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彼女の成長

ゆっくり妖夢と本当はこわいクトゥルフ神話 から
火牙×霊夢
原作はしらんが、ゆっくり妖夢で萌えたので。
読み返さない

ここ何日かで急にたくましくなった後輩の成長が喜ばしくもあり、そして少し寂しくもあり…

「先輩、後悔しないように精一杯生きるって大切ですよね」

大真面目にそんなことをいう助手席の霊夢に一瞬言葉に詰まり、一拍をあけて「そうだな」と返した。
「後悔しないように、伝えたいことはちゃんと口に出して伝えないと、ですよね」
「…あぁ」
スッキリとした顔でいう彼女がまぶしい。俺は慌てて目を逸らした。
ほんの数日。ほんの数日だ。
たったそれだけの間に、彼女が突然ぐっと成長した。
一体何があったのだろう。
近くにいたはずの俺は彼女に変化をもたらした何かが俺にはわからない。
彼女の成長は嬉しい。しかし、何が彼女を成長させたのか…?
ヒントはある。
彼女のが携わった怪異なヤマ。
急に彼女の近くに現れた、愛らしい女子高生と、冴えないサラリーマン風の親父、そして海のものとも山のものとも知れぬ青年。
急激に成長した彼女は、元々整った顔立ちをしていたが、今はそこに内面からほとばしるような生命力と力強さが加わ署内の人間ですらハッとして見惚れてしまうほどに美しい。と、同時に、俺は自分がひどく年をとってしまったかのような倦怠感に苛まれ、輝かんばかりの彼女に圧されるように陰にとりつかれている。
「…先輩、話聞いてました?」
「ん?あぁ」
「じゃぁ、私がさっき何て言ったか言ってみてください」
助手席からじろりと睨まれ、やはり聞いていなかったとは答えづらく、さてなんと言おうかと考える。
「えぇっと、あれだ。これから向かう先の古書店店主殺人事件についてだ」
「違いますよ」
むっとしたように言われ、軽く肩をすくめる。
気まずい空気をごまかすためにタバコをくわえ、しかし火はつけずに唇に挟んでおいた。
「人には、ちゃんと話を聞けとか、最後まで話を聞けとかいうくせに」
「悪い、考え事をしていた」
「古書店店主殺人事件ですか?」
そうだと頷くと、間髪入れずに「嘘ですね」と言われた。
「先輩は事件のことを考えてるときチェーンスモーカーになるんです。馬鹿みたいにスパスパ吸うんです。ものすごく機嫌が悪そうに」
「そうか?」
「はい。大体、今度の事件はそんなに考えこむようなものじゃないですし…。だから、先輩は事件以外の事を考えていたと推測します。どうです?」
「まぁそうかもな」
「で、何、考えてたんです?本当は」
「別にぼんやりしてただけさ」
「それも嘘です」
またもや断言され、むず痒いような気分になった。
「妙につっかかるな」
赤信号。
ちらりと隣を見ると、不満そうな顔があった。
「気になりますから」
「へぇ」
嬉しいことをいってくれる。
だがそれはもちろん俺の妄想でしかない。
気になるという言葉は、それ以上でもそれ以下でもない。
小さく苦笑すると「どうしました?」と聞かれた。
「なんでもない。ただ年を取ったなと思っただけだ」
「そんな。大して年は変わらないでしょう」
霊夢は不満そうに言った。
確かに、彼女と俺は片手の指の数ほども年は違わない。
そしてふと、もしかしたら彼女はとても重要な事をしゃべっていたのではないかと気づいた。
「霊夢、一体なんの話をしていたんだ?」
「もういいです」
「よくない。なんの話だったんだ?」
彼女はなんだかばつが悪そうだ。
「もういいです。なんか、今さら説明するのむなしいです」
「…そうか。悪かったな」
謝るとため息をつかれた。
「だから先輩もてないんですよ。女の子の言葉はちゃんときかないと」
「ははっ」
それは何度か言われた言葉のある台詞だ。
そう、元カノとかその前の彼女とか。フラれる間際に言われるセリフだ。
貴方って私の話を全然聞いていないのね。…とかなんとか。
それで俺が何も言えずに黙りこむと、彼女たちは決まって、もういい、とか、もう知らない、とか言って俺の側から離れていくのだ。
去っていった彼女たちを追わない自分もどうかとは思うが。
「先輩、もしかして調子悪いんですか?」
「んー、でもないよ」
霊夢に気遣われて、俺はしゃきっとせねばと苦笑した。
「先輩が元気ないと気持ち悪いです」
「気持ち悪いって霊夢、お前な…」
言いかけて、彼女が思ったような表情をしてないのに気づきやめた。
「お前が変わったからだよ」
「え?」
「お前が急に変わるもんだから俺も調子が狂ってんだよ」
そして内心を吐露してやると、彼女は驚いたように目を見開き、それからそっと胸に手を当てた。
「…やっぱ変わりましたかね」
「変わったよ」
何があったんだ。…とは、なんとなく悔しくて聞けなかった。
彼女が俺の知らないところで変化したことが、俺はどうにも上手く消化出来ない。
まるで昔なじみの親友が、自分よりもガールフレンドを優先した時のように。
…いや、違う。
これは、
「嫉妬か」
ボソリとつぶやくと「え?」と霊夢が声を上げた。
「嫉妬ですか?」
「みたいなもんだ。気にすんな」
「えぇ?それって誰に対しての嫉妬なんですか?」
「さぁ、誰だろうな」
「なんですか、それ」
腕を組んで口をとがらせる彼女。
子供っぽい表情と仕草だが、それが俺をほっとさせた。
俺は笑って彼女の髪をくしゃりと撫でると、「まぁ気にするな」と言って気分を切り替えた。
「よし、そろそろ着くぞ。あの古狸締め上げなきゃいけないんだ。気合入れろよ!」
肩を叩くと、彼女は不満そうな顔を一瞬見せたものの「わかってます」とコクリと頷いた。
「あんなスケベジジィ、すぐに吐かせて見せますよ」
「そのいきだ」
手荒なことはするなよ。…とは言っても無駄だろうかと、俺は仲間でごった返す古書店の前に車を止めながら考える。
だが、成長した彼女は、違うのかもしれない。
もしそうだとすれば…
「いよいよお前も俺の元から卒業かな」
ひどく寂しい想いと喪失感に胸が傷んだ。それを振り切るようにシートベルトを外し車から出ると頭の上にのせていたサングラスをかけた。
そして一瞬遅れて助手席から出てきた霊夢がどんな表情を浮かべているか知ることなく、俺は鑑識の元へと向かった。

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