スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

君が為に嗚呼眠る 15

早く冒険に出たい
読み返しません。

ルートヴィヒとロヴィーノは武器を購入した後もう一軒、今度は防具を扱う店で小手を購入し宿に戻った。
昼をずいぶんと過ぎた時間で、ロヴィーノは見るからにぐだぐだ。帰ってそうそうソファに飛び込む。
そんなロヴィーノを笑うのはすでに帰っていたフランシスで、彼はそんなことだろうと昼食で出かけるのをとりやめ、屋台でボア肉ローストが山ほど挟まったサンドイッチを買ってきていた。
味は少し癖があるが、酸味のあるソースがそれを消してかなり美味だ。他にも小さなジャガイモをフライドポテトのように揚げたものに、さわやかなフルーツジュースも買っていた。
三人はそれらをつまみながらしゃべる。
「このボアのサンドイッチはさ、こないだの襲撃でめちゃくちゃ安く買えたんだよね」
と、フランシス。
彼はロヴィーノ用のナイフを見て「ほんと初心者用だな」と笑い、それから彼が購入してきたというポシェットを二人に一つずつ渡した。
「それは所謂魔法のポシェットってやつだ。何でも無限に入る…とまではいかないが、旅の支度、着替えや寝袋、食べ物、水くらいなら軽く入るし重さも感じない。とりあえず回復薬とリコールのスクロールは入れといたよ」
確かめてくれと言われ、ロヴィーノは恐る恐るポシェットを開けた。
するとどうだろう。覗いてみたそこは、まるで大型のテントの中を覗いているように広くて奥行きがある。
そして奥のほうにちょこんと小さなガラス瓶が二つと、紙の巻物が入っていた。
「手を入れてみれば、どんな風になっているかわかるよ」
そう言われ、またもや恐る恐る手を入れると、なんと次の瞬間、彼は自分がそのテントの中にいるのに気づいた。
といっても本当に中にいるわけではなく、本物の自分はポシェットに今も手を突っ込んでいる事がわかる。視界が二重に見えるような感じで、彼は自分が二つに別れたような不思議な感覚を覚え戸惑った。
「それで欲しいものをつかみ、入り口の光をくぐる。そうしたら外に出れるよ」
ロヴィーノはフランシスの声の通り、奥にあった巻物を手にすると、真っ白に光っている入り口に飛び込んだ。
するとポシェットの中にあった自分が消え、ポシェットに手を突っ込んでいる自分一人になった。
手を引き抜くと、そこには先ほどの巻物が…。
「な、なんだよ、これ」
「なかなか不思議な体験だろう」
によによするフランシスにロヴィーノは素直に頷く。その横ではルートヴィヒも小さなガラス瓶を持って驚いていた。
「ゲームだったころは単純に持ち物のウィンドウが開いてたんだが、こっちじゃ違うみたいだな。俺も道具屋で試した時は驚いたよ」
というフランシスの手元には、可愛らしいピンクのポシェットがある。
「最初は二つに分離した自分の片方しか動かすのは難しいそうだ。でも慣れてくると、二つを同時に扱えて、そうなると戦闘時に非常に役に立つって話だぜ」
もちろんそういうわけだから、慣れるまでは戦闘時にポシェットに手を入れるのは厳禁だとフランシスは言った。
「敵に肉薄してる時に硬直するなんて愚の骨頂だからな」
「なるほど、それでこれは?」
ルートヴィヒが小瓶を掲げると「そっちは回復薬(小)だよ」とフランシス。
「小ってついてるだけに、あんまり回復率はよくないけど、初心者ならそれで十分。それに俺は回復魔法使えるしね」
使い方は本来はガーゼを湿らせて患部に当てておくというのが一番いいそうだが、急ぎの場合は患部に塗る又は飲むという方法でも効果が期待出来るらしい。もちろん(小)であるからひどい傷には焼け石に水だというが。
「で、ロヴィーノ、お前が持っている方がリコールのスクロールだ。その名の通り、リコールという魔法が封じられたスクロール(巻き物)だな。街の外でそいつを開いて書いてある言葉を口にすれば、瞬時にこの街の協会まで戻ってこれる」
「へぇ」
「リコールポイントがこの街になっているから、他の街に飛びたい時は他の街をリコールポイントにしているスクロールが必要だ。ちなみに2000リルド。結構高いものだから、気軽には使ってくれるなよ」
フランシスの言葉にわかったと頷き、ロヴィーノは手に持ったそれをポシェットへとしまう…と、またもや彼はポシェットの中にいる自分と、ポシェットを見つめる自分にわかれたのに気づいた。
彼はポシェットの中にスクロールを戻すと、慌てて光の方へとかけ出しポシェットに手を突っ込む“自分”へと逃げ戻った。
「なれないと酔うから気をつけろよ。といっても、中にはどうしても慣れないやつもいるそうだが。ルートはどうだ?」
「…あぁ。まぁなんとかなりそうだ」
ルートヴィヒはポシェットから抜いた手を握ったり開いたりしながら言った。
