スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

君が為に嗚呼眠る 20

行き当たりばったり継続中

ルートヴィヒがその日の朝にギルドから請け負った依頼は、街の回りに広がる草原を少し進んだ場所に出没すると言う飢餓ウルフの牙を集めてくるというものだった。
飢餓ウルフは体こそ普通の狼より大きいものの、一頭一頭の強さはさほどではない。
だが大抵群れでの行動をしているため、一匹だと思って油断していると痛い目に合う。
冒険者達の間では、初心者殺しで悪名高く、ギルドではパーティでの狩りを推奨されている魔物だ。
その点、ルートヴィヒは一人ではあったが、戦闘に関しては全く問題はなかった。
10才児の体型しか持たない彼だったが、身の丈には合わないはずの大きすぎる剣を軽々と振り回し、そのたびに飢餓ウルフの命を散らしていった。
完全に一方的な狩りであり、ルートヴィヒの手にかかれば一つの群れ(10~15頭)を数分で軽く片付けていた。
そんな風であったから飢餓ウルフの牙10本程度ならすぐに集まる…と言いたいところだが、彼は魔族のマイナス補正のせいで群れを3つ、4つと狩り、そして夕暮れになってもまだ10の牙を集めることが出来ないでいた。
慎重に倒しても、頭を狙わずに倒しても欠けている牙、そして無事だったかと思えば、採集の途中でヒビが入り砕け散る牙。
手元にあるのは僅か5本にしかならない。
戦闘以外には尽くマイナス補正があるとは聞いていたが、それでもひどい…とルートヴィヒは半分泣きそうなきもちになっていた。
「本田の言っていた『魔族はマゾ専用種族ですから』…という言葉はこういう意味だったのか…」
『その分、強くなった時の“俺様TUEEEEEEE!”感は半端ないですよ!!!』とかも興奮気味にいってはいたが…素材すらもまともに取れないのは虚しい。
あんまりだ。
ルートヴィヒは大きくため息をつき、ようやく集めた5本の牙をそっとポシェットの中にしまった。
「あと…半分」
日が完全に落ちてしまうまで、もう一時間もないだろう。
別に今日中に依頼をこなさなければならないという決まりはないが、こうなれば意地だ。
必ず今日中に終わらせてみせると彼は意固地になっていた。

そして、彼は見事それを達成した。

ただし、ギルドの職員にこっぴどく怒られた。

「いくら素材がきれいに剥ぎ取れないからといって、生首を丸ごと5つも6つももってこられても困ります!」
腰に両手を当てて怒る職員の前で、ルートヴィヒは小さくなった。
「上手く剥ぎ取れないなら他の種族の方に頼るか、もしくは道具屋などに持ち込んでください!」
「そ、そうか。すまない」
ギルドにやってきた他の冒険者達は気の毒そうにルートヴィヒの方を見てはいるが、職員の剣幕の恐ろしさに助け舟を出してくれる人物は居ない。
「それに!他にも苦情が出ていますよ!」
「苦情?」
「飢餓ウルフの乱獲についてです!確かに魔物は私たちにとって有害な生き物ですが、同じ場所で一度に大量に狩りすぎると“揺り返し”が起きる可能性があるんです!知らなかったんですか?!」
揺り返しというのはゲームで言う爆湧きのことで、エリア(1エリアあたり大体500~1キロメートル四方、但し場所によってはかなり狭い場所や広い場所もある)での魔物数が一定数を割る(倒す数に対して湧きが間に合わなくなる)と、突如として魔物が大量発生を起こす現象を言う。(大抵はそのエリアでの発生だが、場所によっては別の場所で発生する場合もある)
この現象を利用する狩りは、ゲームの中ではごく一般的に行われていたが、さすがに現実では迷惑行為でしかない。
「すまない」
素直にルートヴィヒが頭を下げると、「まったく」と職員は憤然と言った。
「今回は揺り返しが起きなかったからこそいいものの!十分に気を付けてくださいね!」
「あぁ…」
「それと!いくら強いからといって一人での狩りはあまり推奨されません!ギルドに属しているなら、ギルドメンバーと狩りをしてください!」
「できるだけそうしよう」
「とりあえず、今回はこれで終わりますけど、本当に注意してくださいね!」
一応依頼は達成扱いにしてくれるらしいが、その報酬は4000リルドから大幅に減額され2800リルドしか受け取れなかった。
ルートヴィヒは細い肩を落とし、その金額を丸々ギルド用につくった銀行口座に入れると宿へと帰った。

 *

ぐったりとしたルートヴィヒを宿で迎えたのは、これまたぐったりとしたロヴィーノとフランシスだった。
彼らは少し休憩を入れた後、宿の下に入っている食堂に向かい、そこで今日あったことの報告をお互いにした。
もちろんルートヴィヒは飢餓ウルフの狩りの事と、やってしまった失敗の事を。
そしてフランシスとロヴィーノは、ロヴィーノのクエスト発生についてだ。
彼らはクエストが発生してから一日中町中を歩き回っていたが、残念ながら今日はターゲットを見つけることが出来なかった。
「お前、このクエストについて何かしらない?」
花屋も宝石店も全滅だったというフランシスがぐったりとして言うのに、ルートヴィヒは首を振った。
「前もいったように、システムについては手をつけたことはあるが、物語の部分については全くしらないんだ。それに、ここはもう“ゲーム”の枠を出てしまっているからな」
「そっかー…、あー…でもベースはやっぱゲームのまんまだよな」
「確かにな。最初のクエストだからそう難しいものでもないはずだが…ん?どうした?ロヴィーノ疲れたか?」
ビーフシチューを食べながらふらふらと頭を揺らしているロヴィーノにルートヴィヒが声をかけると、彼はハッとしたように顔を上げ「おう」と言った。
「お前こそ、一日中狩りだったんだろう?大丈夫なのか?その身体で」
「ん、あぁ、平気だ。これでも基礎体力はお前たちよりずっと高いんだ」
子供の姿こそとっているが、能力は無駄に高いのだ。
「そうそう、その身体なら24時間耐久どころか3日間ぶっ通しで戦ってても平気だって」
「そうなのか?」
驚くロヴィーノにフランシスは「多分」という。
「そういうクエストあったし。それを耐えれる程度の体力はあると思うよ、ルートは」
「すげー…」
ロヴィーノは素直に驚き感心するが…、ルートヴィヒの顔色は冴えない。
何しろ戦闘以外のスキルは軒並み低いのだ。
素材採集の結果から推し量るに、料理をしても食べられないものが出来る可能性が高いし、伐採や植物採集、細工なども恐ろしいことになりそうだ。
そんなルートヴィヒの心情を察してか「まぁまぁ」とフランシスはとりなすように言った。
「料理なら俺が極めているし、細工だってそこそこ上手なんだぜ。あと植物採集はエルフの補正で見つけやすいし、それにロヴィーノはトレジャーになるって決めたし」
「トレジャーに?本当か?」
驚くルートヴィヒに、ロヴィーノは少し照れながらコクリと頷いた。
「探索系が得意だって聞いたし…」
だからなんだとまでは言わないが、それは彼なりにかの世界で前向きにやっていこうとしといるのが伝わるような言葉だった。
「そうか、それはありがたいな。いいパーティーになりそうだ」
「あぁ、攻撃魔法とかはないけど、なかなかいいバランスだよ」
がんばれよ。
パチンとフランシスにウィンクされ、ロヴィーノは嫌そうな顔をしたが…しかし、口元は嬉しそうに弧を描いていた。

コメントの投稿

非公開コメント

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。