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君が為に嗚呼眠る 16

章を分けるとすれば、ここからが第二章だと思います。
モンスターの名前は世界樹とか、FFとかいろんなとこから借用する予定です。

「見てみて!」

門を出た途端、とととっと走りだしたフランシスは草原の中でふと立ち止まりしゃがみこんだかと思うと、何かを持って立ち上がった。
何か…とは、黄緑色の半透明のぶよぶよとした…つまり、スライムだった。
所謂ドラクエ型ではなく、それがトロリと溶けたような姿のスライム。
目も鼻も口もなく、それはフランシスの手の中でもぞもぞと動いている。大きさは…例えが難しいが、丸くすればサッカーボールくらいだろうか。
それを自慢げに掲げ、「こいつが、世にも名高いスライム(緑)だ!」と言った。
特に反応を返さないロヴィーノにルートヴィヒ。
しかしフランシスは全く気にしていないようで、「こいつすごいんだぜ~」としゃべり始める。
「こいつはバクテリアや微生物なんかの役割もしてくれる有益な魔物で、かつ子供からスタートした冒険者が一番最初に戦うことになるモンスターなんだぜ。ちなみに経験値は5だ!」
「…で?」
「家畜の餌にもなる!」
「…へぇ」
「いやいや、すごいんだって、マジでマジで」
片腕でスライムを抱え直し、空いた片手をおばさんみたいに振りながらフランシスは言った。
「この世界広しといえど、スライムほど繁栄している魔物はいないんだぜ?こいつはバクテリアや微生物みたいに、肉…つまり倒された魔物なんかを分解してくれる世界の掃除屋!その上、光合成を行なっていて酸素も放出してるんだぜ!」
「…ほんとかよ」
ロヴィーノがルートヴィヒに聞くと、彼は肩をすくめた。
「魔物の生成は俺の担当じゃなかったから知らないが…生態系をつくる部門もあったし…あながち嘘ではないかもしれない」
「へぇ」
「ちなみに!こいつはなんと!恐ろしいことに表面が酸性で覆われている!!」
「酸性…?…の割に平気でもってんじゃねぇか」
「ふふふ…確かにな。しかぁあ~し!このままスライムを持ち続けていると、なんと30分もすれば俺の手の…俺の手の…指紋が消えるのだ!」
どうだ、ぶはははは…と笑われても、あぁ、そうとしか言いようがない。
「ロヴィーノ、とりあえずもう少し先にいけば“ひっかきモグラ”という魔物が出てくる。まずはそいつで練習をしておこう」
「お、おう、分かった」
「何、そう手強い相手じゃない。油断しなければお前でも十分狩れるはずだ」
「…あぁ」
話しながらフランシスの横を通って歩き去る二人。
フランシスはしばらく二人の後ろ姿を見ていたが、少しずつ小さくなっていく背中にハッと気づくと、「ちょ、ちょっとまってよ!ねぇ!」と言いながら手にもったスライムをぽぃっと放り出し、二人の後を追いかけた。
ちなみにスライムは乱暴に放り出されたにも関わらず、ぽよっとはねただけでほとんどダメージは受けておらず、そのままのそのそとその場を離れていった。

 *

「あそこにひっかきもぐらがいる。見えるか?」
しばらく歩き立ち止まったルートヴィヒは15メートルほど先をさして言った。
「どこだよ」
「あそこ、あの茂みのあたりだ」
ロヴィーノはなんの変哲もないように見える茂みをじっと見つめ、やがてそれが不自然に揺れたことでそこに何かがいるのに気づいた。
「わかった。けど、みえねぇぞ」
「ん?あぁ、そうか。見えないのか」
ふむっと難しい顔をするルートヴィヒに見えるのかとロヴィーノが聞くと、彼はもちろんだと頷いた。
「特殊能力なのか、それとも魔族の特性なのかはしらんがはっきりとみえるぞ。ひっかきもぐらが3匹」
「えー、どこどこぉ?」
と、後ろから会話に入ってきたのはフランシスで、ロヴィーノが茂みを指さしてやれば彼はウーンと唸って「あ、うん、いるね」とこたえた。
「でも見えないね。3匹はいそうだけど」
「見えねーのになんで3匹いるってわかんだよ」
「あれ?なんでだろう?」
ギロリと睨むロヴィーノの先で、フランシスが不思議そうに首をかしげる。
「あ、もしかして“気配察知”もってるからかも」
「気配察知?」
「そう、そういうスキルがあるんだよ。冒険者にとっちゃ必須のスキルだね。少しレベルを上げて神様にお祈りすればきっともらえるよ」
「へぇ…」
フランシスが言うには、レベルアップの補助も神様はしてくれるらしい。
ちなみにスキルにもレベルがあって、熟練度がどうとかかあるらしいが、まぁそれはいいとして…。
「とりあえず3匹同時は難しいだろうから、二匹は俺が狩ろう」
ルートヴィヒが一歩前に出て、背負った剣を抜いた。そして肩越しに振り返り、「ロヴィーノ、ナイフを抜いておけ」と言った。
「あ、お、おう!」
ロヴィーノは慌てて返事をし、ナイフを抜くと昨晩教わった通りにナイフを握りしめた。
「あまり力を入れ過ぎないように、手首を柔らかく動かしてみろ」
言われたとおりにくねくねと手首を動かすと、ルートヴィヒは満足したように頷いた。
「いいか、ためらうなよ」
「…おう」
「あれは魔物であって動物じゃないからな」
「…おう」
「ならよし」
ルートヴィヒは茂みに向かって剣を構えた。
そして……

「あのー、ルートヴィヒ?」
「お前なぁ…」
「…すまない。少々手加減を間違えたようだ」

数秒後、三人が見たものは、土煙とともに“ミンチよりひでぇや”な状態になった三匹のひっかきもぐらの屍…と、10メートルほど走った地面の亀裂だった。

「少々じゃねぇだろう…」

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