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カサノヴァ 03

「あ…」

グリムジョーは声を出すのが嫌なのだろう、一瞬だけ漏れた声は一文字に結ばれた唇によって途切れた。
だが…
「グリムジョー…」
その目は如実だ。
あまりにもあけすけにその内情を吐露している。
目を細めて口角を上げる。
これで笑っている“ような”顔になる。
あの女のアホ顔を思い出しながら笑顔らしきものを浮かべてやると、グリムジョーはハッとしたように目を見開き悔しそうに唇を噛んだ。
その理由がわからず動きを止めてグリムジョーの唇を指でなぞると、唇が開き中に招き入れられたかと思うと…甘く噛まれた。
「なんだ?」
不思議になって聞くと、グリムジョーは指先をちらりと舐め、「早く…」と先を促した。

 *

この行為に意味はあるのか。
冷え始めた汗を指でなぞると、仰向けになったグリムジョーの身体がピクリと跳ね閉じていたまぶたをうっすらと開いた。
「んだよ」
気だるそうに言うグリムジョーの声は掠れている。
返事をせずに俺はグリムジョーの左に張り付いた破面に手を伸ばした。
グリムジョーは一瞬驚き、そして一瞬苛立ち、すぐに諦めたように力を抜いた。
俺は無造作に彼の破面を指でなぞる。
噛み締められた破面。それが先ほどの…声を殺さんと必死に歯を食いしばるグリムジョーにそっくりだと思った。するとなぜかグリムジョーがぎょっとしたように目を見開いた。
「お前…っ」
言葉を詰まらせるグリムジョー。
まるで信じられないものでもみたかのような反応に首を傾ぐ。
「なんだ」
「笑った…」
「何?」
笑った?
聞き返すと、彼はチッと舌打ちをしそっぽを向いた。
彼はいつもそうだ。
都合が悪くなったり、言葉に詰まるとこんな風にそっぽを向き理不尽に怒る。
それに大体なんだ。
笑った?
笑っただと?
誰が?
俺がか?
馬鹿な、笑みなど作った覚えはない。
俺は破面に伸ばしていた手を滑らせグリムジョーの顎をとった。そしてこちらを向かせる。
グリムジョーはそれでも視線だけはこちらを見なかったが、「グリムジョー」と名前を呼ぶと渋々ながらこちらを見た。
グリムジョーの瞳はアクアマリンを溶かしたようだ。
それは俺がグリムジョーの持つものの中で唯一といっていい程に気に入っているものだ。
直情的なグリムジョーは、その時によってその色を深めたり、浅くしたりする。
つい先程は…アクアマリンという色に矛盾しているが…赤く燃えるような色合いさえ見せていた。
「グリムジョー」
もう一度名を口にのせると、彼は揺れる目で「なんだ」と返した。
俺はその瞳をくり貫いて食ってやりたい。
その言葉を「お前の瞳は好ましい」と言い換えて口に出す。
すると今度こそ彼は幽霊でも見たかのように目を見開きたっぷりと間をあけた後で「……そうかよ」と潰れたような声で呟いた。

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