「ふむ。さてと、とりあえず最低限の装備は整ったわけだが、どうする?飯を食いおわったらさっそくレベル上げでも行ってみるか?」
楽しそうなフランシス。
ロヴィーノが困ってルートヴィヒを見ると「それは明日からにしよう」と彼は言った。
「えー、なんだよー」
「そういうな。ロヴィーノはなれないことをして少しつかれているようだしな。それに少し調べたいこともある」
「調べたいことって?」
「冒険者ギルドの依頼がどのようなものなのか。それと素材の買取りについて。どうせなら依頼をやりながらの方が効率がいいだろう?」
「あぁ、そうだな、あとここいらで出てくる魔物のチェックもしなきゃな」
地域によって生息している動物や魔物は随分違うのだ。基本的に街の近くにはそんなに危険な魔物は生息していないというのがセオリーではあるのだが、中には例外もある。
「ま、カンストチートなお前がいれば死ぬことはないだろうがな」
「そうありたいが…」
と、そこでルートヴィヒは口ごもる。
「どうしたんだ?」
ボアの肉入りサンドイッチを頬張りながらロヴィーノが聞くと、ルートヴィヒは「実は呪いを受けてるようなんだ」と言った。
「は?呪い?」
「あぁ、といっても命に関わるもんじゃない。ただラウドに呪われていて、魔法が封じられている」
「なんだそれ」
それはフランシスも知らなかったようで、食べる手を止め詳細を聞いてきた。
そしてルートヴィヒが語ったところによると、先日のボア襲撃の際、頭に浮かんだ魔法攻撃を試みようとした際に何かによってそれが弾かれたのだという。
「そして、ラウドの呪いにより魔法は一切封じられているという警告(?)のようなものが頭に浮かんだ」
「はぁ?ラウドってお前の信仰する神だろ?神が信徒を呪うのか?」
わけわかんねぇ。
肩を竦めるロヴィーノ。
それとは逆に、フランシスは真剣な表情でなるほどと唸った。
「そういう事か。その可能性は考えてなかった。つまり、強くなりすぎたわけだな?」
「あぁ…そういうことらしい」
別に鍛えた訳ではないが、ルートヴィヒの管理者及びプログラマ権限を使い、フランシスは彼のパラメーターを全てMAXまであげ、彼をカンストチートキャラに仕上げている。
それによって引き起こされたのが…
「神殺しのクエストか」
最終クエストである神殺し。
それがオーダーされたのだ。
「神殺し…?」
「このゲームの最終的なクエストにそういうものを作ったという話だけは聞いていた。詳しくは聞いていないが…確か自身の信仰する神を殺し、その神に成り代わるクエストだったと思う」
「うわ、マジかよ。えげつないな」
「といっても、別に挑戦する必要はないはずだが…、結果的にこのステータスのせいで俺は『ラウドの後継者』という称号を得て、挑戦者資格を持ったようだ。それでその前哨戦として待ち受ける四天王とやらに呪いを受けたらしい」
だから正しくはラウドではなく、ラウドに仕える四天王の呪いだ。
「四天王」
唖然とするロヴィーノにフランシスはくつくつと笑った。
「前から思ってたんだけどさ、魔族ってやたらと厨二病な設定多いよな、四天王って」
ぷぷぷっと笑うフランシスにルートヴィヒは微妙な顔をする。
「それは本田の趣味だから、本田に言ってくれ」
「いや、いいんだけど、むしろ好きだけど」
「ちょっとまてよ、それより魔法が使えないのってかなりのハンデじゃねぇのか?」
心配してロヴィーノが声を上げると、ルートヴィヒは困ったような顔をし、フランシスは「大丈夫大丈夫、まぁ普通は大変だろうけど~」とケロリと言った。
「普通は?」
「ほら、魔族は魔法に特化し種族だからさ、普通は魔法に関する知性や精神なんてステータスを上げてきているわけだ。だから魔法をとられちゃ手も足も出ない。ひよっこに逆戻りだな。もう一度、こつこつ鍛え直しだろうね。だけど、うちのルートは別だ。なにしろ、力、素早さ、体力、頑丈さ、スタミナなどなど全てMAXのカンストチートなわけだからな」
フランシスは鼻息を荒くしていった。
「魔法を封じられたくらい全然問題なしなわけよ」
どうよ、俺の見事な先見性!
とただ数値をMAXにしただけなのに、鬼の首をとったかのように胸を張って、わっはっはっと笑うフランシスは、美女という外見が台無しになるほどアホっぽい。
ロヴィーノがルートヴィヒを見ると、ルートヴィヒは肩をすくめて首を横に振り、「まぁ、ひとまず魔法のことは気にせずとも、俺がしっかり守ってやるさ」と言った。
ロヴィーノは中身は年上の男だとわかってはいても、自分より小さな子供に守ってやるなどと言われ微妙な気分を味わいながら頷いた。

コメントの投稿

非公開コメント

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。