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下級悪魔とどうでもいい後輩

悪魔の話。
途中で話が迷子になった。
ほのぼの。 気が向いたらシリーズとしていくつかかくかも。

俺は低級悪魔。
所謂小悪魔ってやつだ。
人に悪さをして、人を不幸にすることで“得”ならぬ“悪徳”を集めている。
悪徳は人間の世界でいう通貨と同じようなものだ。
これをたくさん集めれば、スキルを上げたり、新しいスキルを買ったり、クラスを上げたり出来る。

ただし俺は先程も行った通り低級悪魔。小悪魔も小悪魔。まぁ、いってしまえば最低レベルでしかない。
俺に出来る事といえば、人が髪を手ですいた時に袖のボタンに髪を絡ませるとか、カメムシを頭に止まらせるとか、イヌのうんちを踏んじゃった…とかその程度。
一回に稼げる悪徳は大体1か2。よくてせいぜい5って感じで結構ひどい。
といっても、別に俺が本来善人で人に悪さをしたくないってわけじゃない。
やる気はあるのだ。
本当は試験日の受験生から受験票をかすめとったり、後少しでレベルがカンストするゲームのセーブを消したり、美男美女のカップルを破滅させたり、せっかくたてたマイホームに雨漏りさせたりしたい。
だけどそこまでやる実力は俺にはない。また俺はものすごく運が悪いのだ。

