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全ての罪を我らの物とし

FT 王様・宰相・将軍の三人の話。
BLじゃない。 今後そういう感じになってもいいけど。
王が一人の女のために…って 展開が好きじゃないのでそういう話です。
読み返さない。@1くらい書きたい。

「ならば、お辞めなさい」

私の言葉に王は顔をこわばらせ、同席していたシングは驚いたように目を見開いた。
「一人の女のために国を混乱に陥れるなど言語道断です」
「待て、く、国を陥れるなんてそんな事は俺も彼女も思ってやしないぞ」
「貴方や彼女がどう思っているかなんて関係ありません。貴方が彼女を娶る事そのものが問題なのです」
「何故だ」
「何故?まさかそれがわからぬような貴方ではないでしょう」
冷たく言い捨てきつく睨めつけると、彼は苦しそうに目を伏せた。
彼は優秀だ。おそらく歴史に名を残すような王になるだろう。そんな彼にたかが女の事で意見をするのは私だって本意ではない。
しかしそれでも彼女だけは認めるわけにはいかないのだ。どうしても。
「ただでさえ混乱しているんですよ、我が国は」
私の言葉に二人からは言葉は返らない。だが気にせずに私は言葉を続けた。
「ようやく腐敗していた膿を切除することに成功した直後に起こった隣国との戦争。少なかった人材は更に少なくなり、残った人材を懐に抱え込めはしたものの、尚旧体制の復活を望む声も少なくない。そんな中、混乱に乗じて攻めこんできた国の王女を娶るなど…ありえません」
そう三年前にようやく長年腐敗に腐敗を重ねてきた馬鹿な貴族どもを駆逐したばかりだった我が国ではそもそも人材がとても不足していた。
王も宰相である私も、そして軍の要であるシングも共に二十代と若く、勢いはあるが経験は乏しく人脈も細かった。腐敗していた上層部は切ったが、真面目にやっていた領主たちの中にも若すぎる主君と、やや強引だった政策に不満の声がくすぶっていた。政治的には安定とは程遠かった状態。そんな中、…突如として国境を超え隣国が攻めてきたのだ。
国の足元がぐらついている我が国の状況を見て、今が好機と見たのだろう。
それからの1年は筆舌に尽くせぬほど…のちの歴史家がことの次第の整理に頭を悩ますほどに同時多発的に様々な事が起った。
ともかくも我が国は隣国を退け、それどころか彼の国を滅ぼすところまで持っていった。
この歴代でも類をみない大偉業に国民たちは沸き上がり、未だ混乱の中にありながらもようやく地に足をつけてこれからを考えようとしていた矢先…、今度は王が、今はまだ姫として軟禁している敵国の女を娶りたいといってきたのだ。
「やはり…ダメか」
哀れっぽく言う彼は、シングとともに私の親友である。
3人それぞれ性格は全く違うが、幼い頃よりずっと仲良くやってきた。腐敗した貴族どもを追い落とすのだって、我々三人…一人でも欠ければ成し遂げられなかったに違いない。
その意味で私たちは運命共同体だ。
彼の幸せは私の願いといっても過言ではない。過言ではないが、しかし…
「ダメです」
だからこそ認められない。
「認めると言うのは簡単です。いえ、結婚すらも簡単に出来るでしょう。しかし、はっきり言いましょう。それでは誰も幸せにはなれませんよ」
王は私の言葉に色をなくし、そっと椅子の背もたれに体をもたれた。
「無理か」
「無理です」
「ではどうすればいい?」
「そんなこと貴方が考えなさい。貴方が私の立場ならばどうしますか?」
逆に問うと、彼は力なく笑い「反対するな」と言った。
「時が今でなければ可能性はあったかもしれないな。だが、ともかく今は許されないだろうな…」
「えぇ、時が今でなければ…もし今が平安で安定した国であったならば、私は貴方がたとえ庶子と結婚したいと言い出しても止めなかったでしょうね」
そういって私はじっと王を見つめ、言葉の先を促した。
「お前は相変わらず厳しいな、ヴェーリオ」
「そうあれと言ったのは貴方でしょう」
「そうだったな。ではシングに助けを求めよう。シング、俺はどうすればいい?」
これまで黙っていたシングは渋い顔をする。
「忌憚なく?」
「無論」
「ならばいうが、俺はヴェーリオに全面的に賛成だ。彼女がどんなに美しく、人格者であり素晴らしい人間であろうが敵国の姫は姫だ。彼の国の王族として責任をとってもらうのが正当だろう」
「つまり首をはねよと?」
苦い王の言葉にシングは無表情を繕って頷いた。
「敵国の王族はすべからく殺すべきだ。後塵の憂いを絶つために」
「シングのほうがよほど厳しいか」
「といってももちろん子どもに関しては配慮を致します。彼らはすべからく名を取り上げた後は教会の手に委ねるつもりです」
「彼女に対しては無理か」
「無理です。彼女は第一王女です。それにすでに成人を迎えております」
いくら政治に口を出すような立場になかったと言ったところで通じない。
支配下に入った国の王族が、支配する国の王族と婚姻を結ぶというのは政を円滑に進めるため、権利の移譲を滞り無く進める為によく使われる手ではあるが今回は諸事情により認められない。
「陛下、いえ、アウトリウス。友として言います。貴方が半端な気持ちで姫を娶りたいと言っているのではないと私も承知しております。友として、どうにかしてやりたいと本心から思います。しかし私が出来るのは片目を瞑るのがせいぜい。もし貴方が彼女を得たいと思うなら、貴方が王であることを辞めここを離れるか、さもなければ私を切るかのどちらかです」
その他はできない。その他を取るというのならば、私は彼と敵対せねばならない。
「ヴェーリオを切るときは、俺の首もとってくれ」
いたずらっぽく言うシングだが、その目は真剣だ。
王は私たちの言葉を聞き頭を抱えた。
「彼女を殺したくはない…。こっそり逃がすことも無理か」
「…いけません」
言うも行うも易し、しかしそれに伴うリスクが大きすぎる。
「アウトリウス、貴方が賭けているのは貴方と彼女の幸せだけではありません。同時に我が国そのものもベットされていることを承知なさい。私は貴方の幸せをのぞみはしますが、貴方の共として、そして国の宰相として浅はかな選択肢を与えるわけにはいきません」
「彼女を殺して国の安定をとるか、国を捨てて彼女をとるか…」
呟くアウトリウス。視界の隅でシングが小さく首を振るのが見えた。
「お前が彼女をとっても別に恨みはしないぜ、アウトリウス。確かにお前と彼女が出ていってしまえば、ヴェーリオと二人でやっていくのはかなり大変だろうな。しかし、お前が居ないからといってこの国を潰させるほどやわじゃない。なんとかやっていくさ」
彼が彼女を選び、国を出ていった場合…表向きは姫は処刑し、彼には病気にでもなってもらい三年後あたりに正式に死んでもらうことになるだろう。
後継者の問題は頭がいたいが、アウトリウスには弟がいる。まだ7つにしかならないが、なんとか体裁を保てるだろう。
「アウトリウス、これは脅しではありません。といっても…2つしか選択肢を出せないのは心苦しいですが」
アウトリウスは頭を抱え「あぁ」と呻いた。
そして…
「王になど…なるのじゃなかったな」
これまで一度として吐いたことのなかった弱音を吐いた。
それに私もシングも何も返さなかった。いや、返せなかった。
黙り込んだ私達。
沈黙を破ったのはそのアウトリウスだった。
「悪い。俺が望んで王になったというのに…今のは失言だ」
「…いえ」
「俺だけじゃないのにな…。お前もシングも…少なくない大切なものを切り捨て此処にいるっていうのに…」
彼の言葉に思わず顔が歪む。
「…だが、俺は好きな女ひとり守れないのかと思うと辛くて」
彼はくしゃりと髪を掻き、小さく震えた。
もしかしたら泣いているのかもしれない。
だが私はその肩に手を延ばすことは出来なかった。
ちらりとシングを見ると、彼もまたとても辛そうに顔を歪め拳を握りしめていた。

