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アクイレギア

リュウが悪役。
アキラ好きな人にはあまりすすめない内容
読み返さない

会いたい
今日こそ行く
在宅? それとも留守?
一度家に帰る
親父…面倒臭い。でも…
ケーキを持っていこう
甘いもの好き?
喜んでくれるだろうか

朝からやけにテンションの高い御堂を不審に思って心理表層を削ると、わくわくうきうきと浮き足だった感情が出てきた。
彼はどうもサイレントに見込まれやすい性質持っており、何かあったのかと心配したが、どうやら杞憂であったらしい。
恋人がいるとは聞いていないが、これはどう考えても好意を抱いている女の子デートに挑む男のそれにちがいない。
能力のせいか年齢の割に老成したところのあるアツキは、落ち着かない様子の御堂を微笑ましく思った。
そして放課後、そわそわと落ち着きのない彼に心の中で声援を送り別れた。

その二時間後、自分の判断をひどく後悔することになるとも知らずに。



ノーラからリュウの所在を確認してほしいと言われた時に、アツキは嫌な予感を覚えた。
凄腕で仲間内からも“死神”と呼ばれている彼に何かあったとは思えない。また得意の単独行動だろうか…?とも思ったが、どうもそれも違うという予感があった。
その時はただの勘でしかなかったが、とにかく嫌な予感がした。
電話を受け取った時ネットカフェの近くにいた彼は、しばらくその辺りを探し回り見つからないとなると彼が仮の住まいとしているマンションへと向かった。
仕事熱心な彼が家にいる時間はごく少ない。
しかしアツキはそこに彼がいるはずだと半ば確信していた。そしてマンション前で彼は意外な残留思念を発見し、大きなショックを受けた。

定番のショートケーキに、シュークリーム。
甘さ控えめのティラミスに抹茶のタルト。
彼はいるだろうか。
いるといい。
会いたい。
話がしたい。
ドキドキする。
予感 恋の予感

そこに残っていた沸き立つような喜びの感情には覚があった。
「み…どう?」
仮に御堂だとしても、相手がリュウとは限らない。
しかし彼の直感は間違いないと告げていた。
アツキは頭が真っ白になりそうだった。
あいつ…御堂に何を…。
彼は慌ててエントランスに入るとリュウの部屋番号を端末に打ち込んだ。
そしてしばらく。
端末越しにリュウが出た。
彼はアツキが来る事くらいわかっていたらしい。
その第一声は“遅かったな”というものだった。
「リュウ!お前、本部にも連絡しないで…!いや、そこに御堂はいるのか!」
“アキラか?彼ならいるぞ”
「なっ…」
アキラ?
驚き絶句するアツキに対し、リュウはあくまで冷静だ。
“エレベーターを今下ろした。来たいなら上がってくるといい”
そして切れると同時に、エレベーターの箱がアツキのすぐ横で開いた。

リュウがどちらでもイケるらしいという話しは聞いていた。
リュウを嫌っているナツキがこと細かく話してくれたリュウの“やなやつ!”の話の中に、それを匂わせるようなエピソードがいくつか混じっていたからだ。
だがこれまでアツキはその事を特に気にかけた事はなかった。
差別意識はなかったし、彼が自分に色目を使ってくることもなかったからだ。彼は付き合いやすい人間ではなかったが、能力者としての腕は信用できた。
そう、信用していたのだ。
彼がひどい“悪食”だという事をすっかり忘れてしまうほどに。

エレベータの箱が開くと、彼はリュウの部屋に急いだ。そして玄関チャイムを押し込んだ。そしてまもなく開いた扉の向こうには、涼しい顔をしたリュウの姿があった。
すらりと背の高いリュウは、一見いつもどおりに見えたが、アツキは内心に巣食った不信感のせいか違うようにも見えた。
彼はリュウとちらりと見た後、彼の肩越しに向こう側を見、それで目的のものが見れないと気づくと足元に視線を下ろした。
そこにはリュウのものであろう揃えられた黒い革靴と、学校指定のローファーが…。
「いるのか?」
「そう言わなかったか?入れよ」
顎で示され、アツキは部屋に入った。廊下を渡り正面はリビングだ。テーブルの上に見たことのあるケーキの箱。だが、そこにいるはずの彼の姿はない。
「リュウ」
声をかけると、後ろからおっとりと歩いてきていたリュウは意味有りげな笑みを浮かべ、「奥だ」と左手を示した。
嫌な予感はどんどんと膨らんでいる。
「行かないのか?」
「行くさ」
口に出してはそう言ったが、アツキの気は重かった。
この嫌な予感は確実に当たる。
そう確信していたからだ。