 *

今日は特別酷かった。
せっかく3日もかけて愛犬家の家のペットのわんちゃんを逃したというのに、逃げ出したペットがひったくり犯に噛み付いて捕まえてしまった上、そっこうで飼い主に保護され、しかも警官に表彰されてしまった。
せっかく久々に美味しい物が食べれるかと思ったのに、これでは悪徳を積むどころかマイナスである。
貯金がすっからかんである。
素うどんすら食べれない。
泣きたい。
いや泣こう。
そんなことを思いながら、コンビニの前のゴミ箱の横で三角座りしていると…
「あれ?先輩?」
俺に話しかけてくる輩が。
「ん?」
と顔をあげると、そこには後輩のシド君が立っていた。
シド君は、彼が新人の時に少しだけお世話をしたことがあるのだ。
といっても、本当に少しだけ。
彼はすぐにメキメキと頭角を表し、トントン拍子に出世。今では俺にとっては雲の上の存在である上級悪魔になってしまっていた。
最初の頃こそ後輩である彼の才能に嫉妬を抱いた俺ではあったが、今では彼との差があまりにも開いてしまったのでどうでもよくなってしまった。
つまり簡単に言うと、シド君は俺にとってどうでもいい男である。
「なにしてるんですか?こんなところで」
どうでもいい男だから、
「腹へってんだよ」
情けない事だって平気で口に出来るのだ。
「せっかく今日は久しぶりにお肉にありつけると思ったのに、素うどんすらくえなくて泣きそうなんだ」
「なんでそんなことになったんですか?」
「腹が減ってるから話したくない」
もうどっかいけ。
そんな気分で手をひらひらと振ると、彼はしばらくは突っ立っていたが、やがて立ち去った。
薄情者め。
大体あいつは最初から気に入らなかったんだ。
俺より背が高くてイケメンで。腹が立つったらしょうがない。
本当は俺のことなんか見下している癖に。なーにが“先輩”だ。お前みたいな上級悪魔に“先輩”なんて言われても馬鹿にされているようにしか聞こえないんだよ!
でもまぁいい。あいつはどうでもいい男だ。
だから腹を立ててやるな、俺。ひっひっふーだ。
なんて思っていたら、ガサリと音がして顔をあげるとそこにはふっくらと膨らんだ白い袋。そしてそこから漂うフライドチキンのいい香り。
グゥ。
思わずお腹がなる。
すこしばかり油のしみてきたそれを凝視していると、「どうぞ」とシド君の声が聞こえた。
フライドチキンの入った袋から少し目を離すとシド君が立っていた。
どうやら俺のところから立ち去った後、すぐにコンビニに入ってこれを買ってきてくれたらしい。
「食っていいの?」
「どうぞ」
「ポイズン?」
「入れる暇はありませんでしたよ」
暇があったら入れてたのか。
思ったけれど、聞かなかった。彼は上級悪魔だ、やってもおかしくない。
俺はフライドチキンの袋を受け取り、ふんふん鼻を鳴らしながら口を開けてフライドチキンを覗きこんだ。
中に入ってたのはまごうことなきフライドチキンだった。
グゥ。
またお腹がなって俺はそれにかじりついた。
「うまっ」
久々の肉だ!ジューシーだ!
すごい。まだ腹に達していないはずなのに、口に入れただけで俺の体はフライドチキンからどんどん栄養をすいとっていく。
「あとお茶も買って来ました」
「ん」
「それからおにぎりが3つ、ポテトサラダに焼きそばです」
「おぉ、金持ち」
驚く俺にシド君は微妙な表情を浮かべた。
「先輩……」
「なんだよ」
「いえ、全部食べていいですよ。俺、今日は結構稼げたんで懐あったかいんです」
「へぇ。何したの?」
言いながら遠慮無く、彼の差し出した袋を受け取る。
一番高そうな焼きそばですら300円しないけど、今の俺にとっては最高級フランス料理のフルコースに匹敵する。
どうせ明日もろくにかせげないだろうし、今日のところはこのフライドチキンで我慢して、二日…いや三日はもたせられるか…?
「…で、舞台監督まで一緒に免職なっちゃって」
あ。聞いてなかった。どうでもいい人の話。でもとりあえず「へぇ」とか頷いとけばOK。
シド君はどうでもいいので、どうでもいいような態度でも何にも文句は言われないのだ。
本当にどうでもいい男だな。こいつ。どうでもいいけど。
「先輩は相変わらずみたいですね」
「うん」
「聞きましたよ、なんかまたやっちゃったって」
「うん。やっちゃった」
テヘペロ。ってつけてやろうかと思ったけど、そこまでどうでもいい人にサービスしてやる意味がわからないのでやめた。
あ、でもこいつ、非常時の財布としてはとても使えるんだよな。どうでもいい人じゃなくて、財布君に変名してもいいかもしれない。
食べ終わったフライドチキンの袋を丸めていると、シド君が「他食べないんですか?」と聞いてきた。
それに、明日以降食べると答えるとなんとも言えない悲哀のこもった目をされてしまった。
今更全くきにしないけど。
そう、何気にスルーしていたけれど、実は俺は相手を不幸にしようとして逆に幸せにしてしまうパターンがよくある。
頑張って大金の財布を落とさせたと思ったら拾った主が取引先の重役で云々…とか、ちょっと悪くなったパンを食わせて腹をこわさせてやったと思ったら入院先の看護婦とラブラブになったり…。
そのたびに俺は借金を背負い、せっかくためた悪徳がガッツリ削られている。
悪徳ゼロになったのもこれまで数えきれないほど経験があったりする。
「先輩聞いてます?」
「ん?」
「だから、家賃払うのも大変でしょう?だから俺の部屋に転がり込んできてもいいですよって言ってるんです」
「お前んち?」
「えぇ、こないだやっと部屋ができたんですよ」
「部屋が出来た?」
なんじゃそりゃと思ったら、インテリアデザイナーを入れて部屋を作ってもらったのだそうだ。
しかも都会の摩天楼、夜景が一望出来る超高級マンションの最上階のペントハウスであるらしい。
ほんとコイツムカツクわ。
とか思ってたけど、「家賃いりませんし、ちゃんと先輩の部屋もありますよ」と言われればグラっと来る。
何しろ貯金はゼロの上、家賃・水道光熱費、2ヶ月滞納中…。
「いこっかな」
俺が言うと、シド君はまた哀れみの目で俺を見た。
まぁどうでもいいんだけど。

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