応える代わりに口の端を引き上げた。
それにアリスは納得したように何度か頷く。
「何だよ。いえよ」
「・・・んー・・・君、俺が渡した情報って全部が全部報告しとるわけやないよな?」
火村は、アリスが何を言いたいのかつかめぬままに応える。
「あぁ、あたりまえだ。あんなの全て流してたら、
 二重スパイやっていますって言ってるようなもんだろう。
 お前からもらったうちのそうだな・・・20%程度だな。使えるのは」
「ふん・・・まぁ俺もそんなもんやな」
「・・・で?何がいいたいんだ?」
「俺たちって、誰よりも情報を握ってることになってへん?」
その言葉に、火村は一瞬ぽかんとした。
そしてハタと気付く。自分が握りつぶしていた情報は特ダネ的なものばかり。アリス・・・つまり、自国の諜報員が調べているのだからあたりまえなのだが・・・・。
「・・・そう・・・だな」
火村はなんとかそう応えることしか出来なかった。
アリスもどことなくぼんやりしている。
互いの脳の中で、電気信号がすごい勢いで流れている。
長い沈黙の後、二人が出した結論は同じだった。
そして、その結論が同じであることを互いの顔を見ただけで悟った。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
二人は曖昧な笑みを浮かべて互いを見た。
「・・・・・また・・・・連絡する」
火村がなんとかそう言葉にすると、アリスもまた
「あぁ・・・待っとる・・・」
っとなんとか返事をした。
そして、二人は申し合わせたように背を向けて、互いに歩き出した。

―・・・・俺たちが組めば・・・それこそ国すらのっとれるんじゃないか?―

一度は出した結論を何度も反芻し、火村がアリスに手紙を書いたのはその1週間後のことになる。
そして、その2日後には、アリスから了承の手紙が火村の元へ届いたことを記しておく。

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