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らっしゃいノームランド 05

ほのぼの系がかきたくなった。

元のノームランドでは、土の状態や水分の多少、日光のぐあいなどから育てられるものにいくつかバリエーションがあった。つまり、その土地土地でしか育てられない植物(木の実・花)がある(といってもノームランドはそもそも矮小なゲームであるため二種類ほど)ため、“どこでもおうち”という機能があった。
これは家のドアにつけている表札を持ち歩き、別の木の幹にくっつけることで使用できる、いわば引っ越し機能のことだ。
もちろんいくつか制限があり、Aという木からBに移るにはBに誰も住んでいないのはもちろん、ワンフロアしか移動できず、表札を外した時点でワンフロア以上のものは消滅する。
また当然、Aはプレイヤーがいなくなった時点でノーマルな木に戻ってしまい、いくらレベルアップしていてもゼロに戻る。
現在ワンフロアしかもっていない(拡張していない)的場は、すでに何度かこの機能を試しており“どこでもおうち”機能がこの世界でも有効なのを確認している。
的場が別の木に表札を移すと、自動的にドアが生成され、中には元の部屋が再現された。
ただしノームランドとは違い、木がしぼんだりすることはなく、最初の木が一番見映えがよかったので的場は最初の木にずっと住んでいたのだ。
的場はその木に愛着を持っていたから、ヤザリと共に自宅を離れる際にはとてもさみしい気持ちになったものだ。
そこで彼は、“かつて”ノームランドにあった裏技をやってみることにした。
いわゆるバグ技に分類されるそれのやり方は簡単だ。
まず自宅の表札とは別に、もう一つ表札を用意する。
そしてドアの表札を外すと同時に、新たな表札(これは分かりやすい名前にするのが好ましい)をつけるのだ。
そうすることで、表札をとった時点で消えるはずの部屋が保存されるというものだ。もちろん、元の表札を別の木に張り付けると、ちゃんと部屋が構築(こちらは当然ワンフロアのみだが)される。
これにより、拡張状態を維持した別荘ができると同時に、あたらしい家(こちらは複製されたワンフロア)を持つことができる。
そうやって部屋の中におかれた木箱を二つににすることでアイテム増殖が可能だった。
ゲーム内で大体0.5秒の間に行わなくてはいけなかったこの作業は操作性の問題からなかなか難しく、良心的なプレイヤーたちが多かったノームランドではつかうものは少なかった。
しかしそれもやがては修正され過去の裏技になっていたものだ。
それを的場は思いだし、ものはためしと“生誕の家”とかいた表札を用意しやってみると、見事成功したのだ。
もちろん最初の表札も使用でき、結果は大成功であった。
彼はそれを確かめると、表札に長く細い植物の茎をよって作った紐を通し首から下げた。
そして最後に目一杯の気持ちを込めて、あちこちに魔法をかけるとヤザリについて自宅から離れた。



自宅を離れて1日ほど、的場は否応なくこの世界の現実を目の当たりにすることになった。
目に見えて色褪せてゆく森。空気が重い。なのに希薄。色がなく、すかすかで臭いも味気もない。
「ひどい」
豊かな森からやってきた的場にとっては恐怖すら感じさせる光景であり、彼は小さく震えた。
「あぁ、まったくだ。だがこのあたりはこれでもまだましな方だ」
「これから先はこれよりもひどいのですか?」
的場がきくとヤザリは悲しげな目で頷いた。
「ここはただの空虚な森だが、ひどい場所は虚無とよばれる。そこは虚無におかされ、魔物しか住むことができない不毛な土地だ。どれ、的場様、ためしに一つ例の魔法を唱えてはくださらんか」
「あ、はい」
促されて、的場は手近な木を選び、手を差し伸べ“エリ・エリ・レマ・サバクタニ”と唱えた。
途端、きらきらとした光が彼から放たれ木に吸い込まれる。
しかし…目を見張るような変化は現れず、ほんの少し先程よりましか…といった程度だ。
「ヤザリさん、ごめんなさい。これくらいしか…」
「ふむ。しかし全く効果がなかったわけではない」
「そうですね。数日をかければもしかしたら再生できるかもしれません」
しかしそうだとしてなんだというのだろう。
仮に一週間をかけてこのあたりを浄化したところで、世界はもっともっととてつもなく広いのだ。
「焼け石に水ですが」
「いや、それでも素晴らしい。これまで法術師はもちろん聖職者も、薬師も全く何の成果も上げられなかったのだから。唯一精霊使いとよばれるものたちが成功した例はあるようだが、すでにその精霊が少ない今は、やはり的場様が唯一だ」
「はぁ」
でも…と自信なげに魔法をかけた木を見つめる的場の肩にヤザリは手をおいた。
「確かに、的場さまが埋めた“空白”は小さい。しかしそれだけでも本当にすごいことだ。森というものは木々がより集まってできるもの。少しでも元気な木が増えれば、相乗効果が出てくるにちがいない」
少しだけ元気な木が集まっている場所があれば、少しずつその元気は大きくなり、また外に広がるはずだとヤザリはいう。
おそらく気休めに過ぎまいと的場は思うが、それでもありがたかったし、そう信じたいと思った。
「では道々、俺は魔法をかけてゆくことにします」
「そうしてくれるとありがたい。それに一度にあまり大きな変化が出ないというのは、こちらには都合がよいかもしれない」
「なぜです?どうせなら一致に元気になった方が…」
「それだとお前さんが狙われる危険性がぐんと増すことになる」
「あ」
目を丸くする的場をヤザリは笑った。
「的場様は思慮深いかと思えば、妙なところで抜けている」
「あはは」
的場は照れ笑いをしながら頭をかいた。

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