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らっしゃいノームランド 15

リハビリ イロイロ忘れてる…

旅立ちの日、ヤザリと的場は別れを惜しみディーとミシェルがやってくるまでずっと話し込んでいた。
ヤザリはくれぐれも体に気を付けるよう、安易に魔法を使わぬように的場に言い聞かせ餞別にとお金をもたせてくれた。
「それから何かあったら旅人ギルドに伝言を残すから、的場さまも何かあれば必ずギルドに伝言をしなさい」
と言った。
ギルドでは魔法によるネットワークがあり、世界中のどこにいてもギルドにいれば手紙のやり取りが可能なのである。
「はい、ありがとうございます」
涙ぐむ的場の頭をヤザリはやさしく撫でた。



「迎えに来たよ」

それから一時間ほどあとにディーとミシェルが迎えにきた。
ミシェルは的場と同じような地味な旅装姿。ディーはそれに加え、背中に的場の背丈ほどもある大きな剣を背負っている。
ディーがヤザリに話をしている間、ミシェルは的場に非友好的な目を向けていた。
「あんた、何の役にもたたないんだって?」
「旅はヤザリさんと一度しかしたことないからね。でも何にもできないわけじゃない」
「なんだよそれ」
ミシェルは的場の事が気にくわないのだろう。敵意を隠そうとしない。
「まぁ、一緒に旅をするんだし、仲良くしようよ。足手まといにならないように俺も努力するし」
大人なところを見せる的場だが、ミシェルにしてみると自分よりも小さい的場の殊勝な態度は彼をばかにしているようにしか見えなかった。
彼は愛らしい顔を盛大にしかめると、ツンと顔をそらしてしまう。
「ミシェル、仲良くしろっていったろ?」
「ディー…、だってこいつ足手まといにしかなんないだろ?」
「お前だってまだひよっこじゃねぇか」
ディーがミシェルの額を突っつく。
「でも…」
「でももなんでもない。おいていかれたくはないだろう?それに的場は料理が抜群に上手いんだぜ」
なぁ。と話を向けられ、的場はひきつりながら頷いた。
彼はずっと独り暮らしをしていたから、料理はできないことはなかったが、できる料理といえば野菜炒めやカレー、スパゲティ、ハンバーグくらいだ。
だが…まぁ、この世界なら、魔法の力で少しはごまかしがきくかもしれない。
「料理くらい僕でもできる!」
「それとは別格なんだよ。ま、お前にもそのうちわかるさ」
言い合いをしている横で、的場はヤザリに向き合っていた。
別離の言葉はすでに尽くしている。
二人は無言で握手を交わし、ヤザリが的場の頭を撫でると、彼はそれを目を細めて受けた。
「気をつけて。的場様」
「はい。ヤザリさんこそ気をつけて」
「願いが叶うよう、私もなんとか頑張ってみよう」
「はい。俺も頑張ります」



こうして的場は、この世界にきて初めて出会った人と別れ、代わりにディーとミシェルという同行者を得た。
三人は街道を少し進むと小道に入り、小さな農村、トロイへと向かう。
トロイへは徒歩で三日ほどの距離である。

「うさぎだ」
草原でなにげなく見た先に、的場は長い耳が飛び出ているのを見つけた。
かわいいな。
その程度のことしか彼は考えなかったが、同行者二人は違った。
「ミシェル!」
ディーが言うと、名を呼ばれたミシェルはさっと懐に手をいれ、次の瞬間にはうさぎに向かってナイフを投げていた。
ナイフはまっすぐにとび、辺りをさぐろうとしたうさぎの首にトスッと突き刺さったかと思うと、うさぎは声もなくもんどりうって倒れた。
愕然とショックを受ける的場の横をすり抜け、ミシェルがナイフとウサギを回収に走る。
現実問題として、この世界ではそういうことが普通の人のごく間近で行われているということは感じていたし、これからいやでも血なまぐさい事と立ち会わねばならないとはわかっていた。
それでも目の前で、つい先程まで生きていたものが傷つき、命が失われるというのはショックが大きかった。
「大丈夫か?」
ディーに声をかけられ、的場は頷く。
「本当になにも知らないんだな」
というディーの言葉は、呆れているともバカにしているともとれた。
「まぁいい、ミシェルはこれから解体だ。注意がそれてる間に少しでも浄化してくれよ」
だが、的場が見上げた鮮やかなエメラルドはそのどちらでもなく、優しい光を称えていた。
「あぁ…。ごめん、大丈夫」
的場はうさぎのことを頭から切り離し、ミシェルから見てディーの影になるような位置につくと魔法を唱えた。
「ま、最初は誰だってそんなもんだ。そのうちになれりゃいい」
的場は言葉に出さず頷くと、手をそこここの草木にかざして魔法を唱える。
「それと、ミシェルのこともあんまり気にするな。ちょっと拗ねてるだけだから」

エリ・エリ・レマ・サバクタニ

何度目か唱えたとき、的場の頭の中でテレレレッテッテッテーという電子音が鳴り響いた。
突然のことにびくっと体を動かす的場。それに気付き、ディーが不思議そうに彼を見た。
「なんだ、どうかしたのか?」
「今、何か音が…」
「音?」
「い、いや、なんでも」
的場は首を振ると、それを気のせいだとすることにした。
「疲れてるのかな」
「ん?…あぁ、草の香りがする。大地の匂いも…。すごいな、的場」
「え?あ、うん。まだまだだけどね」
「いや、十分だ。そうだよな、外は昔はこんな風だったんだよな」
慈しむように的場が浄化した場所を見るディーに、彼はむず痒いような気持ちになった。
「こりゃ、道中はずっと魔法を唱えてもらいたいところだな。だがミシェルもいるし仕方がない」
「やっぱりミシェルには秘密に?」
「とりあえず今はな。さて、そろそろ解体も終わった頃だ。そろそろ行こう」
促されミシェルの方を見ると、ちょうどミシェルが立ち上がるところだった。
彼の手には先程はなかった袋があり、それはふくらんでずっしりと重そうに見えた。
彼は的場をジロリとにらむと、つんと顎を反らす。きっと手伝うことすらなかった的場が気に入らないのだろう。

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