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結婚式

ヒ→ア
友人、いや、親友の火村から結婚すると彼から告げられたのは一ヶ月前。
それまで、全くそんなそぶりを彼が見せていなかっただけに、私は大いに驚いた。
そして、これからは頻繁に彼と会うことはなくなるのだろうと思うと、寂しくなった。
だが、それと共に、うれしい気持ちになったも確かだ。
彼のように、見目がいいのに特定の女性と付き合わず、私のような不良作家としか交流がないというのは、親友としても少々心配していたのだ。私にそのような人が居たということを黙っていたのは水臭いと思ったが、私は素直に祝福した。
おめでとうと言う私に、彼はそっけなくありがとうと謝礼を言った。他の友人であれば、根掘り葉掘りなれ初めから聞くところだが、彼はそのようなことを好むような男ではない。なにせ、親友の私に結婚する一ヶ月前まで隠し通してきたのだ。照れくさいところがあるのだろう。
だから、私は余計な詮索はなるべくしないようにしていた。
そして、こと、恋愛に関して私は少々、ロマンチストなきらいがある。
だから、結婚式当日まで気付いていなかったのだ。
そう、私は、彼らが長い恋人同士の期間をおいてゴールインをするのだと思っていたのだ。
だから、私が結婚式に参列したいといったときに何故あれほど彼が渋ったのか、その意味を誤解していた。

そして、その意味を、私は結婚式当日にようやく理解することが出来た。
明らかに不機嫌な火村の顔で、ようやくそれが政略結婚というものだということが分かったのである。
それに気付いた時、いまだにこのような制度が本当にあるのだなぁっと妙に感心したものである。
だが・・・
花嫁と花婿・・・目もあわせない・・・。
私が悪いわけでもないのに、それを見たとき目の前が真暗になった。
出席者の顔が引きつっている・・・。
私が悪いわけでもないのに、それに気付いた時、私は足から力が抜けるのを感じ、テーブルに手をついた。
誓いの言葉で、何度も促されようやく宣誓をする二人・・・。
私が悪いわけでもないのに、あからさまにシカトする新郎の姿にその場から逃げ出したくなった。
誓いのキスに、渋々といったかんじの新郎と、顔をそらそうとする花嫁・・・。
私が悪いわけでもないのに・・・・私はその場で卒倒してしまった。

かつて、これほど、すさまじい結婚式があっただろうか・・・?
これなら、結婚式に殺人事件が起こった方がどれほどかわいげがあるだろう・・・・。

だから、目が覚ましたとき、自分を覗き込んでいる火村に驚き、そして式から逃げ出そうと上半身を起こし、彼の額に頭突きをしてしまった。
「「いでっ!!!」」
お星様が目の前をチラチラしているが、織姫がみえるわけでもないし、気にしている暇はない。
こんな心臓にわるい結婚式からは早く逃げなくては・・・。
ふらつく足で一歩踏み出そうとして、そこが見慣れた風景だということに気付き、私ははたと足を止めた。
ほどよく散らかった部屋。散乱する本と紙。今朝、急いで家を出るときに、脱ぎ散らかした服・・・。
「あれ・・・?ここ、俺の部屋やん・・・」
そう、そこは私の部屋だった。見まごう事なき私の部屋だ。
ということは、あれは・・・
「な・・なんや夢やったんか・・・よかった・・・」
私は、自分が寝ていたソファに腰を落としながら安堵の息を吐いた。
「アリス・・・・」
そうだ・・・何を混乱しているのだ。あんな結婚式が現実にあってたまるか。あんな現実離れした結婚式あってはならない。それも、主役の一人が我が親友殿だなんて悪夢のようだ。いや、悪夢だったのだ。
「アリス・・・」
そうだ、火村は愛する女性と結婚したのだ。だからあのような式になるはずがないではないか。
火村は結婚して、幸せな家庭を築くというのに、私はなんという縁起でもない夢をみてしまったのだろう。
「オイ、アリス」
あぁ、ちなみに、私は彼の声が聞こえていないというわけではない。目が覚めた瞬間に彼の顔を見たことも忘れてはいないし、今朝私が結婚式のために脱ぎ散らかした服の存在も忘れてはいない。
「アリス!」
だけど、ほら、現実逃避したいときってあるじゃん?とか言ってみたりして・・・・・。
だけど・・・・
「オイ!大丈夫か」
「せやから!ちょっとだまっといてんか!!!」
ばっと振り向くと、思ったより近くに火村の顔があり、ぎょっとした。
そして、次に彼が結婚式で見た服装だということに気付いて、身体を引いた。
「やっぱりそうか・・・・」
「アリス・・・・?」
「夢・・・やなかったんやな・・・・」
がっくりとうなだれる。悪夢だったらどれほどよかったか・・・・。
「おまえ・・・」
親友が政略結婚やったというだけでもショックなのに・・・・。
あれほどすさまじい結婚式だとは・・・。
「君・・・なんでここおるんや?」
「アリス?泣いてるのか・・・?」
・・・?泣いてる・・?私が・・・?
いや、それより、今、彼の声が何となく・・・弾んでいたような・・・
「君、何いうとるんや・・・?」
顔を上げると、やはり、結婚式のときの仏頂面とは違い、なんとなく喜色の浮かんだ親友の顔があった。

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