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飛び込んだ邂逅

パラレル 中世 悪友
気が向いたらあと1話。
読みかえさん

俺の名前は、フランシス=ボヌフォア。イーユーと呼ばれる大国にあるフランスと呼ばれる大きな領地を持つ大貴族の子息だ。
バカみたいに広い城で、たくさんの執事やメイドからかしずかれて暮らしてきたお坊っちゃま。
そんな俺の友人は、同じくスペインという名の大きな領地を持つ貴族の道楽息子であるアントーニョ。
俺とアントーニョは、領地が隣同士で親同士も仲がよかったことから、本当に小さな頃からの友人だ。
昔はフランスもスペインもそれぞれが国として独立しており、小競り合いが絶えなかったそうで、領民の中にはいまだにそれを引きずっているものもいるらしいが、俺たちの間にはそういったしがらみは一切ない。
俺たちは連絡も入れず気軽に互いの家を行き来し、旅をし、遠乗りに出かけ、また頻繁に開催されるパーティに二人して出向いては咲き誇る花々を蝶のように渡り歩きその蜜を味う無二の親友だ。

今日もまたパーティが開かれる。
しかも今宵はイーユー国の王女の誕生パーティだ。
国内はもとより、国外からも多数の賓客を招いて盛大に祝われる一大イベント。
もちろん俺の下にも招待状は届いていて、しばらく前から王都に滞在していた俺は、同じく王都にいたアントーニョと共にいそいそと馬車に乗り会場へと向かった。
アントーニョは赤茶色に金の刺繍の入った礼服、俺は紫色の上着にレースのシャツ、桃色のスカーフとお洒落には気合いを入れた。
今回のパーティは国が主催するものであるので、かなり堅い。
その為、今回ばかりは遊んでばかりもいられず、社交に精を出さねばならない。
あちこちからやってくる貴族や他国の王族、有力な商人など挨拶をしたり親好を深めたり…。
はっきりいってその辺りはかなり面倒だが、しかし普段父に仕事を任せて遊び呆けている貴族ボンボンである俺の唯一の仕事らしい仕事がそれなのだから、サボるわけにもいかない。
会場に向かいながら、仲間貴族の噂話をアントーニョとしていると、「そういえば」とふと思い付いたように彼が口を開いた。
「今回はバイルシュミットも来るんやないか?」
と。
バイルシュミット。
ドイツという領地(ちなみに俺の隣の領地だ)を持つ、こちらもかなり大きな貴族だ。
土地の資源にはあまり恵まれないが、技術力(武器具や農具・歯車など)が素晴らしく資源は潤い過ぎるほどに潤っているらしい。
ただし以前に王の不興を買って(一説によると大喧嘩して)からというもの、殆ど領地にとじ込もっており社交界には顔を出していない。
だが今回の王女の誕生パーティにはさすがに出てくるだろうと彼は言った。
「なにしろ王女の15の誕生日やからなぁ」
15といえば、大人の仲間入りをする年。
一番重要な誕生日だ。…ということは、つまり彼女の婚約者候補もわんさときているということなんだが…まぁその辺りはいい。
「バイルシュミットか。息子が俺たちと同世代なんだっけ?」
「そや、そう聞いとる。実は親父から、挨拶のできるようやったら是非しとけって尻をたたかれてんねん」
「ふぅん。どんなやつなんだ?」
「さて。それがよぉわからん。親父もいろいろ調べたみたいやけど、いまいち情報があつまらんかったらしいわ」
「なんだ、本当に引きこもりか?」
ガリガリの青白い眼鏡を騒々しうんざりしていると、アントーニョは「いや、ちょっとちゃうらしいけど」と言った。
「でもま、パーティにきとったら嫌でもわかるやろ」
「ま、そうだね」
来ているとなれば、挨拶をしないわけにはいかないだろう。
全く気は進まないけど。



招待客が多いせいで、会場近くになると馬車が詰まってしまった。
俺たちの乗った馬車にはボヌフォア家の家紋が掲げられており、他の馬車の御者は決まって俺たちを先に行かせようとするのだが、馬車が通路でぎちぎちになってしまうとそう簡単には前には進めない。
会場に着いたのは、予定よりも四半刻ほども遅れ、俺たちはいくぶん疲れていた。
しかしここからが本番なのだ。
主役が出てくるまではまだ時間に余裕がある。
それまでに一仕事しておかなければ。
俺たちは会場につき軽く喉を潤すと、早速寄ってきた貴族たちと近況を語り合った。
作り笑いで。

『おやおや、なんとお美しい女性だ…』
『お陰さまで今年は綿花が豊作で…』
『※※様は病を得たとかで※※のあたりにご静養に…』
『さすが、王族専属コックの料理ですな、この子羊のなんと柔らかい…』
『東からきたという陶器を見まして?それがとても白くて…』

ただの世間話でも聞くものが聞けば、情報がたんまりと入っているのに気づく。
例えば、だれそれが新しい愛人を抱え込んだとか、綿花の値が下がりそうだとか、だれそれがいよいよ危ないので勢力図が変わりそうだとか…まぁそういうことだ。
俺はにこやかにやってくる人々一人一人と会話を交わし、そして頭のメモにたくさんの事柄を書き込んでいく。
もちろん会話だけではなく、彼らの服装や、誰と仲が良さそうだとかそういうことも重要だ。

※※では租税が上がった。
※※の鉱山はそろそろ枯れそうだ。
※※で病が流行っている。
※※に汚れた移民が沢山入ってきた。

そうこうして二時間ほど。
ようやくファンファーレがなり、主役の登場を知らせる。…と同時に、別行動をしていたアントーニョが何処からか隣にもどってきた。
王族がつらつらと名前を呼ばれて登場するのを見ながら、成果を口にしようとすると、「あれやあれ」アントーニョに先をこされた。
「あれ?」
「そや、あれ」
バチバチ目配せするのがうざいので、仕方なくそちらを見ると…
「どれだよ」
「ほら、あっちの!あの若作りのキッツイ赤いドレスのおばちゃんの向こう…」
「お前ってさぁ、ほんと時々毒舌だよなぁ」
「えぇから!」
促されて仕方なくもう一度アントーニョが言う方を見ると…確かに若作りに少々無理がある赤いドレスの婦人がいる。そしてその向こうというと…
「どれよ」
「あれや」
さっきからそればっかりだが………わかった。
件の女性の向こう側、少し離れた場所にその男は立っていた。
俺やアントーニョと同じくらいの年令の男。軍人の礼服を思わせる黒い服には、銀色の刺繍が施されている。
薄い金…いや、銀髪といったほうがいいだろうか、薄い色彩の髪に柘榴のような瞳。
痩身だが、剣や馬術になれているような印象を受ける。
あれが…
「あれが…バイルシュミットか」
俺の隣でアントーニョが頷く気配。
それと同時に、向こうが俺たちの視線に気づいたらしくこちらを見た。
野生動物が警戒をあらわにするように、すっと細められる赤い双眸。
「…おっかねぇ」
ボソリというと、「同感やな」とアントーニョが隣で苦笑した。

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