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羽根

近未来・・・・クリエイター系?
午前8時。
アリスが身じろぎをしながら、ゆっくりと目を開けた。
昨晩、カーテンを閉め忘れた窓からは、燦燦と朝の日差しが入ってきて、シーツを真っ白に染め上げていた。
寝転がったまま、そちらを見ると、窓ガラスの外に鳥が見えた。
アリスは、あっと声を上げてパジャマのままそちらに近づく。
重い窓をゆっくりとあけ、空を舞う鳥を探した。
やがて、朝日にきらめく鳥を見つけると、アリスはそっとよびかけた。
「こっちにおいで」
すると、スズメくらいの小さな鳥、数羽は進行方向を変え、アリスのほうへとよってきた。
アリスが一歩窓から退くと、その窓の桟に5匹の鳥がアリスを見上げるようにしてとまった。
この鳥はただの鳥ではない。
機械仕掛けの鳥。
人工物だ。
ガラスでできているかのように透明で、中には数個の歯車が見える。
たったこれだけで複雑な動きができるわけもないのだが、実際に運動をつかさどっているのはこの数個の歯車だけなのだ。
ガラスのようなその体そのものが、バイオユニットで羽根を動かすという運動と連動して風を読み、進路を決め、羽根の形状を変えている。
チィチィと小さくなくその声すらも、喉を震わせてないているのではない。
「ん。今日も調子よさそうやなぁ」
そういって、アリスは手を伸ばすと一羽一羽の頭にちょんちょんっと手をおいていく。
「どっかわるいとこないかぁ?」
親しげに声をかけると、それぞれ首をかしげるような動作をして羽ばたきの仕草をする。
「そうか~。よさそうやなぁ。どっか調子悪いとこあったら、すぐ火村んとこいくんやで」
鳥たちはチィチィと返事をするように空気を振動させ、窓から飛び立った。
アリスはそれを見送り、部屋にむきなおった。

火村は苛立っていた。
先ほどから何度コールしても、アリスがでない。
今日は大事な実験がある日だというのに、すでに1時間も遅刻している。
イライラとして通信をきり、またアリスへとコールする。
他人からは見えない丸い形の半透明のウィンドウが目の前に開き、アリスへとコールしていることを告げる。
丸い画面、本来なら通話相手が写る場所は真っ黒に塗りつぶされている。
「畜生・・・なにやってやがる!あのやろう・・・・」
透けた画面の向こう、こちらのへやのドアがあき、助手の一人が入ってきた。
「アリスさんつかまりましたか?」
研究一筋にいきているというような、化粧家のない助手だ。
火村は彼女に苛立ちを隠し、力なくわらってみせた。
「一体どこにいるんでしょうね。アリスは」
「ふん。どうせ家で寝てるんだろうさ」
忌々しくそう吐き捨てると、アリスのこともよく知るその助手は面白そうに笑った。
「だったら、アリスさんではなくて、部屋にしてみたらいかがです?」
「あ・・・そうか。そうしてみるよ」
火村は、一度目の前のウィンドウを閉じ、アリスへの通信を切ると、次にアリスの部屋へ直通の電話をする。っと、しばらくして、画面が切り替わり、後姿のアリスが写り、すぐにこちらに振り向いた。
実際の映像ではない。用意された本人の再現アバターだ。
『お、火村やないか。おはよぅ~』
「・・・・おはよぅ~っじゃねーんだよドアホ!」
アバターがまるで本当のアリスのように怯えた表情を見せる。おそらく火村のアバターも火村にあわせて激怒の顔をうかべていることだろう。
『な・・・・なんやねん。朝っぱらから・・・・』
「あさっぱらだぁ?!畜生。一体いま何時だとおもっていやがる!」
画面の向こうでアリスがとぼけた顔をしている。そして、こちらの部屋では助手が苦笑しながら部屋を出て行くところだった。
『あっれぇ・・・?なんで10時やねん』
「ぶっころすぞコラ!寝てたって正直にいいやがれ」
火村が歯を剥くと、アリスのアバターはコミカルな動きで小さくなってみせた。
アリス専用の改造を施したアバター。やたらと凝っていたかとおもえば、このような小細工まで仕込んでいたとは・・・。
『ちゃ・・・ちゃうで!』
「じゃぁ、なんだってんだよ!」
いまやアリスは画面の端から覗くような格好でこちらをうかがっている。
『今日はな、アレでいこうとおもってて』
「あれだぁ?」
『そや。俺のほぼ全財産をつぎ込んで買った羽根や』
「はぁ?!」
俺は素っ頓狂な声を上げた。

アリスは急いで通信を切ると羽根の準備をした。
殆ど準備は終わっている。後は背負うだけだ。羽根というのは軍が開発した浮揚装置を自分なりにアレンジしたものだ。
まるで天使のように飛ぶことが出来るガラス状のバイオマシンでできている。
あの鳥のように飛びたかったので、わざと翼を見せるようにしてヴィジュアルにもこだわった。
その分、重量は増してしまったが、美しさは極まった。
その分値段も張ったが・・・。先ほど、火村に告げたように殆どの財産をこれにつぎ込んでしまった。殆ど金持ちの道楽のようなものだ。普通ならエアカーで足りるところを、鳥のように飛びたいという欲求だけで作った代物は、軍の最高のガンシップ、宇宙まで飛び出して星間を移動できるコスモガンシップと同等の値段だ。
もちろん、このようなものを欲しがるものもおらず、完全にアリス一人しか持って居ない。
透明なガラスを二つ背負うような格好で、アリスは窓際にたった。
アリスの部屋は124階。目もくらむような高さだ。
アリスは飛び出す瞬間はいつも緊張する。自分の発明に自信はあるものの、ガラス板二枚背負っただけでここから飛び降りる瞬間は心臓が早鐘を打つ。
もし、この羽根が広がらなかったら、アリスは長い落下時間の果てに、硬い地面に叩きつけられるだろう。
いや、もしかしたら、この街の人工頭脳が危機を察してたすけてくれるかもしれないが、硬いあいつらが、マシな助け方をしてくれるかどうか・・・・壊れたのを見計らって医師団をつれてくる可能性のほうが高い。壊れたっといても、アリスは生身なので、どう修理されるのだか考えたくもない。
「よ・・・よし・・・いくで」
アリスは自分に言い聞かせるように小さくつぶやき、一度目を瞑って気合いを入れると、えいっとばかりに身を宙に放り出した。
途端に、体がふわりと浮くような感じ、ついでものすごい風圧を受けながら落下する。
かなり長い間落ちたように思えたが、ほんの一瞬のことだった。
二枚のガラスが落下を感知し、空間を読み取ると同時に、二枚のガラスは左右に大きく広がる。
収納されていた羽根がその翼を開くように風を大きく包み込むように広がる。全てが計算された動きだ。
一つの羽根で3メートルくらいの大きさまで広がる。
透明な羽根は太陽の光を反射し、ところどころ真っ白に、そしてところどころ、まっすぐにしたの風景を透かす。
そして、次の瞬間、アリスの身体はふわりと滑空を始める。
大きな羽根が、まるで本物の羽根のように優雅に曲線を描きながら上下し、アリスの身体は水平をむき上昇する。
先ほどまでのこわばった顔が一転、アリスは晴れ晴れしい気持ちで大空を仰いだ。

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