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エランシア02

とりあえず書きたいトコだけかく。

さて、私が死に真っ逆さまにエランシアという世界に産み落とされ5年が経った。
ゲームをやったことのある人が、もしこの世界にやってきたのならば狂喜乱舞してその感動に打ち震え、さてどんな人生を送ろうか、どんな冒険をしようかなどと考えるのだろうが…残念ながら私にはエランシアというゲームの知識がない。
というか、そもそもゲーム自体ほとんどやったことがなくその感動がない。
ちょっと変わった世界に転生してしまったな…程度で、はりきった神様に申し訳なく思ったりする。

そんな私の名前はマリス=フェーエンドルフ。
フェーエンドルフという中堅貴族の長男に生まれた。
白金の髪にロゼワインの瞳。将来はどうなるかわからないが、鏡に映る自分の顔はビスクドールのように整っていて愛らしい。
そんな私の目下の悩みは、家族の…いや、両親の不仲である。
父は魔族で、名前はランシード。そして母はエルフ族でユリアという。
ふたりとも迫力美人。まるで絵に描いたような理想の夫婦ではあるのだが、しかしそれは外面だけの話。
実際の二人は完全なる仮面夫婦であり、外ではお互いに仲睦まじい夫婦を演じてはいるが、玄関に一歩入った瞬間にふいとお互い逆の方向を向いてそれぞれの部屋(屋敷の左右、遠くはなれている)に戻る次第だ。
もともと政略結婚であったらしいから、そういうこともあるかもしれないが、前世ではそれなりに仲の良い夫婦生活を送ってきた私としてはなんとなくさみしい。
二人の子供である私としてはなんとか両親に仲良くなってもらいたい。
恋愛には相性があるから、今更恋人同士になれとは言わないが、良い友人のような関係なら二人にも築けるはずだと思っている。
だが…
残念ながら、全く上手く行っていないのが現状だ。

*

「お母様」

今日もまた、朝の挨拶に出向いた私を母は冷たい目で出迎えた。
白金の長いストレートの髪、白い肌、そして澄んだ青い目。
年齢は知らないが、一児の母とは思えぬほどに若くみえる彼女は、エルフ族の出身だ。
私は精一杯幼児の無邪気さを発揮し、なんとか微笑んでは見せるものの…それでも彼女はニコリともしない。
父と外で仲睦まじくしている時の彼女は、おっとりと優しい雰囲気の人だが…家では、私と父の前ではその片鱗すらうかがうことはできない。
「お母様、おはようございます」
「…えぇ、おはよう」
私は何もしらない子供のように母に近づこうとするが…
「マリス様…」
母に仕える侍女たちがさささっと寄ってきて邪魔をする。
「なに?離して」
「だめです、マリス様」
「嫌だよ、僕はお母様に…」
「いけません」
「奥様は…」
「気分が悪いのよ」
申し訳なさそうに、しかし頑としてひかない侍女たちの向こうから彼女はきっぱりと言った。
「だからマリス」
その先は何も言わなかったが、拒絶であることは十分に察せられた。
私はそれでも子供ということで知らんぷりをしてもよかったのだが、しかしそうする気力は私には残っていなかった。
私に出来るのは、ただ哀れっぽく「お母様」と言いながら彼女を見つめることだけだ。…それとて、彼女には黙殺されてしまうのだが。
母の侍女たちに部屋の外へと出された私は、演技でははく本気でがっくりときていた。
そんな私に「あの、奥様は…あの、別にマリス様が嫌いというわけではないのですよ」と下手なフォローを入れたのは私の侍女であるメイリーンだ。まだ15の彼女はオロオロとしながらも、なんとか私を元気づけようとしてくれている。
そんなメイリーンを見ていると、落ち込んでばかりもいられない。
私はめいっぱいの笑顔を見せて「そうだね」と頷き、「じゃぁ、次はお父様に会いに行こう!」と声を上げた。

*

父、ランシード。
魔族である彼は、母とは別の意味で厄介な男だ。
「お父様!」
紫がかった黒い髪に赤い目、繊細さと野性味が交じり合った美丈夫。
彼は母とは違い、私を溺愛している。
「マリス!」
彼は私を、母とは正反対の笑顔で迎えると、話をしていた秘書の元を離れ小さな私を抱き上げた。
「お父様、おはようございます」
「おはよう。よく眠れたかい?僕の可愛い天使」
彼は私のほっぺたにぶちゅっとキスをして、うっとりと目を細める。
「あぁ、本当になんて可愛いんだろう、ねぇクラウス?」
彼はそういって自分の秘書を振り返った。
「えぇ、そうですね。ランシード様」
「本当に、あの女の血が入っているなんて信じられないよ。これでこのこの髪が僕と同じ色だったらよかったのに」
彼は母譲りの私の白金の髪を忌々しげに見つめ、それから私の視線に気づくとまたにっこりと微笑んだ。
「お父様はお母様が嫌いなの?」
「うん、大嫌いだよ。もう何度も言っているじゃないか」
知ってはいる。いるが…もう少し言い方というか、子供に対して繕うところがあってもいいと思うのだが…。
「どうしてなの?」
「どうして?そんなのはなぜ鳥は空をとぶのか問うのと同じくらい馬鹿らしい質問だな。なぁ、クラウス?」
「その例えはどうかと思いますよ。そうですね、どうして人は眠るのかとか、どうして火は熱いのかとかその手の問いと同意語でしょうね」
びっくりするような事を言うクラウスだが、父はその例えが気に入ったようでケラケラと楽しげに笑った。
「そう、そうだね」
「どうして?」
思わず聞くと、「また“どうして”なのか?」と面白がるように父は言った。
「そんなの決まっている。魔族とエルフは水と油。もともと相性が悪いんだよ」
そういう父は微笑んではいるが、目は全く笑ってはおらず代わりに憎しみの炎のようなものが燃えているのが見えた。
「本当に…、こんなことじゃなければ、誰があんなエルフの…」
「お父様…」
ランシードは何事か罵るような言葉を吐こうとしたようだが、ふと私に気づくと「ごめんね」と謝った。
「とにかく、マリスもあまりあの女には近づかないほうがいいよ。マリスは僕だけの天使なんだから」
とてもやさしい顔と声。
しかし言葉は何処までも辛辣だ。
自分の親とはいえ…、前世を考えれば、私よりもずっと年下の相手だ。
何かいってやらねば…と思ったのだが、何も言葉にすることはできず、私は父が降らせるキスをただただ受け止め続けた。

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