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王道学園舞台裏

書きたいとこだけかく。
読み返してない

さて王道学園というものを知っているだろうか。
俺様会長や作り笑いの副会長、チャラ男会計他、一匹狼な不良やホスト教師なんかが出てくるアレだ。
舞台は山奥の全寮制の高校で、金持ちのボンボンが主に通っている。
ゲイやバイ率が異常に高く、顔の良し悪しによりランクが決まり、良い生徒には親衛隊と呼ばれるちょいと過激なファンクラブが存在する異様な場所。それが王道学園だ。
もちろんキャストには毎回少しずつ変更があるが(俺様会長がヘタレ会長になってみたり、チャラ男の代わりに無口ワンコが入ってきたり…)、大枠で同じような設定が王道学園には適応されている。
そして俺はそこに長く務めているモブだ。
名前はない。識別番号のM-211というのが、名前といえば名前だろうか。
振られる役は、モブらしく主役のクラスメイトとか、部活の先輩とか、準主役の友人役とかそんなのばっかだ。
だが別にそのことに不満はない。
物語が始まっても特にやることはなく、のんびりと暮らしていけるのだから楽だし、物語がなければ本当に何もやることがなくてもっと楽だし。

ちなみに今は物語は始まっていない。
いや、終わった所といったほうが正しいだろうか。
前回の物語は所謂非王道に分類されるもので、王道主人公たる転入生が学園を引っ掻き回した上に散々な目にあって学園から放逐され、苦労していた副会長が不良とくっついたところで終わってまったりムードだ。
ちなみに主役だった副会長と不良は、俺達のような毎度毎度キャストされては演じるというルーチンから離れ独立した物語に帰結したことでこの学園から離れていった。
主役になんざなりたくはないが、このルーチンから離れることができた彼らを少しだけ羨ましいと思ったりもする。
彼らはもう延々とこの学園に閉じ込められ、延々と高校生をやって、延々決められた役を演じる事というサザエさん時間を生きる必要がなくなったのだから。
「でもガチホモルートか…」
「何が?」
思わず呟いた言葉に返事がかえってきてぎょっとすると、同じモブ仲間の男(識別番号は1000番代だったと思う)がヨーグルトを食いながらこっちを見ていた。
思い出した。
今、朝食くってたんだっけ。
「いや、ルーチンワーク最高ってね~」
そう言いながら持っていたイングリッシュマフィンを一口かじり取ると、中からとろっとした卵があふれだしてきてマジ最高。
「なんかよくわかんねーけど、そろそろまた新しい物語が始まるらしいぜ」
「はぁ?また?近頃ペース早くないか?」
「そんだけ人気ってことなんだろうなぁ」
「ハッ」
まぁモブとはいえキャストですから、人気があるにこしたことはないとは思うけれど…、どこが面白いのかはさっぱり理解出来ない。
「で、次は?また王道?」
「いや、噂だけど違うらしい」
「へぇ」
一時期は王道学園で王道設定、つまり過去ありの変装した転入生がすったもんだで総受けになる話が主流だったが、近頃はあまり好まれないらしい。
「じゃぁ平凡受けとか?」
今は主流や流行りってやつはないが、平凡受けは割りと多い。
だからと思って聞くと、彼は案の定「そんな感じみたい」と頷いた。
「ただし、腐男子平凡受けだって」
「うわー…一番いやなタイプじゃん」
俺は嘆いた。
ちなみに腐男子平凡受けとは、平凡で目立たない主人公だが実は腐男子(男同士の恋愛沙汰をみるのが何よりも楽しいという特殊な性癖を持つ人物)で、男子生徒のあれこれを覗き見ている内にイロイロと巻き込まれてってパターンが主流。
ついでに言うと、くっつくのは幼馴染兼保護者あたりか、それとも生徒会か風紀委員。
ま、それはいいんだけど、問題は主人公が観察するボーイズラブの方。
モブなんでちょい役なのは確かだけれど、その中で主人公に目撃されるカップル役に任命されるのは…勘弁被りたい。
「あー、お前一度やってんだっけ?」
「一度じゃねぇよ!二度だよ!」
本当は4回やったけど、そのあたりは妙なプライドでさばを読む。
「はは、ご愁傷様~」
「てめ、人事だと思いやがって!お前だってキャストされる可能性はあるんだからな!」
「あー、うん。まぁそうだよね」
実感が無いのか適当な返事をする男にムカッとする。
フン、お前なんてチャラ男のセフレに抜擢されてしまえ。

