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らっしゃいノームランド 14

リハビリ

出発を前日に備えた午後、旅人ギルドで旅のノウハウ本を読んだ的場は、空腹を覚えて外に出てすぐにディーに声をかけられた。
「よぅ、的場…だったよな。何をしてるんだ?」
軽く手を挙げるディーは西洋と東洋がいりまじったエキゾチックな顔立ちをしていて、白い歯を見せて笑うと男の的場ですらぼうっとしてしまうほどに魅力的だ。
「こんにちは、ディーさん。俺は今から昼食にでもいこうかと」
「ディーでいいぞ。それより今から昼飯か?」
昼と言うよりもおやつの時間に近い。
ディーが首を傾ぐと、的場は笑って頷いた。
「勉強してたら遅くなりました」
「熱心だな。俺も付き合っていいか?」
「もちろんです。ディー。でも、昼食はとられたのでは?」
「外に出てたからな、携帯食料だけで小腹が空いてるんだ。それに旅の前に話したいと思っていたからちょうどいい」
「はい、ではご一緒しましょう」
「あと敬語はよしてくれ、そんな小綺麗な言葉を使われるとむず痒くてたまらない」
二人はディーがよくいくという定食屋へと入った。
昼食というには遅すぎて、夕食というには早すぎる時間に人はまばらだ。
二人は奥まった席に座り、ディーがメニューから適当に料理をチョイスする。
そして料理が揃うまで、二人は世間話に花を咲かせ、料理が出揃ったとなると「さて」とディーは姿勢を改めた。
「まぁ、食いながらでいいから話を聞かせてくれ」
「はい、もちろん。ヤザリさんからはどこまで聞いていますか?」
「だから敬語はよせって。…話を噛み合わせたいから、最初からできれば話してくれ」
ディーに言われて的場は少し考え、「俺はついこないだ生まれたんだ」と口を開いた。
森の木の中でとつぜん目を覚ましたこと、しばらくはそこで草木を育てながら暮らしていたこと、ヤザリさんと出会ったこと、そしてこの世界の事を知り、異質な力が自らを危険にさらすと言われ森を出たこと…。
「しかし、お前、見た目はミシェルとほとんど変わらないじゃないか。本当に…その精霊だっていうのか?」
「まぁ、疑うよね」
的場は苦笑し、料理の皿を自分の方に引き寄せキョロキョロと辺りを見回した。
「的場?」
「やってみますね」
的場は他の人がこちらを見ていないのを確かめると魔法を唱えた。
「エリ・エリ・レマ・サバクタニ」
ディーは目を見開き息を飲んだ。
「こりゃ…」
「食べてみてよ。虚無を払ったのか浄化したのか、それとも精霊の力を付与したのかはわからないけど、さっきよりずっと美味しいはずだよ」
的場が皿を差し出すと、ディーは面食らったような表情のまま料理(ジャガイモと豚肉の甘辛炒めのようなもの)に手を伸ばし、一口食べると大きくしていた目を一段と見開いた。
「これは…」
わざわざ聞くまでもなく、その効果を実感してもらえたようだ。
的場はにっこりとしながら、彼もまた色彩、匂い、味ともにぐんと豊かになった料理に手をつけた。
「うん、美味しい」
「あぁ…半信半疑だったが…本物か」
「この魔法は植物にも効果があるんだ。だから、僕がいた森はここなんかよりもっとずっと素晴らしい場所だったよ」
ディーはうむむと唸り、的場が魔法をかけた料理をにらんだ。
「…これは虚無病にも効果があるのか?影法師にはどうだ?」
「え…?虚無病は試したことがないよ。それに影法師って?」
「影法師ってのは、虚無の世界に住む者の先触れと言われる者だが…」
ディーは途中で言葉を切ると、また難しい顔をしてジャガイモを一つフォークでさし持ち上げた。
「これは…本当に厄介だな」
ジャガイモを口に放り込む。
「それって…」
「いや、勘違いするな。ちゃんとヤザリさんとの約束は果たすさ。…ところで、的場。お前の旅の目的を明確にしてくれないか?ヤザリさんが言うには、的場の力は使い方によってはとても危険だから世界をまわって逃がしてほしいってことだったが」
「はい。世界を回りたいというのは本当だよ。だけど、俺は世界を救う手段を探したいと思ってるんだ」
「こりゃまた大きくでたな」
目を見開くディーに「本気だよ」と的場はにらんだ。
「俺は何にも知らないけど、精霊だし、とても力があるってヤザリさんにお墨付きももらった。それに実際精霊樹の力を回復させることだってできる。だから何かこの世界のために働きたい」
「別にバカにしたつもりはないさ。ただ途方もないとは思うが。…しかし、世界を救う…ね」
ディーはたのしそうに目を細めた。
「なかなか面白そうだ。少なくとも食い扶持稼ぐためだけに冒険者をやるより、ずっとやりがいがある。…で、何かあてはあるのか?」
「今のところ…」
啖呵を切った出前、全くあてがないというのはばつが悪い。
「とりあえず、いろんな場所を回り、許される限りで精霊樹の回復を計りたいって感じかな」
「まぁ、そんなとこだろう」
ディーは甘い見通しに、しかし特に文句はつけなかった。
「それに、お前は口は達者だが、生まれたての赤ん坊だって聞いてるからな」
代わりにそんなことをいうディーに的場は顔が熱くなった。
「まぁ出来る限りのサポートはするさ」
そういって彼は麦酒を飲んだ。
「とりあえずは何処へいくかだが、そちらも決めていいんだよな?」
「えぇ、できれば」
「ならば、最初は街道からはなれるがトロイの街にいきたい」
彼は厳しい表情で言った。
「小さな町なんだが…ずいぶんと状況が悪いって噂だ。助けられるならば助けてやりたい」
「状況が悪いというと?」
「話では精霊樹が朽ちて影法師が頻繁に現れているらしい。人はほとんど逃げ出したって聞くが…」
そもそも貧しい村だ。全員が逃げ出せるわけもなく、土地にしがみついているやつもいる。
気になるのだろう。
ディーの表情からは心配する様子が伺える。
「魔物は?」
「精霊樹が力をなくしてるんだ。かなり危険だろうな」
ディーは少し遠回りな言い方をしたが、つまり“出る”ということだろう。
「行きましょう」
的場がいうと、ディーは小さく笑った。
「まぁどれだけられるかだな」
「はい」
「お前、自分の身はまもれるのか?はっきりいってミシェルはほとんど役にたたねぇし、俺はそっちが心配だ」
「…いえ。でも、いざと言うときには木に隠れます」
「木に?…それも精霊様の力か?」
「まぁ、そんなところです」

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