そして案の定…。

寝室になっていたその部屋のベッドにアキラはいた。
うつ伏せで、むき出しの肩を見せてぐったりとした様子で眠っていた。
こもった香りと、疲れたようなアキラの横顔、そしてくしゃくしゃになったシーツがこの部屋で何があったかを如実に示している。
ショックを受けるアツキ。
後ろからついてきたリュウの足音を聞き、凍りついていたアツキは背後を振り返った。
「リュウ…」
「合意の上だぞ。疑うなら、そのあたりにあるはずの残留思念でも調べてみればいい」
全く悪びれない様子のリュウ。
アツキはショック状態のまま額に手を当て、「ふざけるな」と小さく押し殺した声で言った。
「お前、何をやったかわかっているのか!」
「そう大きな声を上げるな」
リュウは笑い、そっとアツキを部屋の外に出すと扉を閉めた。
「何を怒っている?アツキ」
「何を?それもわからないのか?」
「わかるわけがないだろう。意味不明だ。俺が誰と寝ようがお前には関係ない」
「あれは俺の友人だぞ!それをわかってて…!」
ダンっと壁を拳で殴るアツキをリュウは冷ややかなめで見つめた。
「わかっていたさ。お前から紹介を受けたんだからな。それで?だから何なんだ?お前はあいつの保護者でもあるまいに。別に構わないだろう?」
「ふざけるな!お前はッ!一体何を考えてるんだ!あいつを傷つけて!それが楽しいのか!」
「傷つける?ハッ、アツキ、面白いことをいうな。俺は誰も傷つけちゃいない」
「よくもその口でそんなことが言えたな!」
「熱くなるなよ、アツキ。一体誰が傷ついたというんだ?俺か?それともお前か?」
「御堂に決まっているだろう!」
「アキラが傷ついた?それは知らなかったな。本当にそうか確かめたのか?」
「確かめた…だと?」
勝ち誇ったような顔をするリュウにアツキは愕然とした。
「証拠でもあるのか?アツキ。思念はどうだ?あいつは傷ついていたか?いや、そもそもアキラが傷ついたからといってなんなんだ?それはそいつの責任だろう。一丁前に保護者気取りか?」
「リュウ?」
「アツキ、おかしいのはお前だ」
リュウの手がスッと伸びたかと思うと、アツキは避ける間もなく首を捕まれ壁に押さえつけられていた。
「ナイーブになるのも体外にしろ、アツキ。お前は対サイレントの工作員だ。ボランティアのカウンセラーじゃないんだ。誰も彼も傷つかないようにするなんて出来るわけがない。それくらいはわかっているだろう」
「く…わかっているさ」
喉を押さえつけるリュウの手を握りながらアツキは言った。
「だが、だからといって友人が傷つけられるのをわかっていて黙って見過ごすほど薄情じゃないつもりだ」
「この程度でか?俺は強要はしていないぞ?」
「どうせ遊びでしかないんだろう」
アツキの言葉にリュウは目を細める。
「だったら?許さない…か?面白い。お前が俺とやりあって勝てるとでも?」
挑発するリュウにアツキはぐっと言葉に詰まった。
物理的な力勝負でも、能力でもアツキにはリュウに勝てる見込みは一切ない。
だがそれでもアツキはリュウが許せなかった。
たとえ今はアキラが同意していたとしても、彼はアキラの純粋な心を持て遊び、そしてその挙句に飽きれば残酷に捨てる。
アキラが傷つき、打ちひしがれる様がアツキには目に浮かぶようだった。
「人生にはこの程度のスパイスは必要不可欠だろうに。それでこそ人間が豊かになるというものだ。」
リュウの言葉は正論のようだが、そうではない。
アツキはリュウをねめつける。
アツキが一歩も引かないとみるや、リュウは呆れたような表情を作った。
「お前は、本当に馬鹿だな。これしきがなんだと言うんだ?フォートでも俺の悪食は知れているし、半ば公認みたいなものだぞ?」
こんなことは今に始まったことではないとリュウは言う。
「全く呆れたバカだ」
リュウは言い、アツキの喉から手を離すとその手でアツキの顎を掴んだ。
「それとも、それほどにアキラが傷つけられるのが嫌なのか?」
「…決まっている」
「ほぅ…ならば、お前が代わりになるか?」
ニヤリと笑うリュウにアツキは驚き目を見開いた。
「お前が代わりになるというならば、この町にいる間はおとなしくしてやっていてもいいぞ。アキラはもちろん、他の人間にも手を出さないでやってもいい」
「正気か」
「信じる信じないはお前次第だな。ただ…」
彼はそういって閉じられた寝室の方をちらっとみた。
「アレはなかなか気に入ったとだけ言っておこう」
「リュウ…」
「まぁ、俺はどちらでもいい」
リュウはそっけなく言うと、アツキから手を離し少しだけ距離をとった。
「俺の悪食は性分みたいなもんだからな。だが、パートナーの我儘だ、今回は聞いてやらないこともない」
廊下の壁によりかかりゆったりと言う。
「その気になれば、明日また来い。アツキ」
出来るものなら、挑発するような、そして誘うような瞳にアツキは言葉を失いただ呆然と立ち尽くしか出来ない。
そんなアツキをリュウは笑い、「話は終わりだ」と彼を追い返すように玄関の方へと押しやった。

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