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らっしゃいノームランド 04

ほのぼの系がかきたくなった。

ヤザリが外でテントを張り休んだ後。的場は一人星を見ながら考えた。
美しい、美しいゆりかごのような世界は、しかしここは箱庭世界で、本当の世界は滅びに向かっているのだとヤザリは言った。
そして的場の力は滅び行く世界において二つとないすばらしい、得難いものであると言った。
「俺がまだ十代ならば、世界を救う冒険に出るのも悪くはないんだけどな」
だが実際の的場は、見た目こそ十歳前後ではあるものの、中身は分別のついた大人である。
がむしゃらに、後先を考えずに突っ走れるほどには若くない。
「自分一人でどうこうできるなんて思えるほど太平楽じゃないしな」
いや、ヤザリの言葉が本当ならば、的場の存在は救世主どころか滅びを加速させるものでしかない。
「豊かな森が見つかれば、だれかがここを蹂躙するだろう。そうしてそのだれかが富めば、他の誰かが森を奪おうとするだろう」
森だけではない。
もし森を豊かに出来る力を持つ的場の存在を誰かが知ったら?
きっと自分は捕らえられるにちがいない。
的場は次から次に、浮かんでくる戦禍への事象にまぶたを伏せた。
「理想の世界か」
ゲームのノームランドに取り込まれただけ…とはいかないらしい。
世界を救うなんて…
「滅びてしまえなんてことは思わないけど」
だからといって積極的に救おうという気にもなれない。
世界全体に魔法がかけられるならまだしも、的場が魔法をかけられる範囲は限られているし、とすればただでさえ危ういらしいバランスが一気に崩れかねない。
「あー、わかんねぇ」
ただ一つわかるとすれば、勇者や救世主なんて仕事は頭の固くなった大人には向かないということくらいか。


翌日。
的場が目を覚ますと、ヤザリがスープを作ってくれていた。
中身は野菜ばかりで肉はないが、これは精霊である的場に気を使ったものであるらしい。
「野菜といっても保存していたものだから、あまり美味いとはいえないが」
そういいながら小さな鍋をかき回したヤザリは「そうだ、試しに例の魔法をとなえてみてくれないか」と提案した。
「使っている野菜も水も、もとは虚無病におかされていたものだからな」
「虚無病?」
「中身が空っぽで虚ろになってしまう病のことだよ」
「あぁ」
確かにそれはぴったりの命名だ。
的場はそう思いながら魔法を唱える…と、先程までは気づかなかったスープの優しい香りが鼻をくすぐった。
「ほう、やはりか。なんと素晴らしい」
にんまりと微笑みながらヤザリはコップにスープを満たし的場へと差し出した。
「朝から少し辺りを回ってみたが、ここは本当に豊かな森だ。的場様のおかげだな」
「そんな、言い過ぎですよ。俺は何も。来たとき…、生まれたときにはもうきれいな場所でしたから」
「最後の楽園ですな」
的場はさみしい言葉だと思いながら小さく微笑んだ。

ヤザリはそれから5日、的場の元で過ごした。
そして6日目に身支度を始めた。
「行ってしまうんですね」
優しい博学なヤギのおじいさんであるヤザリと的場はとても気があっていたので、的場は別れを惜しんだ。
「あぁ、ずっとここに居たくはあるが…。私は旅をするさだめの星の下に生まれてきたのでね」
張っていたテントを小さくたたみ、ヤザリはそれを背負う袋にくくりつける。ぎゅっと細い縄を絞め、「的場様はどうするね」と顔を上げた。
「どうするかはあんたの自由だが、ここにいるのはおすすめせんよ」
「…はい。でもどうすればいいか俺にはわかりません」
「ふむ。確かに動く動かざるに関わらず、あんたには災いがまとわりつく」
「はい。できればもっとこの美しい森を広げたいとは思いますが、下手には動けなさそうです」
いっそ大国にでも保護されてしまおうかとも的場は考えたが、彼にはこの世界の知識が決定的に欠けておりやすやすと身を任せることはできない。
「私と一緒に旅をしてみるかね?」
「…それも」
的場は力なく首を振った。
「ヤザリさんへのリスクが高すぎます。旅をするなら一人でするしかないでしょうね」
一人で旅をしながら少しずつ魔法をかけていく。
それが一番無難であるように的場には感じられていた。だがそれはヤザリに反対されてしまう。
「的場様、あんたは知らないだろうが、この世界には精霊を食らう魔物もいる。身を守る手段のないあんたには一人旅は無理だ。それにあんたの姿は力のないものには見えないが、少しでも力のあるものには陽炎のように透けて見える。いくら身を隠して旅をしようとリスクは高いぞ」
「…そうですか。でもそれじゃ」
動けない。
しかしただじっとしているわけにもいかないのだ。
じっとうつむく的場。ヤザリはしばらく考え、やがて決意するようにひとつ頷くと口を開いた。
「的場様、このヤザリは自分の身を守るのが精一杯。とてもとてもあなた様を守って旅をするような力はない。しかし一人だけそれができるだけの力を持つものを知っている」
「えっ」
「もしよければ、そのものを紹介しようと思うのだが」
「でもそれはご迷惑では…」
「いやいや、彼はつい先頃国のやり方が気にくわないと騎士をやめたばかりで今はふらふらしておる。きっと的場様の力になってくれるはずだ…といっても、ここから半月は旅をした場所におるから、その間は私と旅をしてもらうことになるが」
いかがかなと尋ねられ、的場は戸惑いながらも頷いた。
「でも、俺は逃げ回ることくらいしか出来ませんよ?」
「ふむ、それについても一つ考えがある。だが、とりあえずは旅の準備をしよう。私もいろいろと考えをまとめたい。道中で詳しく話をさせてもらおう」

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