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エランシア

とりあえず書きたいトコだけかく。

可もなく不可もなく、まずまずといってもいい人生を歩いて56年。
子ども(一男一女)もすでに独立し、そろそろ夫婦二人で過ごす定年が見え始めた頃…私は会社で急激な頭の痛みに襲われた。ガンガンと破鐘を激しく叩くような音と共に体が傾きどうっと床に倒れこむ。誰かが私をゆすり話しかけているが全く反応を返すことが出来ない。
そのうちゆっくりと私の意識は遠ざかり始め、そして私は悟った。

あぁ、私は死んでしまうのだ…と。

 ****

カランカランカラン!!!
パンパカパーン!パン!パン!パン!パン!パン!パンパカパーン!
ダンダカダカダカ!
「「「おめでとうございまーーーす!!!!」」」

気がつくと私は天国と思われる場所で、熱烈歓迎を受けていた。
目の前にはゴールとかかれた花のアーチがかかっていて、その下で天使(?)が金をカンラカンラと鳴らし、ラッパを吹き、クラッカーを鳴らし、小太鼓を叩き、空からは紙吹雪が舞っている。
ぽかんとあっけにとられる私などまるで無視だ。
「いやぁ素晴らしい、めでたい!」
美しい天使たちの間から恰幅の良い初老の男がやってきた。背は私よりも小さいが、目方は私の倍はありそうだ。白いひげがサンタクロースを思わせるが、赤い衣装はみにつけておらず、白いワンピースのようなものを着ている。そんな彼はほくほくと笑いながら、「君は私が日本の担当者になってからちょうど7億7777万7777人目の死者なのだよ!」と言った。
「いや、素晴らしい」
実にすらばしい。
感激しきりな男性に「はぁ」としか返事ができない。
7億7777万7777人目の死者?ってことは、彼は死神だろうか?
私の肩を彼は親しげに叩いた彼は、「それで君は、エランシアを知っているかね」と尋ねてきた。
「エランシア…ですか?…さぁ、なんでしょう?」
わからずに尋ねると、彼はほがらかだった顔を悲しげにひそめ「なに、知らないのか」と気の毒そうに言った。
「君、それは人生の8割は損して過ごしてきたね」
可哀想に。…って、
「え、8割もですか」
「あぁ、あれは素晴らしいよ、エランシア。そう、我々の創造主ですら夢中になっていじってるくらいだからなぁ」
「はぁ…で、そのエランシアっていうのは?」
聞きながらちらっと天使たちの方を見ると、彼らは雲(?)の上にちったゴミを片付けていた。楽器を演奏していた天使たちも撤収作業をやっている。
「エランシアというのは、君、地球で大ヒットを飛ばしているオンラインゲームのことだよ」
「オンラインゲームですか」
そういえばエランシアというゲームのCMをテレビで見たことがあるような気がする。
「あ、確か発売25周年とかいう…」
「そうそう!それだ!」
CMのナレーターの言葉を引用すると、彼はものすごく嬉しそうに笑った。
「25周年、毎年1度のバージョンアップがされており、オンラインゲームとしては異例の大ヒットになってるんだよ。その世界観のすばらしいことすばらしいこと…!創造主もエランシアの世界観に夢中でねぇ、同じような世界をまるごと作ってしまったくらいなんだよ」
「は…?はぁ」
そこから彼は語るは語る。
そのエランシアという世界がどんなに素晴らしいか、その世界に生きる人々の造形の多様さと美しさ、気候や風土、地形、冥界、魔界、天界へとバージョンアップごとに広がった世界、動物や魔物、聖獣に神獣、精霊、古代生物、魅力ある迷宮に謎の多い古代都市の移籍、化学の代わりに発達した魔法世界。
数えきれないほどのダンジョンにクエストに加え、季節ごとの期間限定のクエスト、特殊条件下でのみ発生するクエスト。
また狩りで手に入れることができる素材を使って作成できる武器や道具、冒険以外での職の多様さ。
べらべらべらべら…私が1割も理解できていないのは、「はぁ」としか相槌を打てないことで気づいているだろうに…いや、もしかして気づいていないのか、とにかく喋る。
いつのまにか天使たちはどこにもいなくなっているというのに、とにかくエランシアの素晴らしさについて力説している。
まったく困った人に捕まってしまった。
これが現世ならば「ちょっとこれから仕事がありまして」とかなんとか言えるのだが、死んだ身でそんな言い訳はできない。
ひたすらじっと我慢した。
そしておそらく3時間は我慢しただろう。
ようやく「というわけで…」という言葉が出たときには心底ほっとした。
だが…
「君には我らが創造主の創りたもうたもう一つのエランシアにて第二の人生を選んでいただこうと思っている」
「は?」
それはどういう意味なのか。
またもぽかんとしている私を、彼は喜んでいるとでも勘違いしたのか満足そうに顎を撫でた。
「もちろんこの場合にチートはつきものだからな、これはかなり期待してよろしいと思うぞ。なにしろ創造主が自らデザインしてくださったのだ」
「え、ちょっとまってください…あの」
すみません、話をほとんど聞いていませんでした。とは言えず、気がつくと、
「というわけで行っておいで!」
と、背中を押されて…私は真っ逆さまに落ちていた。

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