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見えるもの、見えざりしもの 07

太陽を横切った点はぐんぐんとその大きさを増し、太陽を飲み込み、どんどんとこちらへ近づいてくる。
「あ、あれは?!」
驚くルートヴィヒ。
その影に隠れていたロヴィーノは、そのグングンと大きくなっていく影を見て、ハッとその正体に気づいた。
「ユズュム!」
「何?」
「ユズュムだ!あれ!サディクの飛竜だ!!!!」
ロヴィーノが叫ぶのと同時に間近に迫っていたそれが、逆光の中で赤褐色の竜の姿を表した。
その竜は衝突寸前まで三人に接近するとそこから鎌首をグンと持ち上げ翼を大きく広げると、土煙を大きく上げて着地した。
ズゥゥンという地響き。
キュゥゥウンと、心なしか胸を張って鳴く飛竜。
その背中から、白いマスクをつけた褐色の肌を持つ男が顔を出し、「よぉ」と爽やかに手を上げた。
飛竜、ユズュムの主人であるサディクだ。
もしかしたら会えるかもしれない…と言っていたが、本当に出会えた…いや、会いに来てくれたらしい。
「無事辿りつけたみたいだな」
白い歯を見せて二人に微笑んだサディクは、次に少し離れていた王を見て「久しぶりだなぁ」と声を上げるとひょいと身軽にユズュムから飛び降り彼の方へと近づいた。
「やっぱり来たあるね、グットタイミングある」
「だろう?出てくるタイミング見計らってたからなぁ」
「効果的演出ね!すばらし!」
「それより合流出来たみたいで俺は安心したぜ」
二人がしゃべっているのをルートヴィヒは見ながらホッと胸をなでおろし、ロヴィーノを見た。
「大丈夫か?」
「…あぁ、でも、びっくりした」
「そうだな」
キュゥゥ
二人が話していると、それを覗きこむように竜が首を伸ばしてきた。
「もしかして、こいつに乗って行くのかな?」
「…そういう事じゃないか?」
ルートヴィヒがゆっくりと鼻先に手をのばすと、ユズュムはクワッと口を開き彼は伸ばした手を慌てて引っ込めた。
間一髪。
パックンと音を立てて閉じられる口。
ロヴィーノはルートヴィヒの服の裾をぎゅっと握りしめた。
飛竜は面白がるように首を捻る。
「俺、無理」
「……そうだな、少しこいつに乗るのは勇気がいりそうだ」
「心配しなくても、そいつにはのせねーよ」
戸惑う二人を振り返って王と話していたサディクは言った。
「そいつは先に帰す。おぃ、ユズュム、いけ!」
キューン!
人の言葉がわかるのか、それとも決められた文句だからか、はたまたサディクの言葉だからか。意味を解したらしいユズュムは、一声吠えると、体を持ち上げ翼をはためかせると一息に大空へと飛び立ち、崖をまっ逆さまに下って行った。
「そしたら、我はそろそろ行くあるね」
「ん、おぅ、そうかい」
「ルートヴィヒ、それからロヴィーノ、短い間だったけど、とてもたのしかったあるよ。またいつでも遊びに来るある。そしたら私大歓迎ね」
「あぁ、本当に世話になったな。また近いうちにぜひ」
な、というようにルートヴィヒが同意を促すとロヴィーノはコクンと頷いた。
「次はもっと大きくなってるあるよ、ロヴィーノ」
「…おう」
ふふふっと笑う王。ルートヴィヒはロヴィーノの頭をぐりぐりと撫でた。
「じゃぁな、じいさん!」
サディクが腕を振ると、王は嬉しそうな笑みを浮かべ「再見!」と大きく腕を振って森の中へと帰って行った。

「さぁて」
王が森の中に姿を消すと、サディクは二人を振り返って言った。
「谷を案内するかねぃ」
「いいのか?」
「かまわねぇよ。言ったろ。ここで会えたら案内するってな」
口元に弧を描くサディクを見て、ロヴィーノはなんとなく意地の悪い気持ちになり「簡単にいっていいのかよ」と口を開いた。
「もしかしたら卵泥棒かも」
「ロヴィーノ!」
慌てて名を呼ぶルートヴィヒにサディクはケラケラと大きく笑った。
「ヘタレドラゴンが大きく出たな」
「う、うるせぇよ!」
顔を真っ赤にするロヴィーノにサディクは肩をすくめる。
「まぁやれるもんならやってみろってな。まぁ、とりあえず行くか」
そう言って歩き出すサディク。二人が追いかけようと足を踏み出すと、サディクはなぜか振り返って手をつきだし近づくなというようなしぐさをする。
そして十メートルばかり離れた場所で彼は立ち止まると「いくぞ」と声を上げた。
するとどうだろう。
声を合図にしたかのように、彼の形がぐにゃりと崩れた。
まるで溶けた蝋のように。
「うぇっ!なんだあれ!」
「わ、わからん」
ぐにゃぐにゃと軟体動物のように体を溶かしたサディクは真っ黒な玉のような状態になる。
それが次第にぐんぐんと大きくなり、またぐにゃりと形を変えていく。
「う、でかい!」
それはみるまに大きくなり、二人に影を落とすほどに巨大化する。
長く伸びた一部。両脇に翼のようなものが生え…
「これはまさか、竜か!」
どっしりとした大きな足と、それに比べて小さく見える前足。てらてらと光る真っ黒な鱗。長く伸びた一部は巨大な頭になった。
「なんてでかさだ」
首の長さだけで十メートル近く、全長三十メートルほどの巨大な黒龍が、真っ赤に燃える目を細めて笑った。
「サディクか」
「ルートヴィヒっ!こいつ、お、王様だ」
ひっくり返ったような声で言うロヴィーノにルートヴィヒは首をかしげた。
「王様?」
『へぇ、ヘタレでもドラゴンはドラゴンってわけだ』
ルートヴィヒに答えたのはロヴィーノではなく巨大な黒龍だった。
頭に直接響く声。それは間違いなく先程まで人の姿をとっていたサディクのものであった。
『そう、俺はドラゴンの中の王。王竜だ。どうだ、驚いたか?』
首を上げ、翼を広げて堂々と立つサディクにルートヴィヒはゴクリと唾を飲み下し、ロヴィーノはひぃと悲鳴を上げて保護者にしがみついた。
『別にとって食いはしねぇよ。』
クククっと笑い声を響かせるサディクは、頭と羽根をぐぐっと下げる。
『さぁ、乗んな、二人共、竜の巣を案内してやるぜ』

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