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猫は叱るよりも囲うべし 03

毛色が違うかも。
読みかえさんよ。

ある日の昼時、勝手に入り込んだドイツの部屋のベッドでロマーノは夢をみた。

夢の中では、彼は女だった。人の男と人の女の間に生まれた、人の子だった。
彼女は東洋風の世界のそこそこ裕福な家に生まれて、そこそこ裕福に暮らしていた。
裕福だったから学校に行く必要はなかったし、働く必要もなかった。毎日綺麗な服をきて、美味しいものを食べて、侍女にかしずかれ暮らしていた。
ただ習い事はしなくてはいけなくて、床に据え置いて演奏する弦の張られた楽器の練習だけは面倒だった。

ところで彼女には双子の妹がいた。フェリシアーノだ。
あまり外に出る機会の無い彼女にとって妹は唯一といっていいほどに気心のしれた相手であった。
その彼女が、15で結婚が決まった。
相手は貿易をやっている財閥の息子で、それがなんと日本だった。
恋愛結婚ではない。父が決めた結婚だ。
しかし二人はすぐに仲睦まじくなり、とんとん拍子に2ヶ月程で正式に婚姻を結び、妹は家を出ていってしまった。
そうなれば次はロマーノの番である。
父はすぐに彼女に婚約者を持ってきた。
しかしその相手のひどいこと。
豚のようにぶくぶくと太って、肌には出来物がいっぱいの父よりも年上の男だった。
ロマーノは当然こんな相手とは結婚できないと抗議した。
さすがの父もこれはないと思っていたのが、それはすぐに取り下げられた。
しかし次に引き出された男も、その次もことごとく酷い男ばかりだった。
体臭が酷い不潔な男、食べ物をぼろぼろとこぼす下品な男、好色丸出しのひひじじい。
なんでそんなに酷い男ばかりと、ロマーノは父をなじったが、これまではなんだかんだと彼には甘かった父もだんだんと腹を立てていたらしく、我が儘ばかりを言うなと逆に怒鳴られ、次の相手とお前は結婚をさせると決められてしまった。
そこでやってきたのが…なんと、これまで以上にひどい。
いやひどいという言葉ではたりない、彼女の元にやってきたのはまさしく化け物でだった。
汚れた黒い肌、生ゴミのような匂い、片目はつぶれていて、もう片目はギョロリと異様にでかい。口は耳までさけていて、歯並びはガタガタ。手足は非常に短く細く、そのくせ腹はだるまのように膨らんでいて、その男が身じろぎをするたびにに体からぼとぼととウジのような虫が落ちる。
見るだけでもゾッとするような男。
それを父は恭しくもてなし、ロマーノの意見も聞かずさっさと結婚を決めてしまった。
ロマーノが泣いても、頭を下げて頼んでもだめで、最後の手段と逃げ出したが、すぐに捕まり高い塔の一番上に閉じ込められてしまった。

ロマーノのあまりにも激しい拒否のため婚姻は二ヶ月後と決められた。
それまでに彼女に腹をくくれというのだが、まさかそんなことができよう筈がない。
ロマーノはそれから毎日泣いて暮らした。
日に三度届けられる食事を食べる他は何もすることがないい。父に許しを乞い、彼の人の妻になると誓うならば出してやると言われたが、まさかそんなこと口が裂けても言えない。
いっそ自殺してやろうかとも思ったが、高い塔から身を投げる勇気も、フォークで首を突く勇気も持ち合わせていなかった。
泣き暮らす日々、着々と近づく婚姻の日。

そんな絶望の中、昼を過ぎて彼女の元を訪ねるものがあった。
閉じ込められてからこちら一日三度、食事の時の決められた時間にしか訪問者は無かったので、これは異例のことだった。
まさかあの醜い婚約者がやってきたのかと怯えたロマーノだったが、そこに現れたのは思いも掛けぬ人物だった。
現れた人物は、昔、彼女が小さかった頃に婚約を結んでいた相手だった。
だが彼の家の事業が失敗したことから、それは間もなく解消され、元婚約者という義理でこの家に下男として雇われていたドイツだった。
彼女は昔…彼が自身の婚約者であった頃から、彼の事を嫌っており、下男になってからも随分と彼をいじめたものだった。
だからこそ、最初彼女は彼が自分の身の上を笑いに来たのだと思った。
ざまぁみろ、お前にはあの男がお似合いだと笑いに来たのだ。
身体を強張らせたロマーノだったが、やってきたドイツは彼女を見ても笑わなかった。
それどころか彼女を哀れみ、一緒に逃げようと言ってくれた。
冗談だろう、アレほどイジメ蔑んできたのだ、からかっているだけだと彼女は決めつけたが、彼は本気だった。
そして逃げ切れたのならば、自分と結婚して欲しいと言った。
彼女は決してドイツのことを愛していたわけではなかったが、他に選択の余地はなかった。
あんな男の嫁になるくらいなら…と、彼の策略に乗った。
そして二人は話し合って新月の夜を決行の日と決め………

*

目が覚めてからもしばらく、彼は夢に引きずられてぼんやりとしていた。
すぐに馬鹿らしいと笑ってもいいはずだったが、ほんの数時間のシエスタはあまりに鮮烈で簡単に抜け出せそうにはなかった。
眠い。
夢のつづきが気になる。
しかし、その欲求に素直に身を任せる気にはなれなかった。
彼女は無事に逃げ出せたのだろうか。
それとも捕まったのか。
あの化け物の嫁になったのだろうか。
それともドイツの嫁になったのだろうか。
ドイツの元からも逃げただろうか。
それとも泣き寝入りしたのか。
いや、もしかしたらドイツにほだされて、結局は幸せに結婚したかもしれない。
いやいや、結婚した先まで親とあの化け物が追いかけてきた可能性だってある。
…………
可能性は無数。

「つかれた」

枕にばふっと顔を埋め、そして此処が自分の寝室ではなく、忍び込んだドイツの寝室であったと思いだした。
そうすると、あの悪夢(?)は全てドイツのせいであったように思え腹がたった。
「あのムキムキめ…」
悪態をついたところで、一階の玄関の扉が開くかすかな音共に、犬がうれしそうにワンとなく声が聞こえた。

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