「本当は…わかっていたのかもな」

長い沈黙の後、彼は言った。
「本当はわかっていて、わざわざ口にしたのかもしれない」
彼は頭を抱えたまま言う。
「お前たちなら言うであろう言葉、そして言ってくれるであろう言葉」
私は口を開きかけ、そして唇を噛み締めた。
「期待して、そしてお前たちは十分に応えてくれた。それだというのに…俺は…」
「アウトリウス…」
「お前たちの好意は正しく俺に届いている。確かに届いている」
口の中に血の味がジワリと広がり、私は自分がどちらをとっても辛い決断を迫っている立場だというのに涙が滲みそうになった。
きっとどちらをとっても後悔するであろう選択。
「アウトリウス…」
名を呼ぶと彼は頭を抱えたまま首を横に振った。
「私は…「だから」」
私の声を遮るようにアウトリウスが言葉を続ける。
「俺も誠実にお前たちに応えようと思う」

そして彼は顔を上げた。

「彼女の名を処刑者のリストへ。処刑は明日、他の王族ともども広場に置いて聴衆の面前にて行う。処刑は断首台に置いて行い、落とした首は城門に三日間晒す事とする」

そこには先程苦悩していた男の顔は無く、王にふさわしい堂々とした面構えのみがあった。

私は真っ青になって手すりに体を寄せ、シングは握りしめた拳から一滴の血を流した。
なぜそちらを選んだのか。
そう問いたかったが言葉にはならなかった。
なぜなら、彼がたとえ彼女との道を選んだとしても私はそう問うていたに違いないからだ。
どちらをとっても納得しがたい、どちらをとっても魂に傷をつける究極の選択。
迫ったのは私たち、選んだのは彼。
ならばこれ以上の問答は一切無用。
荒々しく立ち上がったシングに続き、私も立ち上がると、ゆっくりとその場に跪き頭を下げた。

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