…そんな呪いを掛けた数日後、物語は始まった。
友人がどこからか小耳に挟んできた情報どおり、主人公は腐男子平凡だった。
背は160ちょっとで小柄。メガネをかけていて至って地味。
だけどビーエルっぽぃ場面に出くわすと、明らかに鼻息が荒い。で、めちゃめちゃキモい。
そんな彼の隣には長身の爽やかイケメン君。
スタートは彼らが編入してきた時で、俺と友人はその隣のクラスに割り振られた。
幸か不幸かはわからないが、今のところ特に何の役も割り振られていない。
気楽なもんだ。とはいえ、一応モブとはいえキャストではあるのでちょい役くらいはある。
主人公の背景の群集の中とか、学食の食券売り場で主要人物の前に並んでる役とか、風紀委員長(もちろん主要人物の一人)に制服の事で注意を受けている役とかそんなん。
でもまぁシナリオには触れていないから気楽なもんだ。
「シナリオはどんなかんじよ」
友人モブに聞くと「えっとねぇ」と机の中から数学の教科書を取り出した。
これ、実は台本だったりする。
といっても、今回の物語の作者はかなり大雑把な人間であるらしく、過去に起こったことはともかく未来のところは白紙に近い。
「予定では、友人の爽やかイケメンに親衛隊ができてる頃かなぁ」
「へぇ、で、虐められルート?」
「みたいだね、イケメン君バスケット部が忙しくなるって伏線あったし、ちなみにオッズはイケメン友人くんがトップだよ」
オッズっていうのは俺達のようなモブがやっている最終的なカップルの予測である。
ちなみに当たると、そこから抽選をする。そして見事抽選にあたると、他の物語のモブと立場を交換出来たりする。
行きたいな…女の子がいる世界…。
「美術部の先輩は?」
「大穴、何?そんなのに賭けたの?」
「"そんなの"…ひでぇ」
「いや、だってあの人はモブじゃないけど、脇役でしょー」
「けっこう最初の方絡んでたじゃん。いけると思ったんだけどなぁ…」
「それは最初だからだって。あの人キレイだけど、やっぱ生徒会メンバーとかにはかなわないしさ、どっちかっていうと癒し系じゃん?あぁいうのはイイヒトで終わっちゃうわけよ」
「そんなもんかねぇ」

そんなこんなで、物語は俺たちを無視したまま進んでいった。
俺がやったのは、恒例の鬼ごっこでは速攻捕まって体育館に連行される役、体育祭では主人公の背景で大玉転がしをし、夏休みも学校に囚われ、文化祭では店を回って遊ぶモブ役…
「なぁ、これってもしかして一年で終わらないのかな?」
と言い出したのはもう12月が近いころだった。
よくあるパターンとしてはクリスマスがひとつの節目になるのだが…、今回はどうにも展開が遅い。
主人公はあっちこっちで主要人物とぶち当たり、イロイロとトラブルを起こしてはいるのだが…肝心の恋愛ルートになかなか入らない。
つまりフラグが立たないのだ。
「おかしいねぇ…」
「美術部の先輩も完全に脇役扱いになっちまったし」
「いや、それはおかしくないから」
「っつか、このダラダラ感きっついんだけど」
「だねぇ、もしかして打ち切りルートかな?」
俺達の出ている物語には打ち切りがけして少なくない。というか大部分が途中放棄される。
話をふくらませ過ぎたとか、作者本人ですら登場人物がわからなくなったとか、過去の付箋を回収できなかったとか、単純に飽きたとか理由は様々だが、作者のほとんどが学生だということも関係しているのかもしれない。
「それならそれでいいけど…いい加減退屈じゃねぇ?」
「だよなぁ」
まぁモブなんて退屈するのが当たり前なんだが、唯一ともいえる娯楽のシナリオがクソだと死にたくなる。
そんなことをブチブチ言っていると「そういえば」とモブ友人が口を開いた。
「知ってる?これって過去編じゃないかって噂」
「過去編?」
「そう、主人公の本編は大学か大人になってからの話で、今はモノローグじゃないかって話」
「うわ、マジかよ」
ってことは、なんだかんだありつつ、結局なんの解決もないまま彼らは三年間ここで過ごすってやつか?
最悪だ。ぐだーとしていると、「もう一つ噂があるんだけど」と彼は言った。
「なんだよ」
「焼き直しの噂」
「焼き直し?」
聞きなれない言葉にどういう意味だと聞くと、この物語があまりおもしろくないもんだから、舞台はそのままに別の主人公でやり直すんじゃないかという噂があると教えてくれた。
「あぁ、そういうことか」
それもまたちょこちょこある話だ。
最初は王道転入生の総受けルートだったのが、書いている内に作者が他のキャラクター(親衛隊長とか、彼を追ってきた不良だとか)に目移りして書きなおすってパターンだ。
どっちも面倒っちゃ面倒だが、どっちかっていうと後者の方がマシって気もする。
「もしかしてソレも賭けの対象?」
「そう、現状維持で来年こそ本命が現れるのか、それとも再来年、主人公が三年の時に本編があるのか、それとも過去編か…」
「打ち切りか焼き直しか?」
「そうそう」
「お前かけてんの?」
「うん、焼き直しルートに。お前はどうする?賭けとく?」
「んー…そうだな、じゃぁ来年が本編って事で」
「おっけー」

