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結婚式 03

読み返す気力なし。勘弁。
お願いだから早く帰ってくれ・・・そう何度も言ったのだけれど、彼らは一向に私の部屋から出ようとはしなかった。
彼女は新居(新築の家が出来るまでの仮住まいであるマンション)に帰ることを嫌がり、私に抱きついたまま此処で暮らすという。
新婚で別居はまずいだろう・・・いや、その前に何で私の家なのだと慌てる私と、猫のようにじゃれ付く新婦を苦々しく見下ろしていた男は、ふいに手を伸ばし新婦の胸元を掴んで乱暴に私から彼女を奪い取る(?)と、キスでもするような距離(表情はボクサー同志の試合前のにらみ合いそのもの)で、怒鳴りあいの再会。
罵詈雑言の嵐。
いくらマンションで壁が厚いとはいえ・・・おそらく近隣近所に響き渡っているだろう声に私は頭を抱えた。
「頼むから帰ってくれ・・・・」
ガンガンとする頭を両手で抱えていると・・・
「大丈夫か・・?アリス」
肩をゆすぶられ、目を上げると火村が私の前に跪いていた。
「あ・・あぁ・・・」
大丈夫。その言葉を飲み込んで、
「悪いけど、疲れとるんや。帰ってくれんか?」
言うと、火村はなんとも寂しそうな目で俺を見返した。
「アリス・・・」
そんな声を出すな・・・。
前言を撤回してしまいたくなる。
訴えるような目に口を開こうとしたとき、
「さっさと帰りなさ~い!」
横からするどい声が飛び込んできて、火村の目にまた焔が灯った。
そしてまた、新婚夫婦とは思えないような言葉の応酬が始まった。

もう知らん・・・とばかりに、二人を置いて自室に入り・・・パソコンの電源を入れるのも億劫でベッドに横になった。
ドアの向こうからはまだ諍う声が聞こえるが・・・もう、どうでもいい。
とにかく私は疲れていた。
うつぶせになって枕を抱き込み、ふーーーっと息を吐いてそのまま意識を手放した。

そして、気付けば真暗な室内。
手探りでベッドサイドテーブルの上を探り、時計を取る。
蛍光塗料の塗られた針を読むと、10時を過ぎた辺りだった。
何時に眠りについたか定かではないが、それでも4時間近くは経っているはずだ。
クゥっと小さく音を立てた腹。
「ハラヘッタ・・・」
そういえば、(恐怖の)式場でも食事は一切手をつけなかったし、帰ってきてからも何も口にしていない。
あぁ、だが、冷蔵庫に食べ物といえるようなものが入っていただろうか?
確か、ジャムとバター・・・マヨネーズあたりは入っていたような気がするが・・・。
「んー・・・・」
買い置きのインスタント・・・は、この間最後の一個を平らげた記憶がある。
冷凍・・・は・・・、近頃調子が悪くて冷えすぎたあまりに凍り付いているからムリ。
「お酒はあったよーなきがするんやけどなぁ~・・・」
出版社から貰ったブランデーが。
「やけど、酒じゃ、腹は膨れへん」
いや、その前にすきっ腹に酒などというハードボイルドぶったことはしたくない。
むーっと唸っていると、部屋のドアが軽くノックされた。
「ん・・・?」
うつぶせになった体を僅かに起こしドアを見ると、そのタイミングにあわせたかのように扉が開いて黄色い光の筋がまっすぐに部屋に指しこんだ。
「アリス・・・?おきてるのか?」
聞こえてきたのは長年の親友の声。正し、いつもより少し力が無い。
「あぁ・・・何や。まだおったんか。」
ほだされてたまるかと、わざとつっけんどんに言ってやる・・・が、
「・・・アリス、腹へってないか?」
流石は長い付き合いのある男。私のことをよーーーくわかっていらっしゃる。
「何・・・食わしてくれるん?」
少しの間をあけてそういうと、逆光の中で彼が笑った気配がした。
「ボルシチ」
「なんでロシア料理やねん」
「食うだろ?」
「ん。食う」
自分でも甘えた声が出たように思う。カッと顔が熱くなり、私はそれをごまかすためにベッドから跳ね起きた。

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