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らっしゃいノームランド 10

例によって説明回

メルヴィルの街は、まさしく的場が想像する中世の街並みそのものだった。
通りには石畳が引かれており、両側には二階から三階建てのどこか可愛らしい家がびっしりと建っている。
通りには人々であふれており、端には荷車や木箱、樽などが寄せてあった。
家々の間には時折人ひとりがようやっと通れる程度の小路があり、それこそヨーロッパの古都を思わせる。
そして、
「あれがメルヴィルの総督府だ」
街の奥には大きな城がある。
城といってもシンデレラ城のような尖塔がいくつもあるようなものではなく、全体的に四角いいかつい城だ。
メルヴィルは昔はひとつの国であったらしく、そのなごりで現在も総督府とよばれているが、総督がいるわけではないらしい。
「あそこには領主が住んでいる。メルヴィル侯爵邸だな。一部は裁判所や図書館などになっているて、時々王族の方も滞在される。近くに大学府もあるので、明日あたりでも行ってみよう。廃れてはいるだろうが、まだ精霊術を学んでいる学生もいるはずだ」
「はい」
的場たちは先に宿を取ることにして、表にベッドと食事のマークの看板を探した。と、ここでもヤザリはいろんな雑学を教えてくれる。
「入口の近くにある宿は安くはあるがセキュリティが甘い傾向がある。私らのような旅人なら、すこし街に入った場所の宿を探した方がいいだろう」
ヤザリの勧めに従い二人が入ったのは大通りに面した感じのよい宿で、一階は食堂になっていた。
朝・晩の食事付き、風呂は別途で一人50リルド。
的場には相場はわからなかったが、ヤザリ曰く妥当な値段だそうだ。
二人は荷物を置き、しばらく休憩をとるとギルドに向かうことにした。
メルヴィルは大きな都市なので、支部を置いているギルドは多い。
的場はヤザリの勧めで旅人ギルドと薬師ギルドに入ることを決めた。
本当は精霊術師のギルドにも入りたいところではあったが、そちらは審査基準が厳格なことから今回は諦めた。
旅人ギルドは最大のギルドでもあり、名前と年齢程度の提示があれば誰でも入れる。ただ旅人ギルドは、大所帯で人でごった返しており、初心者講習のようなものはなし。変わりに「はじめての旅」という初心者教本のようなものとパスポートのようなノートをもらった。
ついで向かった薬師ギルドは、カウンターが二つきりのこじんまりとした支所で、他に客は誰もいなかった。
ギルドの中には、たくさんの植木や干された薬草などで溢れかえっており、独特の臭いが鼻をついた。
ここではきちんと話を聞いた方がいいとアドバイスをうけ、ディーに会いにいくというヤザリと的場は一度別れることになった。

的場の相手をしてくれる職員は女性で、的場にはなんの種族かはわからなかったが肌が薄い緑色で髪は濃い緑色をしていた。
名前はエリーというらしく、なかなか柔和でやさしそうな印象を的場は持つ。
「ところで、薬師ギルドにはランクがあるの」
会員登録をしたあとカードを渡され、その後でエリーは言った。
「カードを見て。ほら、0(ゼロ)ってかかれてるでしょ。これはまだ初心者ってことよ」
「へぇ」
「で、ランクをあげていけば数字も大きくなるってわけ。最初は薬草を見分けるところからね」
そういって彼女は大きな図鑑を取りだしページをめくる。
「最初は12種類の植物を見分けて採集してくるところから。それができれば数字が1になってランクアップ。駆け出しになれるわ」
開いたページには詳細な植物の絵とともに、植物の名前や大きさ、生息地、薬になる部位やその効能などが詳しく紹介されている。
「へぇ。でもなんか薬師って感じじゃないですね」
「そうね。最初は薬草採集師って感じかな」
エリーはくすくす笑った。
「最初は植物の種類や効能、それから生えている場所や環境を覚えること。それからいくつかの植物を自分で育てられるようになること。それからやっと調合できるようになるのよ」
「大変そうですね」
「そうね。だから普通は学校に通うものよ。三年間みっちり勉強して、それから一人前の薬師を頼って弟子になるのよ」
あなたは学校にはいかないの?という興味の視線を受けて的場は曖昧に笑った。
「気長にやります」
「まぁそれもいいと思うわ」
それから的場は図鑑をかり、ギルドの中で最初の12種類の植物を覚えることにした。
うんうん唸りながら勉強する的場に、エリーは手が空いているからか間違いやすい植物や、簡単な見分けかた、探しかたなどを丁寧に教えてくれた。
また薬師ギルドでは、採集してきた薬草を引き取ってくれてもいるらしく、その換金法なども的場は学んだ。
野草をつんでお金になるなんてボロいと思った的場だが、残念ながらそう甘くはない。
それだけで食べていくのはまず無理であるらしい。
「食べていけるようになるのは、薬を作れるようになってからでしょうね」
エリーは気の毒そうに言った。
「ちなみに、どれくらいで引き取ってもらえます?」
「それはもちろんピンキリ。それに季節や需要によって変動があるわ。今なら…そうね、このページの薬草なら束で5リルドくらいかな」
宿代が一人一泊50リルドだったことを考えれば、確かにそれだけでは生計が成り立ちそうにない。
的場はがっかりして肩を落とした。
「まぁ最初はそんなものよ。自分で調合ができるようになればちがってくるわ。特に最近は精霊術がほとんど使えなくなってしまってるからね。治療手段が薬頼らざるえないから」
「精霊術…か」
「お陰で薬師は大儲けっといいたいけど」
そういってガランとした店内を見るエリー。的場も彼女の視線を追い「…とはいかないみたいですね」と眉を下げた。
「そうなのよ。初級の薬の材料に関しては手に入るんだけど、精霊の加護の元でしか育たない薬草もあるからね。おまけに魔物も増えてるから気軽に出歩けやしないし」
ぶつぶつ。
かなり鬱憤がたまっているらしい。
的場はそれらの話を聞いてやりながら、また少し世界についての知識をためた。
そして、「精霊さえ戻ってきてくれたらね」というエリーの言葉に少しだけ胸が痛くなった。

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