抽選には外れたらしいが、彼は賭けにかった。
つまり物語は焼き直しになった。そして俺たちはまた一年の春に巻き戻った。
前回の主役とその友人もいた。…が、どうやら彼らは今回は脇役であるらしく、主要人物特有のオーラみたいなのがない。
じゃぁ誰が主役なのか…そうやって辺りを見回していると、あの友人がやってきた。
が、
「よぉ佐々木」
口をついて出た名前に俺はぎょっとして動きを止めた。
そして“名前”を呼ばれた彼、佐々木も「三柴?」と“俺”の名前を呼んで固まった。
俺たちはモブのはずで…これまで名前がなかったというのに…。
それになんというか、これまでへのへのもへじみたいに個性のない顔をしていたはずの彼にはいつのまにか、これまで見てきた主役級のキャラクタたちと同じように個性がそなわっていた。
背丈は170と少しくらい。ひょろっと細い体つき。少したれ目がちな甘い顔立ちをしている。
俺は、俺はどんな顔をしているんだろう。
「三柴」
「佐々木」
俺たちは意味なくお互いの名前を呼びあった。
そして同時にハッと気づくと、鞄を開け、中から数学の教科書を取りだし中を開いた。
そこには簡単なあらすじと、現在のシナリオの進行状況が書かれているはず…なのだが、今は『本編開始まで後7日』と最初のページに書かれている他は、“普通”の数学の教科書になっていた。
俺は識別番号からわかる通り、モブのなかでは古参に入るがこんなことは前代未聞だった。
「み、三柴ぁ、これは一体どういうことなんだよ」
「ちょっと待てって」
モブや脇役にはシナリオから離れて本編に関わることは出来ないように制限がかけられている。
だが主役や主役級にはその制限がなく、ある程度自由を許されていると聞いたことがある。
シナリオの不在はそれに当てはまるのか?
そこでまた俺はハッと気付き、「生徒手帳だ」と言った。
主役か主役級には、詳細なプロフィールが提示されていることがよくある。
もし当てはまるならば生徒手帳に自分の詳細が記されているはずだ。
俺は懐から生徒手帳を取りだし、ページをめくった。
果たしてそこにあったのは…
『三柴雷千(みしばらいち)、主人公の友人、黒髪・黒目のイケメン』
………。
中二病な名前…はいいとして、主役の友人とはいえ、主役ではなかったのはひとまず安心。
だけど…
そろっと目を友人、モブから佐々木にレベルアップした男子生徒へと目を向けると、彼の顔は紙のように真っ白になっていた。
「おーい、佐々木?」
ぴくりとも動かない佐々木。
俺は彼の横に立つと、そっと彼が開いている生徒手帳を覗きこんだ。
『佐々木太一(ささきたいち)、本作の主人公。二枚目というには少し足りないが、愛嬌のある顔立ちをしていて人懐こい性格をしている。身長172センチ、見た目よりも細い。ライチと仲がいい』
「うわぁ…」
「ど、ど、どうしよう」
「どうしようって…拒否権はねぇし…」
主役や主要人物はモブとちがって、自由度は上がるがシナリオは最低限しか与えられない。それに加えて、この世界が“物語”であるという認識が著しく低下させられるという事を聞いたことがある。
今はまだ物語開始以前だから大丈夫だとしても…7日後には、彼はもう物語の主役としてモブの時の彼とは別人になっているのだ(といっても、モブには個性すらないので、今までの自分が消えてしまう…というような恐怖は特に感じないが)
「らいちぃ…!」
「ライチって言うなし。っていうか、お気の毒」
「っつかなんで俺?なんで?俺、脇役すらやったことないんだけど!」
「いや…作者の考えなんて思いもつかないし…」
「ライチ!お前、他人事だと思いやがって!」
「いや、思ってないって!」
そりゃ、主役よりはリスクが低い位置にいるのは認める。
しかし友人ポジというのはなかなかに厄介なのだ。
だって考えてもみろ、主役と親しいということは、その他の主要人物たちにとても近い位置に立っているということでもあるわけだ。
「もしこれが王道ものだったとしたら、はっきりいってお前よりも俺のほうがキツイぜ?」
「は?なんでだよ」
「少しは考えろよ!お前が主人公で、王道主人公がやってきたとする。とすればどうなる?生徒会や不良なんかが真っ先におちるのは当然として、次に落ちるのは誰だ?」
問うと、彼は答えにたどり着いたのかゴクリと喉を鳴らした。
「そう友人ポジにいる俺だ」
で、俺は転入生の取り巻きの一人に。
考えるだけでゾッとするが、これは十分に有り得るルートだ。
「そ、その場合、俺は嫌われ主人公ってやつか?」
「……そう、なるな。もちろん決まったわけじゃないが」
もしアンチ王道パターンだったとしても、アンチになるには一度は王道ルートを通るのが通常だ。
だから彼は何らかで嫌われ孤立する運命にあると言われる。
「も、もしかしてイジメられっこ?」
「…言いたくはないが、レイプも覚悟したほうがいいな」
そういうと、彼はヒッと喉の奥で悲鳴を上げた。
「もちろんきまったわけじゃねぇ。もしかしたら王道展開を横目で見つつ、そこらの適当な男とまったりゴールルートだって考えられる」
その場合、そこらの適当な男ってのが俺に回ってくる可能性が高いのだが…まぁそれはいいか。
「そ、そのほうが少しはマシ…か?」
「あぁ、だが何度もいうが、まだ何にもわかってねぇんだ…」
もしかしたら不良に絡まれてってパターンもあるし、いきなり生徒会補佐になれってルートも考えられる。他にも不注意の怪我で保健室にいったところ襲われて気に入られるルート、王道転入生ではなく男前な転入生がやってきて同じ部屋になるルートなどなど山ほどルートがある。
他にも特殊系として、作者が突然SFに走ったり、ホラーに走ったり、前世ものにハマったりするパターンも考えられるが…まぁこれは置いておこう。
というか、全ておいておくしか無い。
何しろ俺たちはキャストであって作者ではないのだ。
物語を動かす事はできても、方向性を決めるのはあくまで作者。
俺たちは作者に動かされるコマでしかない。
「なんでこんなことになっちまったんだ」
ぐずぐずと泣き出す佐々木。
ふと周りを見ると、他のモブたちが気の毒そうにコチラをみているのに気づいた。…が、目が合うと即効で目を逸らしてそそくさとどっかにいきやがった。
「とにかく…あと一週間ある。物語が始まれば、俺達には主役と主要人物として舞台にあげられる。そうなれば、俺達は多分今の出来事を忘れてしまう」
「……あぁ」
「だけど、俺だって伊達にモブ歴がながいわけじゃねぇ」
俺は彼よりもずっと先輩で、いくつものアホな話でモブをやってきたんだ。
「実は、裏技が存在する」
「裏技って?」
「裏技っていえるかどうかはわかんねぇけど、前にも俺らのように突然モブから主要人物に格上げされたやつがいたんだよ。その時、俺は物語が始まる前にちょっとした壮行会を開いてやったんだ」
彼は突然親衛隊隊長に任ぜられ、”長年慕っていた”副会長とくっついたのだが、それはいい。
「その時、俺はふといたずらごころを起こして、やつのほっぺたにモブ参上ってかいたんだ

