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ハンター 02

面倒で、途中から読み返してねぇです旦那様
私が生まれてから一体どれほどの月日が流れたことだろう。
いまだ私を探しているものがいるのかどうか・・・それすらもわからずに彷徨いつづけている。

私が今住み着いているのは、太陽系というヒューマンの歴史から言えば最も古い星系の端だ。
小惑星を元に人工的に作られた衛星で、直径が約3万キロ程度。すでに打ち捨てられてながい年月が経つ衛星で、大気はなく他に人もいないが、生きていくには十分な施設があり植物が繁茂している。

この星(といっていいかはわからないが)に住んでいるのは私とウサギだけだ。
チョッキを着きた二足歩行の白いウサギは、随分前に訪れた大マゼラン雲の星のひとつにたった一人で住んでいたおじいさんに作ってもらったものだ。
長い時の中でただその時だけを待って過ごさなければいけない私のために作られたウサギは、ザイカリオン一の図書館の蔵書をすべて詰め込んでいてとても賢く、忠実で、私を飽きさせない。
真っ白な毛はふわふわとして気持ちよく、でっぷりとしたおなかが安心感を与える。
背丈は長い耳をいれても、私の胸ほどしかなくてとても可愛らしいが重量は300キロをゆうに超えている。

「アリス、読書は進みましたか?」
落ち着いた紳士の声にはっと顔を上げると、そこにはふわふわのウサギが立っていた。
両手で銀のトレイを持っていて、その上に紅茶のポットと一組のカップ、そしてクッキーの盛られた皿が一枚。
「あ、美味しそうやね」
私が跳ね起きるようにして彼を迎えると、彼は慎重な足取りでテーブルに近づき手に持ったそれをそっと置いた。
「まったくオーブンとやらの使い方を学ぶのにとても時間がかかってしまいましたよ。」
「あぁ、あんな骨董品を本当につかったの?」
「えぇ。貴方がクッキーを食べたいなんてわがままをいうものだからね。でも、ほら美味しそうでしょう?」
いい匂い・・・と鼻をヒクヒクさせるウサギ。
私は言われるまでもないよい香りににっこりと笑って同意し、席についた。
「それよりアリス、ここがどうして打ち捨てられたかわかりましたか?」
「え、あぁ、うん。多分やけど・・・」
クッキーを食みながら、私は先ほどまで自分が目を通していた本にちらりと目をやる。
それは、ここに住んでいたらしい研究員の日記だった。
彼らの任務は此処での完全なる自活と、そして宇宙でしか生成できない金属をつくることだった。
住んでいたのは住んでいたのは15人程度で、あとは時折訪れてくる人々。そして大部分がアンドロイドで此処は構成されていたらしい。
「・・・生活はうまくいってたらしいんやけど、突然敵が襲ってきた。」
「敵?テロルどもですか?」
テロルというのは、随分と前に母星(テロル)を無くした流浪の民で、彼らはあちこちの星を襲ってはその星を食いつくしそして流浪していく運命を背負っている。だが、此処を襲ったのは彼らではない。
「スペース・パイレーツ」
「スペース・パイレーツ?」
聞きなれない言葉だったのだろう、彼は耳をピピンっとふって記憶を探ったようだった。
私は彼の検索が終了するのを紅茶を口に含みながら待つ。
すると、まもなく・・・
「あぁ・・・スペース・パイレーツ。宇宙海賊というやつですか。まだ宇宙が無法地帯だったころに荒らしまわったギャングのことですね。」
「へぇ」
パイレーツという言葉を聞いたことがあったような気がしたが・・そうか、大昔に絵本にそんな単語が出てきた気がする。悪役だったような記憶がぼんやりとだけある。
「彼らはテロルよりもタチが悪いですよ。何しろ彼らは何の主義主張もなく人々からすべてを奪うんですから」
主義主張もなく人々からすべてを奪う。
その言葉に胸に鋭い痛みが走る。
私はそれに一瞬だけ眉をひそめ、それから意識して笑顔を浮かべた。
ウサギはその私の表情に一瞬考えるような顔を見せたが、
「お口に合いませんでしたか?アリス」
どうやら別の意味に取ったようだ。
「ううん。とっても美味しい。ウサギも食べられればいいのにね」
「よしてくださいよアリス。そんなことしたら私の中に蟻が住み着いて大変なことになります。」
そうしたら整備するのは貴方なんですよ・・・というウサギに私は笑った。
そしてふと見やった先のモニターに真っ青な星が映し出されているのを見つけて、目を細める。
ここに移り住んでから何度も見てきた星だった。
真っ青な星。
なんとも美しい星だ。
黒いベルベットの上にスポットライトを浴びてポツンと置かれたサファイアのような・・・・・。
「あれはなんていう星やったっけ?ウサギ」
「あれですか?確か“地球”と」
「地球」
ぽつりとつぶやくと、それだけで胸にじんわりと暖かいものが広がるような気がする。
「不思議な星・・・・」
「だけどアリス。あの星はいけません。あんな星は全く人が住めませんよ」
「そうなん?あんなに綺麗なんに」
「その昔、核というとても不安定で不毛でしかない爆弾をいくつも爆発させて、今でもあの星は完膚なきまでに汚染されているんですよ」
「実験かなにか?」
「えぇ」
ウサギはこくりと頷くと同時に、耳でも一緒におじぎさせて見せた。
その可愛らしいしぐさには思わずクスリと笑ってしまう。
「汚染されつくした大気を人の住めるものに変える実験だった記録にはあります。しかし、そんな不毛な地をわざわざ人が住めるようにするよりも、理想的な星が数多くあった。だから、打ち捨てられたのです」
「可哀想に」
あんなに美しい星なのに・・・生物はすめないのか・・・・。
「・・・そう考える人は多いようで、あの星こそが人類誕生の地だと言い張る連中もいるようです」
「へぇ?それって信憑性があるんか?」
「さぁ・・・なんともいえません。何しろ大規模な戦争で一度人の歴史はまっさらにされていますから。」
「ウサギの見解は?」
「まず、嘘でしょうね。」
ひくひくっと鼻を動かしてウサギ。
「もし母星ならば、人はあの星を実験に使ったりはしなかったでしょうし。それに、歴史はザイカリオンを人類誕生の地と定めています。」
「そうやね」
人はそこまで愚かではないはずだというウサギ。
私は曖昧に返事を返して、モニターの中の地球を見つめた。
本当にあの星が人類の母なる星なのか・・・そしてそれを壊したのは人自身なのか・・・それは知らない。
しかし、私は人がどれほど愚かなのかは知っている。
モニターの中、星が一つ、地球との間を流れたように見えた。

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