スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

結婚式 02

花嫁の顔はあまりよく覚えていなかった。
何しろ結婚式がすさまじく印象的だったもので、花嫁をよくよく観察する暇がなかったのである。
それで・・・あらためて、彼女を観察してみると・・・これがかなり美しい。
ミスユニバースだといわれても私は驚かないだろう。
目鼻立ちのくっきりとした美人だ。
高く筋の通った鼻に、ふっくらとした唇。目じりの切りあがった大きな瞳。
色白というわけではなく、健康的に焼けた肌と真っ黒なうねる長い髪は、日本のクレオパトラといったところか。
身長は(多分)170近く、そしてすばらしく腰の位置が高い。
とにかく美しい人で、(認めるのは悔しいが)色男である火村と並ぶとまさに美男美女といったところだ。
おそらく世間の人、10人が10人がため息をつきたくなるような新郎新婦だろう。

・・・・彼らがいがみ合ってさえいなければ・・・。

私は自分の部屋のソファに座り、途方にくれていた。
一体、これはどういうことなのだろうか・・・?
目の前には、先ほど私が称賛したばかりの二人が向かい合って立っている。
火村は白いタキシード姿(胸元に花が飾ってある)。
そしてもう一人はウェディングドレス姿だ(細身のドレス・・だが、ものすごく高そうなもの)。
彼ら二人がにこやかに立っていたらどんなにいいだろう?
普段はなかなか見ることが出来ない笑顔を火村が浮かべ、それに寄り添うように花嫁が立っていたらどれほどよかったことだろう?
だけど、現実は・・・

殺人事件での犯人を糾弾するときよりもよっぽど恐ろしい目で己の花嫁を睨みつける新郎と、それを負けるものかというように睨み上げる花嫁。
なまじ二人とも顔がいいだけに、心底恐ろしい。
あまりの恐ろしさにブルッと体が震えると、まるでそれを合図にしたかのように舌戦が開始された。
「一体、どういうつもりよ!式の途中でいなくなるなんて!」
「それがどうした?ちゃんと約束は果たしたぜ?籍も入れてやったし、指輪の交換も、誓いのキスだってしてやった。文句はないだろう?」
「はっ、なにがしてやった、やってやったっよ!それはこっちの台詞でしょう?私が、あんたみたいな男と何が悲しくて結婚なんて・・・・っ!」
「そりゃこっちの台詞だね。お前があのデブハゲと結婚してりゃぁ、俺はこんな茶番に付き合わなくてよかったんだ!」
「ふざけないでよ!何よその言い方!恩着せるようなこといっちゃって!私のほうこそ感謝して欲しいわね。私のお陰で、これからあんたは研究の上で厚遇を受けることになるんだから!」
「あーそりゃ、感謝してるさ。だが、いっとくけど、そっちが俺のメリットのメインであって、お前はただのオマケ・・・いや、オマケって言葉すらおこがましい、お荷物だな!」
「なにが、お荷物よ!こーーんないい女世界中捜したってそうはいないわよ!」
「あぁ、いないだろうよ。こんなに性格の曲がったブス、世界に一人いただけで十分だろうよ!」
「なんですって?!」
「なんだよ!!!!」
・・・・めちゃくちゃ怖い。
私はソファの上で縮こまって、膝を抱え込んだ。

一時期、スピード離婚なんてものが話題になったこともあったが・・・結婚式当日というのはスピード記録じゃないか・・・?
・・・いがみあっている夫婦・・・。新婚なのに、その中は冷え切っていて・・・っとそこまで考えて、私はこれは小説になるんじゃないだろうかと思いついた。
無論、本当に形になるかどうかは別だ。
だけど・・・これはなかなか面白いかもしれない。
憎みあう夫婦、同じ家に住まいながら彼らは一緒に食事を取ることも会話をすることもない。冷凍庫のような家の中。しかし、その様子に近所の人々は気付いていない。
何故なら・・・そこまで考えたとき、何かが私の首に巻きつき・・・
「え?!」
いや、私は抱きしめられていた。
真白なウェディングドレスを着た、どことなくエスニックな香りをさせる美女に。
「私、この人と一緒に暮らすわ」
まるで歌うように言う花嫁。
混乱し、助けを求めるように花婿を見ると・・・彼は、憎憎しげに己の花嫁を見ていた。

コメントの投稿

非公開コメント

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。