「は?なにやってんのお前」
「あきれんな。とにかくだ。そうしたら翌日、どうなったと思う?」
「どうなったって…まさか?」
「そう、油性ペンでかいたせいか、それは消えずにそいつのほっぺたに書かれたままだった!つまり、これはどういうことだ?」
「え?どうっていわれても…」
「佐々木アホだな。アホ設定か」
「なんだよ!結局なにがいいたいんだよ!」
「物語本編には此処での記憶はもっていけない。部屋や持ち物も物語が開始された時点で一新されるからそれも持っていけない。だが、ひとつだけ持っていけるものがある」
「あ…それが体ってわけか?」
「そうだ!」
俺が大きく頷くと、佐々木はおーっと感心したように声を上げた。
「物語を円滑にすすめるためにかどうかはしらないが、俺たちは物語が始まることを大体一週間前から知ることが出来る。この時点で物語はスタートしていないわけだが、キャストは完了しているわけだ。だからだと思うが…俺たちの体はそのまんま物語にもっていける」
「じゃぁ自分自身の体にメッセージを書けば…」
「あぁ…、上手く行けばモブに戻れるぞ」
モブに戻るにはどうすればいいのか。
それは簡単だ。物語が打ち切りになればいい。そして作者が再利用する気もおこらないような箸にも棒にもかからないキャラに落とせば…。
俺の考えはちゃんと彼につたわったらしく、「おーーー!」と満面の笑みを浮かべた。
「よし!そうと決まれば…!」
「あぁ、作戦会議だ!」
かくして俺達のモブに戻る為の戦いが始まったのだ。

え?何そのオチって?
そんなこと言われても困る。なんたって俺達はモブ。
物語を進めることはできても、方向性を決めることなんて出来やしないのだ。

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