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らっしゃいノームランド 09

説明ばっかで心がいたい
しかも読み返してないから、なんか・・ごめん

的場が初めて魔物を目にしたのは、ディーがいるというメルヴィルの街まであと少しというところでだった。
街道から少しばかり離れたところで何人かが騒いでいるな…と顔を向けると、冒険者たちが禍々しい猪に似た獣を狩っているところだったのだ。
猪に似た獣は、人の背丈ほどの高さがあり、全長は四メートルほど。
いくつもの牙と角が生えており、目が真っ赤に燃えていた。
「あれが…」
唖然とする的場にヤザリは「そう、魔物だ」と言った。
「冒険者たちは魔物を狩って生計を立てるものが多い。魔物たちの牙や毛皮、肉等は貴重な資源だからな」
「へぇ…すごいですね」
直線的な短いダッシュ攻撃を仕掛ける猪型獣と、それをひらりと避けて猪がのそのそと方向転換する際に一斉攻撃を仕掛ける冒険者たち。
彼らはさほど危なげなく魔物と渡り合っている。
「あれはさほど強い敵ではない。採集部位は、牙くらいか。肉と毛皮なども売れないことはないが、肉は癖があるし毛皮も質が悪い」
ヤザリは独り言のように呟くと的場を促し歩き出した。
それでも気になった的場がちらりと後ろを振り返ると、黒いローブの人物が炎を呼び出し攻撃を仕掛けているのを見てしまい、彼は大きく目を見開いた。
「ま、魔法?」
驚く的場に気付き、ヤザリは冒険者たちをちらと振り返って「そうだ」と頷いた。
「一度言ったかもしれないが、この世界には精霊の力を借りる精霊魔法と別に魔術がある。精霊魔法とは的場様が使っておられるもので、再生・治癒・育成などを司る。対して魔術とは、血と言葉、時に図式や道具によって発動させる魔法で、主に攻撃・破壊・操作などを司っている」
「血って?」
「あぁ、血というのは血統や、その人の生来の性質のことだ。魔術は魔術師の血を持つ人にしか使えないということだ」
「へぇ、いろいろあるんですね」
「詳しくは時期にわかるだろう。他にも神官魔法とよばれるものや、屍使い、召喚師などがあるが、それらはすべて精霊魔法か魔術の派生と考えられている」
的場は大きく息をついて、この世界はまったく自分の知っている世界とは違うのだと再確認した。
そしてふと気づいた。
「もしかして俺、精霊魔法もっと使えるのかな?」
「そりゃ、使えるだろう」
ヤザリがおかしそうに言うと、的場はまたもや目を見開いた。
「うそ、ほんとに?!」
「精霊魔法は、精霊に力を借りて行使する魔法だが、精霊の使う魔法のことでもあるからな」
「じゃ、じゃぁ、もしかして今俺が使っている魔法よりももっと強力なのがあれば…」
この世界を救えるのではないかという的場の希望は、しかし「それはどうだろうな」というヤザリの疑問に遮られた。
「私はこれまでずっと旅をしてきて色んな人々に会い、色んな文献を見てきた。もちろん、虚無については特別注視してきた。だが、私はこれまで精霊魔法が虚無を払い精霊の力を取り戻させたという話はみたことがない」
「え、でも俺は…」
「あぁわかっとる。だからあんたは特別だといっているんだ」
ヤザリは難しい顔をしていう。
「精霊魔法は虚無に対してほとんど無力だと私はこれまで考えてきた。特別な、とても力のある精霊魔法の使い手ならば虚無化を遅らせることができるらしいと聞いたことはあるが、的場様のような力は聞いたことがない」
的場の力は、明らかに話に聞いたものとは違うとヤザリは言った。
「あんたの力は、どちらかというと活性化と付与のような気がするな。まぁ、よくはわからんが」
「活性化と付与…」
「加護や浄化かもしれない。あんたが魔法をかけた木をしばらく観察していればわかるんだろうが、あまり同じ場所にもおられん」
ヤザリはそういうと、まっすぐに前を向いた。
「私のわずかな知識を元に議論をするより、まずは動いた方がよかろう」
ヤザリの視線の先には、陽炎のような、しかしはっきりと人工のものとわかる影が見えた。
「あれがメルヴィルだ。いくつもの街道が重なる街。王都と同じくらいに広く賑やかな場所だ」
メルヴィルには大きな街道が三つ重なっており、1つは王都に、1つは隣国のミスレイルに、そしてもう1つは港町として有名なシャットに続いている。
「獣人はもちろん、鱗を持つリザード族や長寿の耳長族など多様な種族が暮らしとる。珍しいかもしれんが、あまりじろじろ見んようにな」
虚無が広がってから人々がピリピリしており、殺人にまで至るような騒ぎが頻繁しているのだとヤザリは言った。

メルヴィルは五メートルほどの城壁にぐるりと囲まれた城塞都市であった。
三つの大きな街道に通じる場所には門があり、そこがメルヴィルへの入り口だ。
二人は大きな街道を歩いてきたわけではないので、一度ミスレイルに通じる街道に合流し、それから門を目指した。
門に近づくにつれ、少しずつ人通りが多くなっていく。
馬にのる人や、ヤクににた動物に荷車をひかせているもの、ヤザリのように大きな荷物を背負ったものなど様々。
種族も獣人を中心に同様だ。
「街に入るには通行書が必要だが、お前さんはまだ小さいし、私が保証人になる。街で住人登録するといえば大丈夫だろう」
「は、はい」
「別に緊張することはない。精霊玉をもっとる限り、お前は普通の子供となんの変わりもないからな」
ヤザリの言葉に頷き正面を見ると、門のあたりに入管のようなものが設けられているのがわかった。
そこで一人一人のチェックと、積み荷のチェックを行っているらしいが、見た限りそれほど厳しいものには見えず的場はすこしほっとした。

いくつかある審査の列で二人がならんだのは、獣人の兵士が担当している場所だった。
担当の兵士はヤザリを見知っているらしく、「おや、ヤザリさん」と気安く話しかけてきた。
「今回はずいぶんとお早いですね」
「あぁ、ちょっとディーに用が出来てな。ディーはいるかな?」
言いながらヤザリが通行書を渡すと、兵士はそれに目を通しながら「いると思いますよ」と言った。
「しばらくはブラブラしてましたが、冒険者をやることにしたみたいです。…はい、結構です。…ところでそちらは?お孫さんじゃないですよね?」
兵士が的場の方を興味深そうに見ながら言う。
「あぁ、こいつは知り合いの子でな、身寄りが亡くなってしまったんで私が保護しとるんだ。通行書はもっとらんが、入れてやってくれんかね?メルヴィルで適当なギルドに入れてやろうと思ってるんだが」
ヤザリの言葉に兵士は「うーん」と唸ったが、間もなく「まぁいいでしょう」と言った。
「こんな小さな子が悪さをするとは思えませんし、ヤザリさんの紹介ですしね」
「あぁ、助かる」
「ただし、あとでその登録証をこちらに持ってきてくださいね。…ではどうぞ、ようこそメルヴィルへ」
人好きする笑顔で兵士は二人のために道を開けてくれた。

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